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第4話 青年は最強の兵器を案内する。

 予想外に時間を食ってしまった。

 まぁ近場だし大丈夫か。

 とりあえずアリアの行きたい所は聞いておかないと。


「そうだ、今日は予定通りこの首都メルベルの街を案内するけど、アリアは行きたい所ってある?」


「行きたい所……そうですね、お買い物のためのお店と、ギルドは少なくとも知っておきたいです。他はお任せします」


「了解、じゃあ食器を片付けたらさっそく出ようか。準備に時間が必要なら待つよ? お店を回る時は服屋にも寄ろうね。アリアなら多分なんでも似合うだろうし俺も楽しみ」


 楽しみすぎて思わず早口で言ってしまった。


「もうッ! 晴近様ッ!」


 アリアは指先で俺を突っついてきた。


「唐突にイチャイチャするのやめてくれない?」


 ◯


「とりあえず食料品を売ってるお店を紹介するよ。日用品も俺が付いていってもいいけど、男に相談しにくい事があったら遥に聞いてね」


「はい、お願いします」


 歩きながら説明をしていく。

 ここは家から近所だし、すぐに覚えられるだろう。


「この辺りで食料関係は全部揃うよ。ここ、八百屋さんね。大将! おはようございます!」


「おう、晴近か! いらっしゃい! 今日は彼女は一緒じゃないのか!?」


「彼女、連れてきてますよ!」


 俺はアリアを前面に押し出した。


「……ん? 遥ちゃん、ちょっと雰囲気変わったか?」


「おじさん、私、後ろにいるんだけど。それと、残念ながらハルくんの彼女ではないから。残念ながらね」


「……? 別人かよ!!」


 いや、いくらなんでも気づくでしょ。


「大将、この子アリアっていうんだ。買い物に来るかも知れないから、良くしてやってね」


「お、お願いします」


 アリアは少し緊張してるらしい。

 人見知りする子じゃなさそうなんだけど。

 勢いにあてられたのかな。


「おう、よろしく! これまたえらくベッピンな子を捕まえてきたな? 間違えた詫びだ、何か負けよう! 欲しいものはあるか?」


「今日のオススメは?」


「今日は自然薯(じねんじょ)の良いのが入ってるぜ!」


「おっ、じゃあそれ下さい。ちょうどダシ汁もあるし、麦飯でも炊いて──麦とろご飯にするか」


「まいどありッ!!」


「なんだか良くわからないですけど、美味しそうですね……」


「消化にすごく良いし、精も付くんだよ」


 アリアは未知のメニューに期待しているようだ。

 そういえば天界って食文化が違うのかな。

 日常はパン食なのかもしれない。


 これは我が家の家訓を教えねば。

『パンがなければご飯を食べればいいじゃない』

 ってね。


 でもそれはじっくり時間をかけてもいいか。


 食品関係は、他も込みで買い終わった。

 荷物になるので、一旦預かってもらっている。

 それよりも次だ次。


 今日の本番、服屋だ!!



