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ターミナル
短編一冊読めちゃうくらいに
鈍行揺られて
イヤに明るい到着ロビーに
上がって見れば
表示板には延着の印
ゲートの柵に両腕かけて前のめりに
待ってる人があると思えば壁に寄りかかり
静かに出口に視線を外さずジッとしてる人
私もあの人を倣う事としよう
素振りも見せずに書き置き残して
出てった男
今まで何にも連絡寄越さず
急に帰るって
相も変わらず身勝手な男め
目の前盛んに繰り返されてる感動の再会
親子が友が恋人達が握手し抱き合う
人がたくさん犇めく所でアタシはムリだなぁと
一人で口元浮かべる苦笑い
何便で来るのかそれすら知らせず迎えに来てなんて
呆れて何も言えないけれど 来ちゃうアタシもアタシ
合間に自販機コーヒーを二つ両手に持って
文句を垂れつつ待ってる姿は好い面の皮
やっと出て来たアンタはすぐにアタシを見つけて
まだゲートを出切らない時にコッチに手を振る
何かイヤミを一つや二つ考えたけれど
思うより先に足が前に出た
こりゃもうしょうがない アタシはヤだけど
何も言わずに抱きついてやる




