第11話 休息
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そろそろ相原をたくさん登場させたい。
全校集会の後、相原と会話をしようと相原に近づき何度も声をかけようと試みたが相原は目さえ合わせてくれなかった。俺が鞄を盗んだという濡れ衣は無くなったはずだが……。
しかし、無理に話かける訳にはいかない。相原が俺と関わりたくないのであればその気持ちを尊重するのが裏方ってもんだ。今日は黙って家に帰ろう。
下校のため教室を出る際、やたらとクラスメイトに話しかけられたのは言うまでもない。私が無くした家の鍵も探してくれない?なんて言われる始末だ。
そんな言葉に動揺しながらも俺の顔からは自然と笑みが溢れていた。
家に着くと鞄を放り投げ自分の部屋のベッドに寝転がる。不登校中は精神的に弱り、家でくつろぐことは一切なかった。今日ばかりは何も考えず気楽な時間を過ごしたい。風呂に入浴剤でも入れて疲れを癒そう。
そう思っても体は中々動かない。ベッドに寝転がったまま小一時間スマホを触り、気が済んでから起き上がり風呂場に向かった。
不登校中は暗く見えていた階段も今日は明るく見える。気持ちが明るくなることで景色まで明るくなるとは思いもしなかった。
久々にゆったり入る風呂を最高の形でくつろぐため、俺は風呂を入念に掃除した。
浴槽の中は勿論、鏡の水垢や石鹸の入った容器の裏側、床や壁の汚れも一つ残さず掃除した。
風呂掃除は俺の仕事となっており俺が不登校になっている間、家族が風呂掃除をすることは一切無かった。俺がこ不登校を続けていたらこの家の風呂は悲惨な事になっていただろう。若干の恐怖を覚えつつ掃除を続けた。
風呂掃除を終え自分の部屋に戻ると相原の姿が頭に浮かんだ。
何故俺と話しをしてくれなかったのか。目を合わせてくれなかったのか。考えれば考えるほど謎は深まる。そんなことを考えている時間が無駄だと気づき最後には考えるをやめた。
前向きに考えよう。相原は俺を鞄泥棒だと思い込んでいたが、それは間違いであるということに気付いたわけだ。明日からはまた裏方活動を再開できるだろう。
そう考えていると風呂が沸いた合図が聞こえてくる。
着替えを持って風呂場に向かい頭と体を洗う。
辛気臭さが漂っていたので身体の隅々まで満遍なく洗い、汚れと一緒に辛気臭さも洗い流した。
新緑の香りと書かれた入浴剤を入れたお風呂からは鼻にスーッと抜ける爽やかな香りが立ち込めている。さらに風呂場の窓を少し開けると外気が入り込み、あたかも森の中の露天風呂に入っているような感覚に陥った。風呂ってこんなに気持ちよかったっけなぁ。
10分ほどお湯に浸かり、風呂を出ようと浴槽に手を掛けた瞬間インターホンが鳴った。
配達か何かか?なんだよこんなときに、と思いながらも配達業者に罪はないと自分を抑え焦って着替えた。
「はいはーい今開けまーす」
とりあえずパンツとTシャツで玄関に向かった俺は何も考えずに扉を開けた。
するとそこには、相原が立っていた。
……は?相原?
……相原!?
相原だよな?本当に相原だよな?なんども顔を見て確かめるがやはり相原だ。
「どうした?相原が俺の家に来るなんて珍しいじゃないか」
「そ、そうね。小学校以来かしら。特に用事はないんだけど……」
相原は恥ずかしそうにもじもじと地面を見ながら話している。そのため、まだ俺がパンイチだという事に気付いてないらしい。
もしかしたらこのままバレずに行けるのでは?
「ちょ、吉見!?あんたなんて格好してんのよ!」
はい無理でした。
「ごごごごごめん!!」
焦って扉を閉める。なんで俺の家に相原が来たんだ?思考回路はショートしている。
「と、とりあえずすぐ着替えるから待っててくれ」
「わ、わかった」
そう言い残して風呂場にダッシュし用意していたズボンを履いて髪を乾かした。
若干湿り気のある髪が気になったが、相原を待たせていることの方が気になったので急いで玄関に向かった。
「ごめん。待たせたな」
「いや、急にきた私が悪いの」
おおううん??いつもと違ってしおらしいじゃぁないか。こっちが調子くるっちまう。
調子が狂いながらも自分に落ち着けと言い聞かせ、相原を2階の自分の部屋まで案内する。
「ここが俺の部屋なんだけど……。汚くてごめん」
不登校になっていた期間は自暴自棄だったため部屋の片付けなど一切していない。
なんならお風呂を上がってから部屋を片付けようと思っていたのだが、遅かったようだ。
「で、要件は?」
「……」
相原が黙り込む。やめてくれよ相原。理由もなく俺の家に来るはずないだろ?
相原が俺の家に来たのは小学生以来だぞ?絶対何かある。まだ鞄泥棒のこと怒ってんのかなぁ。
俺の指紋が鞄についたとか?そんなことで怒ってるの?まじなんなの?
しばらく2人の間には静寂が生まれた。
「ーーごめんっ!!」
「……何が!?」
急な相原からの謝罪。俺は相原が家に来たという驚きと焦りから頭の回転は停止しており、何についての謝罪なのか理解することができなかった。
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