「こんにちは店長! ご無沙汰してます!」


「あらっ、晴近さんじゃない! お久しぶり! 何かご入り用の服があるの? 試着していいから遠慮しないでね!」


 服屋の店長は近所の気の良いお姉さんといった感じだ。


「はい、今日は恋人の服を見繕おうかと」


「まあまあまあ! とうとう遥ちゃんと!?」


 八百屋の大将の時もそうだけど。

 なんで俺と遥が恋人的な雰囲気なんだろう。


「いえ、遥じゃなくてこの子です」


 大将の時と同じく、アリアを前に押しやった。


「なにこの綺麗な子! 晴近さんやるわね!!」


 おおむね評判のようだ。

 今回アリアは緊張もしてないようだ。


 大将は少し威圧感があるのかもしれない。

 良い人なんだけどね。


「よろしくお願いします! 試着……頑張ります!」


 彼女は気合いを入れて宣言した。


「まあ、すごい意気込み! これは選び甲斐がある!!」


「店長、俺も参加しますよ。下着じゃなくて服だし、今日はアリアを着せ替えて楽しもうかなと」


「晴近様も参加なさるんですか!? こういうの、男の人は興味なくて外で待ってるものだと思ってました……」


 アリアが意外そうに言う。


「なんで? 逆に聞きたいんだけど、可愛い女の子を着せ替えできるのに、興味がない野郎なんているの?」


「それは分かりませんけど……。また清々しい答えですね!」


「神の子だから自分の欲求には素直なんだ。とりあえず、コレとコレとコレとコレね」


「早ッ! もう選んだんですか!?」


 それから俺はアリア(ついでに遥も)を着替えさせ続けた。


 見込み通りどの服も似合っていたが、

 最終的にアリアは白のワンピースに着替えたようだ。


 元々はキトンと言うのだろうか。

 神話に出てきそうな白い民族衣装と、サンダルを履いていた彼女だ。


 色合いも形も、違和感がない上にとても似合っていた。


 けっこう時間を使ったな。

 よし、次に行くギルドで今日は最後だ。


 ◯


「ここがアリアも知りたがってたギルドね。冒険者ギルド、商人ギルド、治安ギルドの複合施設だから、かなり大きいよ」


「複合施設……。思ったよりも大きいです」


「首都だからね。治安ギルドが真ん中にあるから荒くれ者も少ないんだ。先にここの担当を紹介しておくよ。クライヴさーん!」


 受付に座っている男性に声をかけた。


「!! エンペラーか……。珍しいな、今日は緊急を要するクエストはねぇんだが」


「今日はクエストを請け負いに来たわけじゃないですよ。人を紹介しにきたんです」


 例によって俺はアリアを前に導いた。


「ア、アリアです。天界から来ました。これからよろしくお願いします」


 あ、また少し緊張してる。

 人見知りというよりは男性が苦手なのかも。


「天界から……? それはまた。まあエンペラーの紹介だ、間違いはないだろう。よろしくな、嬢ちゃん」


「あの、さっきから【エンペラー】って言われてるの、晴近様の事ですよね?」


「ん? ああ、俺の名字、すめらぎだからね」


「それで、モンスターにもエンペラーが多いんですかね……」


「うん。まあモンスターの事はまたゆっくり説明するから。今はアチコチ見て回ろう」


「はい!」


 そうアリアが元気よく返事をした時。

 何やら後ろの方がザワザワしていた。


 遥が目立ってるのか?

 彼女も聖剣のオーナーで有名人だし。


「遥……? なんでギルドに? ムッ! まさか遥をイジめてるっていう、【悪の権化】ハルチカに連れてこられたのか!?」


「あ、あああああ! 雫先輩! やめてください! あああああ!!」


 と思ったら、別の人だった。

 切れ長の瞳で、黒の短髪。

 怜悧な美人といった感じだ。


「遥? お知り合い?」


「ち、違うのハルくん違うの」


「何が? 知り合いじゃないってこと? それとも……【悪の権化】かな?」


「あ”あ”あ”あ”あ”!!」


 気まずそうに全力で目を逸らしつつ、遥はうめき声を上げた。


「ッ!! おのれ、また遥をイジめてるな!! 君とはいずれ会った時、懲らしめてやろうと思っていたんだ! いざ、【魔剣グラム】のオーナーであるこの雫が成敗してくれる!」


 イジめてるから成敗……。

 これは確実に遥が原因だな。


 それに、【魔剣グラム】の雫さんか。

 まさかとは思ったが、人類の英雄じゃないか!


「遥さん……? 今なら言い訳を聞かなくもないよ?」


 俺は丁寧に尋ねた。


「ちっ、違うの! 違うのォォォ! で、出来心でつい……ちょっと愚痴っちゃっただけなの!! 決してハルくんが【悪の権化】だなんて!!」


 それを聞いた雫さんが遥を庇うようにして前に立った。


「遥、もういい……。そう言わないと酷い目に遭わせるとハルチカに脅されているんだろう……。ハルチカ、表に出ろ」


「表に? 人類の英雄ほどの力を持った人が一方的に私刑をする方が、よっぽど【悪の権化】なんじゃないですかね? 普通、貴女に勝てる人間なんていないですし、大人気ないと思わないんですか? 確実に勝てる自分の土俵で戦いたいんですか?」


「ええい! 詭弁きべんを!! 舌の良く回るヤツだ! 正当なる断罪から逃れようなどと、悪党そのものじゃないか!!」


「詭弁だってさ、遥。止めなくていいの? これ、どっちが負けても大変な事になると思うんだけど」


 冤罪えんざいでの私刑なんて重罪だよ?

 英雄だからって戦争外で殺人許可証を与えられてるって訳でもないし。


「あうあうあうあう!!」


「遥、壊れるのもいいけど、手遅れになるよ」


「!! 雫先輩、やめてください!! 私が悪いんです、私が【悪の権化】なんで、なにとぞ!!」


「遥……彼が傷つかないように気を遣ってるのか。本当に優しい子だ。そこまで言うなら遥に免じて命は取らないでおいてやろう。悪さが二度とできないように腕の一本はもらうがな」


 そして、有無を言わせず表に連れて行かれたのだった。



 ◯


 今回のリザルト


 テイムモンスター一覧


 ・エンペラースライム


 ・エンペラーゴブリン


 ・エンペラーローカスト


 ・エンペラー冬虫夏草とうちゅうかそう


(省略)


 ・遥


 ・アリア



【魔剣グラム】


 固有能力

 ・ヴァリアブルカット

 ・ドラゴンブレイカー

 ・ミラージュシフト(使用後クールタイム有り)


 バッドステータス

 ・闘争本能強制上昇

 ・パラノイア(妄想を抱いたり攻撃的になったりまあ色々です)


 note

 魔剣所持者は戦地ではなく

 同胞に討伐されるパターンが多い。

 グラムを所持していると怒りに染まりやすくなる。

いきなり理不尽に始まる魔剣オーナーと主人公の戦い。

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― 新着の感想 ―
[一言] ぱ、パラノイアのせいかぁぁぁぁ~~~~!!!!( ̄▽ ̄;) というかこれまたテイムしちゃうような予感!!
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