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第13話 きっかけ

元生徒会長とのバトルも終わりましたので章管理をさせていただきます。

 今日は土曜日。先日、相原と交わした約束通り、会社も学校も休みで家族連れの姿が多く見られるファミレスにいるわけだが……。


「なんでお前がいるんだ」


「理由なんて無い。ここに私がいる。それが事実なのだよ」


「その説明を理解できる奴なんていねぇよ」


 おふざけを交え話しているのはおなじみ高瀬である。今日は相原と2人きりのご飯だと思っていた。しかし、相原から連絡を受け家を出るとそこには相原と高瀬の二人が立っていた。

 2人きりのご飯だと思い込んでいただけに悲壮感は漂うが、不登校中は高瀬に救われた。そう考えると無碍にもできない。


「おふざけはここまでにして、私もよしみんにお詫びをしたいなって考えてたの。何しようかなった思ってたら愛ちゃんがご飯をご馳走するって言うから私もお邪魔させてもらったわけだよ」


「そーか。気にして貰わなくても良いのに」


「私もクラスメイトによしみんは悪くないって言い切れなかったから」


 そう悪びれつつ、高瀬は机に置かれたイチゴパフェを頬張り続ける。


 暗い話でも明るく話せるのは高瀬のいいところだ。


「吉見も何かデザート頼めば良いじゃない。もうお腹いっぱい?」


 お腹がいっぱいというよりは心がいっぱいだ。休日に相原と一緒にご飯を食べているという事実にこの上ない幸福を感じている。


「そうだな。流石に今から2人が食べているようなパフェを食べるのはきつそうだ」


「一口食べて良いわよ。ほら」


 相原は迷う様子もなくスプーンでパフェを大きく掬い、俺の前にそれを差し出す。


 ……それ間接キスだよね?いいの?え、いいの?


「……いいのか?」


「いいに決まってるじゃない」


「……本当にいいのか?」


「なによもう煩わしいわね」


「っんむぐ!?」


 躊躇している俺にお構い無しで相原はパフェを掬ったスプーンを俺の口の中に運んだ。


「……や、やるねぇ愛ちゃん」


「え、なにが?」


 首を右方向に倒し頭上にクエスチョンマークを浮かべている相原に、高瀬は手指を使い小さくジェスチャーし間接キスだということを伝える。


「……。そ、そそ、そういう訳じゃないんだから!ただパフェを食べてもらおうと思っただけでっ」


 茹で始めた蟹のように急激に赤面した相原。その姿を見て笑い転げる高瀬を静止し、相原をどうフォローしようか考えていると、膝の上に置いていた携帯を机の下に落としてしまった。


 携帯が落ちた音を聞き真っ先にそれを拾おうとしたのは相原だ。


 片手を机に掛け自分の体重を支えるように下を覗き込み手を伸ばす。俺も携帯を拾おうと思ったが、今この瞬間に下を見ると相原の見えてはいけない部分が見えそうでやめた。


 どこぞの漫画のようにラッキースケベが転がり込む男ではない。裏方紳士である。


「気をつけなさいよ。画面割れたりするかもしれないし」


「ああ。ありがと」


 俺の携帯を片手に持ち、腕を伸ばして俺に渡してくれた。この姿を見て中学の頃を思い出す。


 似たような場面が中学1年の時にあった。


 その日は体育の授業があり、クラスメイトが移動を始めていた。移動中、俺は帽子を忘れたことに気付き教室に戻った。


 移動教室では、日直が教室の鍵を閉める決まりとなっており扉は開かなかった。


 唯一希望があるとすれば教室の壁の下の方にある小窓だ。小窓には鍵が無く開くことは可能。しかし、人が一人通れるか通れないかというサイズだった。


 小窓を通れるかどうか悩み立ち尽くしているとそこへやってきたのは中学生時代の相原だ。


「どうしたのよ」


「教室の中に帽子を忘れちゃってさ。鍵閉まってて入れないんだ。下の小窓みたいなとこから入れなくはなさそうなんだけどギリギリかなって悩んでて」


 すると、相原は(おもむろ)に地面を這いつくばり小窓を(くぐ)り始めた。


「ちょ、相原!?なにやってだよ」


「なにって、あんたの帽子を取りに行くんじゃない」


 相原は通れるか通れないかギリギリの広さの小窓を通り抜け、教室に入っていった。


 そして俺が忘れた帽子を手にすると、またその小窓を通って廊下に出てきた。


 埃まみれになった服を両手でパンパンと掃いながら帽子を差し出す相原。


「はい」


 帽子を持った手は若干ではあるが黒く汚れていた。


 中学1年生と言えば男子は今からが成長期で、まだ女子の方が体の大きい生徒が多い。高校生になった今でこそ俺は相原より身長が15センチほど高いが中学1年生の頃はまだ同じくらいの身長だった。


 相原が小窓を潜り抜けられたのなら、俺でも潜り抜けられたはずだ。自分にとって利点が無い行動を咄嗟に行える相原に感服した。

 それまでは相原を近所の友達程度にしか考えていなかった俺が相原を意識しだしたのはあの出来事がきっかけだったのかもしれない。今となっては相原を好きすぎて裏方に成り下がってるが……。


 相原と過ごす安息の休日は相原を好きになったきっかけを思い出す良い機会となった。





ご覧いただきありがとうございました。好きになったきかっけは人それぞれですが

どれもとても大切な思い出だと思います。

ご覧いただきありがとうございました。次回は5/16日投稿予定です。

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