餞
黒い額縁に収められた 笑顔で微笑むアナタの前に来ても
未だに現実に心が追いつかない ただ立ち竦んでしまう
悪戯好きのアナタの事だから
いつもみたいに こっちが痺れきらした頃合いに
隅の方から頭掻き照れ臭そうに 今にも現れそうで
ただそこにいてくれれば良かったのに
勝手に行ってしまうんだね
仕方がないよね神様が欲しがったら 抗いようも無い
泣いたら柄にもない事するなと また小言言われるかもね
向こうで笑って会える日まで ちょっと束の間のサヨナラ
あまりに正直に生きて来たために たくさんの敵も拵えた
他人に厳しく小言言うだけじゃない いつも己を責め続けた
周りがいくら良いと言っても それに甘える事なく走り続けた
限界を感じながらそれでも 己自身と戦い続けてたね
ただそこにいてくれれば良かったのに
勝手に行ってしまうんだね
人一倍プライドの高かったアナタ 精神とは裏腹に
肉体が言うこと聞かない衰えていく様 なんと歯痒かったろう
最期までお疲れ様でした
「どうせ短い人生 死んだらその先極楽なら
生きてるうちに辛酸舐め尽くさなきゃ 後で倍美味しく食えないだろう?」
ただそこにいてくれれば良かったのに
勝手に行ってしまうんだね
あまりに沢山のモノを貰い過ぎて 結局返せず仕舞い
仕方ないからこの先も懸命に生きるよ また小言言われる前にね
向こうで笑って会える日まで ちょっと束の間のサヨナラ




