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スタイリッシュ=ホワイトニング=サービス~白く美しく、キレイにします~

作者: 八代 眉 /やしろまゆ
掲載日:2019/07/24


「株式会社エスダブリューエス、代表取締役社長、染野史郎《そめのしろう》。

 ……スタイリッシュ、ホワイトニング、サービス……」


 

 私はまだ迷っている。この名刺、本当に信じて良いものかと。

 いつ誰に貰ったか覚えていないのは、日常茶飯事。

 いわゆる有名税の一種だし、そんなこと気にしても仕方がない。

 横書き名刺の右隅に、何となく鼻につくイタリック。

 それでも今の私は、そこからひとつも、目を離せなかった。



 ――あなたの黒歴史を、白く美しく、綺麗にします――

 


――――

――



 辺りにほとんど何もない、湾岸の新埋め立て地にひとりでぽつんと立つ。

 その眩しい純白の建物に私は寂しさと、頼もしさも感じていた。



「いらっしゃいませ。ご予約の……ミツタ様、ですね」

 ほかにお客さんは見当たらないが。

 でも彼は電話で打ち合わせた通り、偽名で受付をしてくれた。

「お待ちしておりました。ワタクシが社長のソメノでございます」

 その逞しい胸板には確かに、その名前のネームプレートがある。

「は、はい、よろしくお願いします。あ、あと……ランチメニューも」

 昼食休憩中に抜け出してきたので、このサービスはとてもありがたい。

「かしこまりました。それでは個室にご案内致しますので、どうぞこちらへ」



 通された部屋にはラベンダーのアロマ。

 素麺とのマッチングは、それほど悪くはなさそうかな。

「お待たせしました、高級素麺、慈母乃糸《じぼのいと》でございます。

 ワタクシも同席、失礼します」


 染野さんはさっそく資料をテーブルに置いたけど、

 この絹ののどごし、しばらくは止められない。


「お召し上がりのままで結構です。

 ご依頼の件、実は完了しております。ご安心ください」

「ボフッ! ケホッ、ケホッ……」

 驚いて、むせてしまった……ごめんなさい!

「あっ、すみません。落ち着いてどうぞ……こちらです」

 




『 Don't be in touch to me. ――もう私には構わないで―― 』





「……いかがでしょうか?」

 彼が開いたファイルの英文と和訳が眩しくて、何度も見直した。

「ドント、ビーインタッチ、トゥーミー……カッコイイです」

 強い女性の決意か決別か……とても凛とした響き。

 あの原稿の読み間違い、これで克服できるかも……うん。



――

――――



「ドンベエタツミ、か――手延素麺《シュエンスメン》の時は無理やりフランス語にしたっけ――。

 両方とも、大丈夫そうだ」

 

 ランチにはまた(・・)、遅効性の薬を入れておきました。

 私《ワタクシ》の事だけは綺麗さっぱり真っ白に、忘れてくれるのが、ベストですから。



 

 完?

 


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