第28話 決心
おはようございます!
朝から庭の草むしりをさせられました。
暑いです。
今回もお願いします!
「ま、待て、俺と高瀬が主人公とヒロイン?」
「そうよ。そうなったというか、そうしたわ」
俺と高瀬はすでに1ヶ月も会話をしていないし、関係が元に戻る兆しも無い。
そんな俺と高瀬が文化祭の劇で主人公とヒロインを務められるはずがない。
色々言いたいことはあったが自分を落ち着けるため、はぁと大きくため息をついた後で相原に質問する。
「そうしたってどういうことだよ」
「……どういうことだじゃないわよ!あんた達もう1ヶ月も口を聞いていないのよ?そのうち仲直りすると思ってたのに」
相原の声で教室が一旦静まり返るが、気を遣ってか教室にいたクラスメイトは何事も無かったかのように振舞ってくれている。
ちょっと来てくれ、と声をかけ相原の手を握り人のいない静かな場所、図書室に向かった。
無意識に握ってしまった相原の手は震えていた。慣れない大声を出すのは相当な勇気が必要だっただろう。
高瀬のみならず相原にも辛い想いをさせてしまっている自分が不甲斐ない。
俺と高瀬が1ヶ月も会話をしていないという状況は、俺にとっても、高瀬にとっても辛いものだった。
しかし、一番辛い思いをしていたのは相原なのかもしれない。
原因も分からないまま俺と高瀬が会話をしない状況が1ヶ月も続いているのだから、痺れを切らすのも当たり前だ。
図書室に到着し、改めて相原と話し始める。
「……ごめん。訳わかんないだろうけど理由は言えないんだ」
「理由なんて気にならないわ。あんたなら出来る」
何を根拠に俺なら出来ると言っているのか分からないが、俺の目をまっすぐに見つめる相原は自信満々だった。
林間学校で相原を助けたことで俺に対する信頼も少しは上がっているのかもしれない。
「ありがとな。次の休み時間に話しかけてみる」
そして1時間目の授業が終わり休み時間に入った。
高瀬は自分の席に座っている。よし、俺を避けていること以外は普段と何も変わらない。
高瀬、と名前を呼び声をかけてみたが高瀬は席を立ち教室を出ていってしまった。
しかし、ここで諦めたら結果は前と変わらない。
元はと言えば高瀬が相原の家から帰ろうとしたとき、俺が高瀬を呼び止めて話をしていればここまで状況が悪化することはなかったかもしれない。
高瀬の背中から感じた、ついてこないでというオーラに足を竦めてしまったが、もう弱気ではいられない。
早歩きで俺から逃げる高瀬を追いかけるが高瀬は姿を眩まし話しかけることは出来なかった。
次の休み時間も、また次の休み時間も声をかけようとするが高瀬は逃げ回る。
中々高瀬を捕まえることが出来なかったが、最大のチャンス、昼休みがやってきた。
昼休みは時間がたっぷりある。昼食を食べている暇など無い。高瀬と話をしたい。
昼休みに入ってすぐに高瀬の机に向かうがやはり高瀬は逃げる。
そんな高瀬にしびれを切らした俺は強い口調で声をかける。
「おい待てよ。話を聞いてくれ。なんで喋ってくれないんだよ」
高瀬は返事をしてくれない。もう二度と、会話をしないつもりなのだろうか。
そんなことを考えながらも、めげずに高瀬を追いかけ回す。そしてたどり着いたのは屋上。
屋上には逃げ場がない。追い詰めたぞ高瀬。
「やっと話せるな」
屋上で逃げ場を失い立ち止まった高瀬はこちらに振り向くことはなく、向こうを向いたまま話し始める。
「……私は話なんかしたく無い」
「そうかもな。でも俺は話をしたい」
「……私は私なりに頑張ってる。よしみんが好きなこの気持ちを消そうと必死になってるの。この気持ちを消し去らないと戻れないんだよ。もう一度3人で楽しくなんて無理なんだよ……」
ここまで弱気な高瀬を見たことは一度もない。そうさせてしまったのは他でもない俺自身だ。
「無理じゃない。俺も相原も、高瀬とまた3人で話がしたいと思ってる。高瀬はどうなんだよ」
「……私だって、私だって話したいよ!話したいに決まってるじゃん!私はよしみんを好きな気持ちを消し去って、あいちゃんとよしみんが付き合う。それでいいの。それなのに、それなのにあいちゃんは私を文化祭の劇のヒロインにするし、主人公はよしみんだしもうどうしたらいいかわからないよ……」
高瀬はなんでそこまで俺と相原をくっつけたいんだ?
俺は相原のことが大好きだ。だが、相原は俺のことなんか好きではない。そもそも、無理な話なのである。
しかし、解決策は一つしかない。これが解決策なのか、さらに関係を悪化させることにらなるのかは見当も付かない。
それでも、俺も小林や高瀬を見て勇気を出さないとと思ったんだ。
いつまでも裏方だなんて言ってられない。
高瀬のためにも、相原のためにも、自分のためにも。
「ーー俺、文化祭が終わったら相原に気持ちを伝えるよ」
俺の口から発せられた驚きの一言に、高瀬は驚くこともなくやっとこちらを振り向いた。
「やっと決心したか。ばか」
好きな人が他の人に想いを伝える。どれだけ苦しいことなのか、俺にはまだ分からない。
しかし、涙を流していた高瀬の顔は何故か少し笑っているように見えた。
ご覧いただきありがとうございました!!
この章でこの作品を完結させたいと思います。
多くの方にご覧いただいてとても嬉しいです。
次の話も製作中ですので引き続きよろしくお願いします(╹◡╹)




