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第3話 青年は幼馴染みとの過去を語る。

これはお米の尊さを伝える食育ストーリー。

 アリアと再会した翌日、俺は遥を呼び出していた。


「おはよう! いい朝だね。あ、朝ご飯食べる?」


「ハルくん、こんな朝早く呼び出してなんなの? 朝ご飯は頂きます」


「アリアに街を案内しようと思って。野郎一人じゃ至らない点があるだろうし、同性の子がいた方が何かと頼りになるかなと」


 デリケートな内容もあるだろう。


「……いいけど。アリアさんは?」


「まだ寝てるね。朝起きたら同じ布団にいたから驚いたよ」


「アリアさん泊めたの!? というか、同じ布団って……」


 その時、俺の部屋から叫び声が聞こえた。


『ひゃああ!! 晴近はるちか様ァァァ!?』


「あ、起きたみたい」


「明らかに驚いてる感じなんだけど。ホントにやましい事はないの?」


「ないよ。とりあえずアリアも起きたし、朝食にするか」


 ◯


「晴近様、なぜか起きたら別のベッドで寝てたんですけど……。あ、このメニュー美味しい」


「ああ、夜中にアリアが寝ぼけて潜り込んできてね。銀シャリは(すめらぎ)家の伝統的なメニューだよ」


 米には作るのに八十八の手間がかかるし

 八十八の精霊が宿っているからね。

 そりゃあ美味いはず。


「本当ですか……? 私、そんなに寝相悪くないですよ」


「寂しかったんじゃない?」


「……反論できないですけど、なんかモヤモヤします」


「あ、遥はおかわりいる? ダシ汁もあるし、二杯目はお茶漬けも出来るよ」


 何ならフリカケも卵もある。


「……いる。悔しいけど相変わらず美味しい」


「聖剣ってカロリー使いそうだし、たくさん召し上がれ」


「ハルくんからそう言われると嫌味にしか聞こえないんですけど……」


「あれ、遥さんって聖剣のオーナーなんですか?」


 アリアが遥に尋ねた。

 この二人、案外相性が良いな。


「うん……。【フロッティ】っていう細身の剣なんだけどね」


「アリアはさすがに覚えてないか。実は三年前の授与式の時、遥もあの場にいたんだよ」


「えッ、そうなんですか!?」


「……気絶してたけどね。目覚めて会話した直後にハルくんから舌打ちされたのは今でも忘れられない」


「そうだっけ。遥の被害妄想じゃない? 俺、何もないのに舌打ちとかするキャラじゃないよね」


「ハルくんって時々、毒吐くし……」


 毒は……まあ吐くか。


「そういえば、晴近様と遥さんってどういうご関係なんですか? まさか恋人とか」


「俺と遥? 幼馴染みだよ。恋人はアリアでしょ? 浮気、ヨクナイ」


「うん、付き合ってはいないけど……え? ハルくんとアリアさんが恋人!?」


「昨日、遥が帰ったあとに契約書を渡されてね。それにサインした」


「恋人って契約でなるものだっけ……?」


「まぁ、そういうのもあるんじゃないかな。アリアが渡してきたんだし」


「アリアさん、本当なの?」


「晴近様を振り回そうと思ったんですけど、迷う素振りすらなくサインされました」


「アリアさん、ハルくんを振り回そうだなんて、やめた方がいいよ」


「今ではそんな気がしてます……。あ、でもお二人って仲が良さそうですし、昔から親密な関係なんじゃないですか?」


「親密ではあるかなー……。性格も俺の名前の呼び方も、今では昔の頃に戻ってるけど、授与式の時は今とは全然違ってね」


「いやぁぁ!! その事は思い出させないで!!」


「『晴近! しょせんこの世は食うか食われるかなんだよ!』」


「う"あ"あ"あ"!!」


「『晴近! 私は力を手に入れたよ! これからはライバルだからね!』」


「あ"あ"あ"あ"!!」


「『晴近……武装が無いだなんて可哀想……。雑魚の晴近の事は、聖剣持ちの私が守ってあげるからね?』」


「若気の至りだったのォォォ!!」


 何言ってんの。

 遥、今でも若いでしょ。


「あ、舌打ちしたのってこの時か。気絶から目覚めるなり開口一番、そんな事を言うもんだから。そんな遥も今ではテイムしたんだけどね」


「遥さんもテイムされてたんですか!?」


「『も』って。まさか、アリアさんも?」


「私は初対面でそういう約束をしましたので……」


「遥がテイムされたのは自業自得だから気にしなくていいよ」


「何も言い返せない……」


「……? 自業自得、ですか?」


「うん。アレは俺がテイマーの修行から帰ってきた時だったかな。いきなり勝負をふっかけてきてさ。確か……『晴近! 私は聖剣を使いこなせるようになったからッ! もう武装無しの晴近ごときには負けないッ!』って」


「あの、もうやめない? 私の恥しかないんだけど」


「すいません遥さん。すごく気になります」


「うぅ……」


「テイムしたモンスターをけしかけようかとも思ったんだけど……。俺が直々に相手をしてね」


「あれ? でも、晴近様。手元に神威武装はないですし、普通は勝てないのでは」


「普通はね。端的に言うと、【不動剣クリカラ】でチクッと刺した」


「あぁ……」


「アリアちゃん、あの剣知ってるの!? なんか禍々しい迫力がある上に凄く怖いんだよ!! ハルくん、昔から剣術は鬼みたいに強いし、刺された瞬間になぜかテイムされてたし……」


