~第一手~
家に帰りテレビを点けるとTマネー争奪戦の全国映像が流れていた。この間は大学生も社会人も学校や会社は休みになっていた。それぞれがTマネー争奪戦に真剣に取り組めるというものだった。政府が全面的に押しているため国民は参加せざるを得ない状況になっていた。こうなると生活に支障が出ると思うのだがそのあたりはロボットが全て補っている。コンビニとかも今は全てロボットがしているのである。
明日から仕掛けるにしても正直他の人たちがどう来るのかが分からない。大学生の俺達がTマネーを奪うためにはまず、見た目が30代の人を狙うのがセオリーではあるのだが、問題は個性である。そして大人たちも馬鹿ではないのでチームを組んでいるに違いない。ただ勝ち残れるのはチーム全員ではないため仲間割れなど起こる可能性もあり得る。今このチームで勝つためには綿密な作戦が必要になるわけだが作戦が必ずしも成功するなんてことは有り得ない。だがこの作戦を二人に伝えたとき二人の反応は思いのほか良かった。そこで自信がついたってこともあり俺たちは夜中の2時にある場所へと向かった。
そこは全国的にも有名な動物園である。この時間に忍び込むことが出来るかは分からなかったが、パスワードでゲートを開けることが出来ると分かったため光井の個性で解くことに成功した。
「言っとくけど私の個性ただじゃないからね」
「分かってるよ。ちゃんと有効に使ってるだろ」
作戦としては、動物園で働いている従業員の情報を動物から聞き出そうとしているということである。この作戦は宮下の個性を聞いたときに思いついた。
「それじゃ葵ちゃんよろしくね」
「まかせて鈴」
すると宮下は動物園の中央と思われる場所で止まり手を祈るように組んで目を閉じた。
てっきり一匹ずつ話をするかと思ったがどうやら一斉に聞くことが可能らしい。
しばらくすると宮下は俺にメモをするようにと言い黙って宮下の言うことをひたすらメモり続けた。一時間後ようやくメモを取ることが終わりそのまま宮下の家に向かった。
家に着いた時にはもう明け方の5時になっていた。
「かなり眠たいと思うから光井と宮下は寝てて大丈夫だ。あとはここから俺が分析するから」
「佐倉くんも眠いと思うから一緒に寝よ」
宮下のその言葉だけ聞くとかなり意味深になってしまうな。
「なに悟ニヤニヤしてるのよ、マジでキモいから」
「キモいとか言うな、お前は早く寝てろ」
「言われなくても寝ますよ、それじゃ一緒に寝ようね葵ちゃん」
俺に見せつけるようにわざと大きな声で言った光井がたまらなく悔しかった。光井が羨ましいとか思ってる時点で俺の負けなんだけど。
二人が寝た後も集中して分析をしていた。長い引きこもり生活がまさかこんな形で役に立つなんて思わなかった。眠気なんて全然なかった。宮下の言葉だけでしか情報がないが得た内容としては充分すぎる結果だ。やはり俺の予想は間違ってなく、従業員のほとんどがTマネー争奪に関わっており、かなりの人数でチームを組んでいた。年齢もいい感じにバラけており強敵になるのは間違いない。この情報を使って共同するというのが狙いだがあくまでも代表に選ばれるのは上位の2名のみ。おれは宮下と光井をサポートし二人を代表にさせる。