第30章 ISS
国際宇宙ステーションの司令であるローガン・コックスは、久しぶりに地球からやってくる補給船を楽しみにしていた。
地上から約400キロメートル上空の熱圏を回るISSへの補給船は、昔に比べれば、格段に早くなった。最近では完全なコンピューター制御による打ち上げから、ランデブー、ドッキングまでの一連の動作をスムーズに実施し、打ち上げ後三時間以内には、ドッキングを完了できるようになっていた。
一昔前の、手動や目視で、位置を正確に決めながら、慎重にISSへ接近させていた頃とは大違いだ。あの頃は、二日くらいかけてやっていた。
なので、今回久しぶりに乗ってくる、子豚のロレッタちゃんが、長い時間拘束されるストレスもなく、宇宙へと到着できるだろうと思っていた。ローガンは、自宅でも大型犬を二頭飼っている愛犬家で、動物が大好きだった。
果たして今回で三代目となるロレッタちゃんは、無重力状態を楽しんでくれるだろうか。その反応が楽しみだった。
ところが、補給船プログレスをドッキングさせ、すべての機器に異常が認められないことを確認し、補給船のハッチを開けたところ、子豚が収まっているはずの区画に、一昔前の宇宙服を着た、東洋人らしき男が縛り付けられていた。
まさか補給船に人が乗ってくるとは思わなかったので、ローガンは驚いた。
彼はローガンの表情を見たからか、申し訳なさそうに言った。
「こんにちは。ご機嫌いかがですか? すみませんが、この拘束されたベルトを解くのを手伝ってはくれませんか? その後に事情はお話いたします」
その男はずいぶんと丁寧な口調で言ったが、ローガンはそれにイヤな予感と同時に、なぜ彼が補給船で来たのか理由が知りたくなった。
「第31章 ローマ教皇」へ続きます。




