第39話 最後の最後
投稿が遅くなり申し訳ありません。
今回もよろしくお願いします!
文化祭の劇は無事終わりを迎え、ゆっくりと厳かな幕が下りた。
幕が下り切るとクラスメイトが舞台に駆け寄ってきて賞賛の嵐を受ける。
頭を叩かれたり思い切り抱きつかれたり、手痛い祝福を受けた。
両方を助ける選択をするとは誰も思っていなかったようだ。
しばらくの間、盛り上がりが冷めることはなかったが文化祭の閉会式を行うため早く片付けてくれと文化祭実行委員から促され足早に片付けを始めた。
早く片付けを終わらせなければならないということで出演者は衣装のまま片付けを行なっている。
相原が劇に出演していたことやアドリブで劇を進めなければならなかったこと、どちらにキスをするのか選ばなければいけなかったことなど試練の連続に必死に対応するのがやっとだった。
相原の白雪姫の衣装姿をじっくりと見ることができていなかったため、今頃になって相原の白雪姫の衣装姿に見とれてしまい片付けをする手が止まる。
クラスメイトが片付けを順序良く行なっているのに対し、俺は時間に取り残されたかのようにいつまでも相原の方を見ていたと思う。
すると、後ろから頭を軽く小突かれ振り返る。
「こら。王子だからって仕事サボっていいわけじゃないんだぞ」
そこにはあきれた様子の高瀬がいた。高瀬に小突かれた俺はようやく我に返り高瀬に、ごめんと謝罪をする。
「もうね、そこまで潔くあいちゃんのことを好きな姿見せられたら私も流石に諦めがつきますよ。と言うかこれで諦めつかない女子なんていないって」
「……ごめん。高瀬には鞄泥棒を疑われた時も最後まで信じてくれたら助けてもらって本当に感謝してる。でも……」
「分かってる分かってる。言いづらいこと言わせちゃってごめんね」
高瀬は空気が重くならないよう陽気に話してくれてはいるが、高瀬のことをよく知っている俺ならその姿は直ぐにでも嘘だと分かった。
本当は泣きたい程辛いだろう。
仮に相原に好きな人がいる事を知り、今から相原がその男に告白しに行くなんて話を聞いたら不登校になりかねない。
「高瀬、俺は相原が好きだ。でも、高瀬にはこれからもずっと友達でいて欲しい。また3人で出かけたり遊びに行ったりしよう。もしかしたらいつかお互い相手が出来て4人でダブルデートなんかしたりしてな」
「それは面白そうだね。まあ今日よしみんが告白して成功する保証もないしね」
そりゃそうだ、と思わず自分でも納得する。
「よしみんもあいちゃんのことばっか考えてないでちゃんと片付けしなよ!私も向こうの方で手伝わないといけないことあるから。もう行くね」
高瀬は少し俯き俺と目を合わせようとせず走り去ってしまった。
高瀬が俯いていたのは目に溜まった涙を俺に見せないためだろう。
走り去っていく高瀬は手で涙を拭う仕草を見せた。
高瀬には感謝の気持ちしかない。ここまで俺のことを想ってくれている女の子なんて生まれて初めてだ。
そんな子に俺は涙を流させてしまっている。もっと別の方法で、もっと上手くやれたのではないかと自分を責めるしかない。
高瀬が涙を流すのは今回だけではないかもしれない。
俺が相原のことを好きで、相原に優しくしているシーンを目にするたび、家では沢山の涙を流していたかもしれない。
俺は高瀬が流してくれた涙を無駄にしないよう、今から相原に告白しに行くのだ。
告白を成功させて、これからもずっと相原と高瀬の3人で過ごしていきたい。
今までは弱気だったのに、何故か今は相原への告白が成功しそうな気分になっている。
学校のテストで、分からないなりに解答欄を全て埋めたら何故か90点くらい取れそうな気がしてくるあれだ。
そう思った時のテストの点数は大体低い。と言うことは今回の告白も成功しないと言うことになる。
いや、もうネガティブな言葉を口にするのはやめよう。
自分に自信を持って告白した方が成功率上がるかもしれない。
一世一代の大勝負。ここで告白が失敗すればこの先の高校生活は真っ暗だ。もしかしたら誰とも口をきかないかもしれない。
それでも俺は決心した。裏方は今日で終わり。新しい自分になるんだ。
片付けも終わり、衣装姿の生徒も皆着替え制服に戻った。
その生徒の中から相原の姿を見つけ、名前を呼ぶ。
「相原」
「な、何よ。どうかした?」
先ほどの間接キスの効果もあってか相原も少し緊張した様子だ。
「閉会式が終わったら生徒会室に来てくれ。話がある」
「……わかった」
言った。言ったぞ俺。もう後には引けない。やるしかないんだ。
その後、俺の頭は相原で埋め尽くされ閉会式の内容は全く頭に入ってこなかった。
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次回でこの作品は最終回となり、8月1日より新しい小説の連載を始めます。
8月までに少しでも多く書き溜めて、毎日投稿出来るよう頑張ります!!