「あの剣、天界の至宝ですので……。斬られたら無条件でテイムされます」


「そんな、よりにもよってハルくんにだなんて。鬼に金棒だよ……」


「そんなこんなで遥の事は完全に掌握したんだけどさ。なんでも、『こんなのズルい! 正々堂々と勝負しなさいよ!!』だなんて言うもんだから」


「聖剣を使う方がよっぽどズルいのでは……?」


「あの、アリアさん、それ追い討ちだから。もう許してください」


「そういう事で、テイムしたモンスターを一部だけ、強い順にけしかけた。結果だけ言うと勝負にもならないというか。本気でけしかければ全部ワンパンだったね」


「ハルくんのモンスターおかしいから。【エンペラースライム】なんか今でもトラウマだし、【エンペラーゴブリン】には物理的に勝ちようがないし、最弱って言ってた【エンペラー冬虫夏草(とうちゅうかそう)】にも手も足もでないんだもん……」


「え、冬虫夏草? 薬の原料の? あれ、戦えるんですか?」


「アリアさん、肝に銘じておいた方がいいよ。ハルくんの(すめらぎ)式魔改造モンスターは常識で測っちゃいけない」


「ま、魔改造?」


「テイマーのたしなみだよ」


「テイマーって確かにモンスターを調教したり鍛えたりはしますけど。改造……?」


「大体、なんであんな狂気めいたスライムが存在するの?」


「エンペラースライムの事? アレね、実はショゴs──あッ! なんでもない」


「しかも、普通のスライムと違って変な声でなくんだよ? 『てけり・り。てけり』とか。見るたびに狂気に染まりそうだったよ」


「ええええ……。天界で最強って自負しちゃいましたけど、なぜか勝てるビジョンが浮かばないんですが……」


「それは大丈夫。最強は間違いなくアリアだから」


「そうですか……? 晴近様が必要としてくれるなら文句もないですけど」


「うん、戦いとか関係なく傍にいて欲しいし」


「晴近様……」


「なんか良い話し風にまとまってるけど。アリアさん、テイムされたなら【強制召喚】には気をつけた方がいいよ」


「アリアに断りもなく【強制召喚】なんてしないよ。女の子だよ?」


「私の時はなんだったんですかね」


「遥さん、何かあったんですか?」


「何かというか……。お風呂に入ってる時に召喚された……」


「ああ、アレか」


「入浴中に!? 一体どんな経緯が……。まさか、絶体絶命の危機的状況だったとかですか!?」


「その時の状況、気になる?」


「はい、是非教えて下さい……!」


「じゃあ説明するよ」


 ◯


 あれはそう、遥が元の性格に戻って間もなく。

 とある夜の事だった。


「──! これは!! 一刻も早く遥を呼ぶしかない! 『出でよ、我が忠実なるしもべ、遥!!』」


 そして、召喚に成功し目の前に現れた遥は。

 一糸まとわぬ姿だった。


「はっ!? えっ!? 私、お風呂に入って?? ええええええええ!? ハルくん!?」


「あ、お風呂入ってたんだ。ソーリーソーリーマジソーリー。湯冷めしたら大変だから、ちょっとタオル取ってくるよ。床は俺が拭くからジッとしててね」


 そして俺はタオルを持ってきた。

 遥は訳もわからず放心していた。

 もっと色々隠したら? って言おうと思った。

 だけど、『まぁいいや』ってタオルを渡した。


「よし、拭き終わった。遥、今回は【強制召喚】させてもらったんだけど、緊急の用事があってね……!」


「緊急の用事……?」


 タオルで最低限の部分だけを隠している遥。

 呆然と質問を返すのみだった。


「うん。お菓子作りが思いのほか上手くいってさ。クッキーが冷めない内に食べてほしいなって。あと、プリンとゼリーも冷やしてるけど、後でどっちかいる? あ、お風呂上がりならコーヒー牛乳も作ってくるよ」


「あ、うん。プリンが欲しいかな」


「了解」


 そして、糖分控えめのコーヒー牛乳を渡し。

 まだ温かいサクサクのクッキーを食べさせた所で。

 遥はプルプルと震えだした。


「美味しい……美味しいけど、乙女の尊厳がすごい勢いで減ってる……」


「なんか大変そうだね……」


「ハルくんのせいだよッ!? 大体、なんで裸のうら若い乙女が近くにいるのに、そんな平然としてるの!?」


 ◯


「っていう事が。ちょっとした事故だったんだよ」


「えぇー……。さすがに遥さんに同情しちゃいます……」


「うっうっ……。アリアさん、もう私、お嫁にいけないよ。ハルくん、お嫁に貰ってくれる?」


「いや……アリアがいるから浮気になっちゃうし」


「軽いのか誠実なのか訳がわからないよッ! じゃあ愛人は?」


「アリア、どう?」


「ダメです」


「ダメだってさ」


「もう尻に敷かれてるの? まだ再会して一日だよ?」


「あ、長話をし過ぎたね。そろそろ出かけよっか」


 予想外に時間を食ってしまった。

 とりあえずは買い物をして、それからギルドだな。



 ◯


 今回のリザルト


 テイムモンスター一覧


 ・エンペラースライム


 ・エンペラーゴブリン


 ・エンペラーローカスト


 ・エンペラー冬虫夏草とうちゅうかそう


(省略)


 ・遥


 ・アリア



【聖剣フロッティ】


 固有能力

 ペネトレイター

 オーバークロック

 マナディテクト

 ウィークインペイル


 バッドステータス

 ・視野狭窄


 note

 魔剣ほどのバッドステータスはない。

 精神力さえあれば影響無し。

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― 新着の感想 ―
[一言] ところでクリカラって、所有者変われば今まで斬った相手の中のかろうじて息があったヤツ(まさかのテイム)との契約的なモノって、無かった事になるんでしょうかね? まさか3年前のアリア無双してた時…
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