第9話 裏方活動の果て
投稿が遅くなり申し訳ありません。
季節は変化を見せており日差しもつよくなった。梅雨時という事もあり今日は大雨。夏特有の蒸し暑さがじんわりと汗を流させる。
季節のように時間が経てば変化していく、というわけにもいかず俺はかれこれ1週間学校を無断欠席している。本当の生徒会選挙はもう終わっただろう。
今考えると俺が昇降口で相原に鞄を持っている姿を目撃されたのは全て安藤先輩の策略なのだろう。
簡単なヒントで俺を昇降口までおびき寄せ、相原にあたかも俺が鞄を盗んだかのように見せる作戦。そうとも知らずノコノコと現れ術中にはまってしまった。
そんな自分が情けない。後悔を拭えないまま家に引きこもっている。
学校に通わなくなってから毎日のように俺の家に足を運んでくれているのは高瀬だ。
高瀬は毎日のように俺の家にやって来てインターホンを鳴らし俺の名前を呼ぶ。
俺はその呼びかけに応答することはなく、ただ届けられる手紙を高瀬が帰ってから部屋に持って行くだけ。
恐らく高瀬は俺が相原の鞄を盗んでいたのは何かの間違いだと勘付いている。とは言ってもそれは確信ではなく疑念も含まれているだろう。俺が鞄を盗んでいないという証拠もなければ根拠もない。仕方のないことだ。
毎日のように足を運んでくれる高瀬には申し訳ないが俺は2度と学校に行くことはないだろう。相原に合わせる顔もないし同級生からも嫌煙されるだけだ。
雨がしんしんと降りしきる。いつまでも落ち込んでいられないと気分を盛り上げようと奮闘するがそんな俺を嘲笑うように大粒の雨が俺のやる気を洗い流して行く。
気分の乗らない大雨の日。天候なんて御構い無しで今日も高瀬がやって来た。
インターホンが鳴る。
「よしみーん」
「……」
「よしみーん」
「……」
今日もまた、玄関の前で高瀬は俺の名前を呼んでいる。いつも通りしばらくしたら帰るだろう。そう思っていたが高瀬は話しを始めた。
「私ね、よしみんが愛ちゃんの鞄を盗むなんて絶対に無いって信じてる。きっと何かの間違いだって。だからお願い。家を出て学校に来てよ」
……やめてくれ。俺だって本当は学校に行きたい。相原の顔を見たい。また一緒に馬鹿な話をしたいって。そう思ってる。
高瀬だって俺のことを疑ってるんだろ?それならそんな言葉をかけるのはやめてくれよ……。
「お願いだよ。頼むから外に出て来て一度話をしよう。私はよしみんを、よしみんのこと……。信じてるから!!」
その言葉に心を打たれる。俺は相原の鞄を盗んでない。それが事実だ。でもそれを話したところで俺を信じる人は誰もいない。そう思っていた。
でも、信じてくれる人がいた。俺は信じて欲しかった。自分がやってないってことを。
部屋の扉を開けて玄関にダッシュする。玄関に到着しドアを開けずに恐る恐る高瀬に話しかける。
「本当にやってないっておもうか?心の中では俺のことを疑ってるんじゃないのか?」
「そんなわけない。よしみんの愛ちゃんに対する気持ちを私は誰よりも知ってる。だからよしみんを疑うなんてありえないんだよ」
「……」
思わず言葉を詰まらせる。
「だからまた一緒に学校に行こうよ。私も一緒によしみんの無実を証明して見せるから」
「高瀬……」
重たい重たい玄関の扉を開け思わず高瀬に抱き着いた。
俺を信用してくれる人がいた。それだけでこんなにも気持ちが軽くなるなんて。
俺の気持ちが軽くなったのと同様に先ほどまで降り続いていた雨は止み、雲の隙間からは眩い光が差し込んでいた。
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