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第10話 全校集会

いつもご覧いただきありがとうございます。


 あれから俺は高瀬に事実を伝えた。俺が相原の鞄を持っていたのは生徒会長の策略であること。自分は悪くないのに本当のことを話しても誰も信じはしないと決めつけ家に閉じこもっていたこと。


 高瀬は全ての発言を何も否定せず信じてくれた。それだけで心は救われる。

 不安は大いにあったが俺を信じてくれた高瀬のためにも登校することを決めた。


 一人での登校はあまりにも目立つ上に、標的になり集中砲火を受ける可能性もあったので今日は高瀬と2人で登校している。


「……昨日はありがとな」


「なんてことないよ。まあ帰りにアイスくらい奢ってくれても良いけどね」


「お安い御用だ」


 久々の日常。何気ない会話。懐かしさすら感じる。たった1週間程だがそれほどに不登校期間は長く感じていた。


 ここに相原がいれば最高なんだけどな……。


 そんな願望を胸に閉じ込め歩みを進める。


 朝早く登校すると同級生と一緒にいる時間が長くなるからという高瀬の配慮もあり、学校には1時間目が始まる直前に到着した。


 1時間目は全校集会ですでにクラスメイトは体育館に向かっており教室には誰もいなかった。

久々にやって来た教室という空間に落ち着きを覚える。これも高瀬の配慮のおかげだな。


 誰もいないことに安心し胸を撫で下ろしながら高瀬と2人で体育館に向かった。

 体育館ではすでに生徒たちが列を形成しており、入る隙間がないため一番後ろに2人で座った。


 一番前には相原の姿も確認できる。久々に見る相原。幸せすぎる。空腹は最高のスパイスとはよく言うがよく分かる。


 幸せに浸っているのもつかの間、後方に並んでいた生徒は俺の存在に気付き小声で話しはじめた。

 覚悟はしていたが、俺の話をしているとわかっているだけに心中穏やかではない。


 そんな緊張感の中、全く緊張感のないヨボヨボの校長が挨拶のために舞台に登壇する。

 おぼつかない足取りではあるが、杖をつきプルプルと震えながら、確実に歩みを進めている。


 その姿を見てると変な緊張感で手に汗を握っていた自分が馬鹿らしくなった。無理矢理にでも学校に来て良かったかもな。


 全校集会は順調に進み、最後は部活動の定期報告。

定期報告会は活動内容、活動記録、今後の予定などを報告する場だ。


 全ての部活が報告をするため、長時間床に座っている必要がある。かなり面倒くさい。それでも今の俺には教室で授業を受けるよりよっぽどマシな時間だろう。


 報告会は順調に進み最後は放送部の報告。放送部の報告者は生徒会書記の金井だ。


 金井が放送部だという意外な事実に驚いた。引っ込み思案な性格からは想像しづらい。まあ顔が見えないって意味では向いてるのかもしれないが。


「最後に放送部が撮影した動画を流します」


 放送部の報告も終盤に差し掛かり、準備されていたプロジェクターからスクリーンに映像が映し出された。


 そのプロジェクターには夕日に照らされた校舎の中を、歩きながら撮影された動画が収められていた。

 丁度俺が鞄泥棒に仕立て上げられた日もこんな綺麗な夕暮れ時だった。


「これはこの学校に入学したばかりの1年生の皆さんのために校内マップ動画を撮影していた時のものです」


 なるほど。確かに紙のマップよりも動画で校内を説明してくれた方が理解しやすいかもな。


 それにしても金井の奴、いつもは噛みまくりなのに今日はえらくスラスラ話すな。


 引き続き動画を見ているとある人物が教室に入っていくところが動画に映り込んだ。元生徒会長、安藤先輩だ。


ーーーーーーーーーー


「やぁ。吉見くん。奇遇だね」


ーーーーーーーーーー


 ん?この安藤先輩の言葉、どこかで聞いたことがあるような……。まさか!?


俺は思わず高瀬の方を向き目を合わせた。


「この動画には1年生の皆さんならご存知の鞄泥棒事件の真実が収められています」


この金井の発言に生徒達は騒然とする。そんな生徒達の中から大慌てで飛び出してきたのは安藤先輩だ。


「お、おい放送部!!何だこの動画は。こんな動画を流すなんて聞いてないぞ!今すぐやめろ!」


 急いで動画を止めに行こうとした安藤先輩を放送部の顧問である男性教諭がガッチリと抑える。


「こんなことしてどうなるか分かってんのかぁ!!ただじゃ済まないぞぉ!!」


 そう言って暴れまわる生徒会長を複数の先生が抑える。その姿からはいつもの余裕と自信は見受けられない。


ーーーーーーーーーー


「どうしたんですか」


「君こそ放課後の教室に一人で何を?」


「忘れ物を取りに来ただけです」


「そうか。それにしてもこのクラスは不用心な人が多いなぁ。教室に鞄を置いていくなんて」


「まあ確かにそうですね」


「鞄がなくなったら困る人も多いだろうねぇ。制服も無くなったら大変だよねぇ」


「ーーっまさか!?」


「北村くんの時はやってくれたな吉見。せいぜい頑張るんだね」


「おい待て!!」


ーーーーーーーーーー


 安藤先輩が鞄を隠した決定的な証拠が今まさに放映されており、体育館中が騒然となっている。

真犯人が安藤先輩だという衝撃の事実に驚きを隠せない様子だ。


「これが全てです。この後、吉見さんは相原さんの鞄を必死に探し回り昇降口に隠されていたのを見つけた。その瞬間を目撃されただけなのです。皆さんが疑っている吉見さんはなにも悪くない。本当の犯人は元生徒会長、安藤先輩です」


金井……!あいつやってくれたな!


そう言えば鞄を探すのに急いで教室を飛び出した時に金井とぶつかった。あの時の映像が残っているなんて。


とんでもないどんでん返し。俺自身喜びよりも驚きで呆然としている。


 大きな歓声が体育館中に響き渡り、クラスメイトは俺の周りに集まり謝罪を述べる。


「ごめんな吉見。疑って悪かった」


「酷い言葉を吐いてしまってごめんなさい」


「吉見ってすげぇ奴だったんだな。校舎を走り回って鞄見つけるなんてヒーローじゃねぇか!」


 俺の周りに集まった大勢の生徒の隙間から辛うじて見えたのは相原の後ろ姿。口元を手で押さえているように見えた。


 まさかこんな形で安藤先輩の悪事が明かされるとは思いもしなかった。金井には感謝しても仕切れない。


 勇気を振り絞って登校してきた初日にこうもすんなり問題が解決するとはな……。人生何があるかわからんもんだ。


 こうして安藤先輩は会計の座を降ろされ2週間の謹慎処分。そして俺は念願の副会長の座に返り咲いた。













今回もご覧いただきありがとうございました。

小説を書き始めたばかりで文書にも内容にも稚拙な部分があると思いますが良ければポイント評価や感想をいただけると幸いです。

批判でもなんでも構いません。

多くの作品を読み、自分でも作品を作り、失敗しながら経験を積み重ねて成長できるよう努力します!!


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