第36話 アドリブ
今回もお願いします!!
一日中PCの画面を見て目が疲労しています……。
文化祭の劇本番中、舞台袖で自分の出番のため待機していた俺は急に衣装変更があると言われ更衣室に向かった。
劇も既に開演しているというのにこんな直前に如何程の変更があるのかと思ったが、何やらマントの様なものを着せられた。
わざわざこれを本番中に着る必要があるのか、と若干の不満と疑問を抱いたが、自分の出番に備えるため着替えを終え急ぎ足で舞台袖に戻った。
更衣室に行く前に機嫌が悪い様子だった相原の姿は舞台袖には見当たらない。
相原の機嫌の悪い様な、寂しそうな表情が頭の隅から離れない。今すぐ飛び出して相原を探しに行きたい。
しかし、俺が舞台袖に戻った頃には劇はもう既に終盤に差し掛かっていた。
白雪姫役の高瀬はステージ上で7人の小人と歌い、踊っていた。
後は白雪姫役の高瀬が毒リンゴを口にすれば俺の出番はやってくる。
出番を直前に控えた俺がいなくなれば劇は台無しになる。俺がこの場を離れるわけには行かなかった。
諦めがつかない俺は不安な思いを抱えながら舞台袖から劇を見守っていた。
しかし、不安なままでは演技に影響するかもしれないと一旦その不安を忘れるため頭を左右に振る。
それから高瀬と7人の小人が踊っている舞台にもう一度目を向ける。
すると、そこには白雪姫役の高瀬と7人の小人、それともう一人誰かが踊っている姿が見えた。
誰が舞台で踊ってるんだ?
しかもその謎の一人は白雪姫とは色違いの、同じ服を着ていた。
誰かが間違えて出演しているのか?
いや、そんなアホなミスをおかすわけがない。
薄暗い舞台袖から照明で照らされたステージ上にいる誰かを目を凝らして見つめる。
ステージ上で高瀬と小人たちと一緒に歌い踊っていたのは高瀬とは色違いの白雪姫の服を身に纏った相原だった。
相原は照明係か何かで、劇に出演する予定は無かったはずだ。
それなのに、相原が舞台に立ち演技をしている。
俺と同じく舞台袖から劇を見守っていた監督、金井に相原が舞台上に立っている理由を尋ねる。
「おい、金井。あれはどういうことだ。なんで相原が白雪姫の格好して劇に出てるんだ?」
「どうしてもこうしてもないよ。劇は生き物。私が劇の最中に、こうした方が面白くなると思った時に勝手に話をアレンジするのさ」
だめだ……。金井の監督スイッチは今も押され続けている。
劇は台本にない二人目の白雪姫、相原と高瀬の二人をヒロインにしたまま進行した。
そしてついに劇は最終シーン、白雪姫が毒リンゴを口にして眠りにつくシーンを迎えた。
待ってくれ、俺は白雪姫が2人になってからの台本を全然知らないんだが。
焦る俺を嘲笑うように相原と高瀬の二人は毒リンゴを口にしてそのまま眠りについてしまった。
「か、金井!台本は無いのか!?俺どうしたらいい!?」
「アドリブで頑張って」
「アドリブ!?おまっ、本当に台本ないのか?」
「だから無いっていってるでしょ!有ってももう間に合わないから!頑張ってね」
「ああもう!!どうなっても知らんからな!!」
そして俺は半ばヤケクソにならながら、この劇の内容も最終着地点も分からないままでステージという名の大海原へと走り出した。
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次回もよろしくお願いします。




