第17話 林間学校3
今回もよろしくお願いします。
バスは目的地に向かう途中、10分程サービスエリアに停車し休憩を挟んだ。
相原は出発してしばらくしてからずっと夢の中。サービスエリアでの休憩時間もバスの中にいた。
他の生徒たちはバスを降り、各々菓子や飲み物を購入していた。
夏もいよいよ佳境に差し掛かった7月。この暑さの中で水分摂取を怠ることは自滅行為だ。
熱中症になる危険もあるので俺はサービスエリアで相原にお茶を買った。
そしてスヤスヤと眠りにつく相原の前にあるドリンクホルダーにお茶のペットボトルを挿しておいた。
隣に座っている相原は未だに目を覚まさない。
白雪姫のように深い眠りにつく相原にキスでもしたら目を覚ますのではないだろうか。
そう考えたがもちろん行動に移すはずもない。
バスは目的地に到着した。
「相原。相原〜。あ、い、は、ら!」
声をかけても中々目を覚まさない相原の頬を人差し指で突っついたのは俺に非があるわけではない。目を覚まさない相原に非があるのだと考えていただきたい。
ボディータッチは得意ではないが、仕方がなく相原の肩を揺さぶり起きるよう促す。
「……おはようママ」
「俺はママじゃないぞー。よしみんですよー」
「……うぇえ!?」
ごめん。ごめんよ相原。俺はママじゃないんだ。どちらかというとパパなのだよ。
いや、そう言うことでもないんだが。
「おはよ」
「っべ、別に昨日の夜楽しみであんまり寝られなかったとかじゃないのよ」
「そっかー。俺は楽しみで眠れなかったよ」
思わず墓穴を掘る相原。可愛い。
「このお茶は何?」
「全員に配布されたんだよ。相原は寝てたから前に挿しておいた」
「ありがと」
目的地のキャンプ場に到着すると積み込んでいた荷物を下ろす。
1泊2日の日程であるため荷物は意外と多い。
「よしみん荷物多くない?」
「そうか?」
高瀬から質問されたが何気なく受け流す。
俺は今日の持ち物を全て2つずつ持ってきている。
相原が忘れ物をしやすいと熟知しているため、いかなる忘れ物にも対応するための大荷物だ。
荷物を下ろすと各部屋に分かれて荷物を起きに行く。
部屋割りは通常同じクラスの生徒同士で組まれる。
しかし、今回の林間学校には学校を引っ張る役目である生徒会の親睦を深めるという目的もあるため、ホテルの部屋割りは北村と2人部屋になった。
どうせなら相原と同じ部屋に……。勿論、男子と女子は同じ部屋になることは無いのであり得ない話なのだが。
「男2人で同じ部屋か……」
「おい。本音が漏れてるぞ」
「ごめんごめん。まあ同じクラスの話したことない連中よりはだいぶマシだよ」
「それは良かった」
北村には呆れられたが、本当の話である。北村と同じ部屋なら気は楽だ。一緒に勉強した仲でもある。
荷物を置くと宿の前に集まり班ごとに整列する。これから昼食クッキングタイムだ。
メニューはお約束のカレー。作業は簡単だが連携を取りながら料理するのは骨が折れる。
ましてや同じクラスの奴との班だからな……。
顔を知っている程の仲でしかない5人と同じ班なのは中々きつい。
ちなみに俺の班には高瀬がいる。それは安心材料だ。
皆がカレー作りに没頭し黙々と作業する中、俺は相原の事をずっと見ていた。
「こらーそこの少年よ。あいちゃんが可愛いのは分かるがずっと見てないでカレー作りにも参加しなさい」
「おや、これは高瀬様。申し訳ありませぬ」
「分かれば良いのじゃ」
高瀬に指摘されてからはカレー作りに没頭した。
あとはカレーを煮込むだけと言うところまで来た時、後ろから肩をトントンされ振り返る。
そこには同じクラスの奴がいた?顔は知っているが名前が思い出せない。
「あーえー、誰だ?」
「同じクラスの小林だよ!」
こいつ、相原と同じ班の奴じゃないか。さっき相原を見ていた時に居たな。
「あー小林ね。はいはい。小林。それでその小林が俺に何の用だ?」
「俺と班変わってくれねぇか?」
「ああ。それくらいお安い御用だ……は?」
まさかの一言に俺の体は一瞬硬直した。
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