傷を負った少女
森を抜けて湖畔にたどり着くと、青く輝く広大な湖が見渡せた。その周囲は真っ白な砂浜で南国の島とも思うほど綺麗だった。ゴーレムの足跡は分かりやすくはっきりと残っていた。湖畔の周辺を歩くとやがて一つの塊が見えてきた。茶コケた色にあの体格は間違いなくゴルゴンだ。スラミンは無事だったことに安心してゴルゴンのもとへ転がっていった。エリックもその後を追う。
スラミンは「そこにいたんだね、何で戻って来なかったの?」するとゴルゴンは振り向いて指を立てて静かに!と言った。
え?とスラミンが言うとゴルゴンの側に一人の少女が眠っていた。しかも、かなり傷を負っていた。
「ゴルゴン、そいつは人間じゃないか!」
エレンは剣を取り出し、ゴルゴンに向ける。
「どうして、庇っているんだ!」
「それは、、、もしかしたら魔王の血を継いでるかもしれないと思って、、、」
「はぁ?何言ってる。魔王の血を継いでるのは俺だけだ」
「でも、見たんだ俺。彼女の両目に宿った力が主人と酷似してたんだ」
「そんな訳ないだろ、、、」
スラミンは眠っている彼女に近づき覗き込んだ。
「かなり深手を負っているように見える」
「この子は鶏と戦っているときに、主人と酷似した力を使ったんだ。エレンは主人の腕の力を使えるが、この子は目に宿る力で鶏に攻撃をしかけていたんだ。本来、主人の目を見たものは恐怖のあまり動けなくなってしまうが、鶏には何の効果もなかったけどね」
エレンは「、、、、え?鶏が!?」
ゴルゴンは頷く。そして視線を少女に向けて「しかも、とんでもなくすばしっこい鳥で嘴で何度も攻撃してくる。これは、まずいと思い少女に加勢した。奴の嘴が思った以上に頑丈で体中に罅が入りはじめた。僕はすばしっこい相手と戦うのは不得意だから少女をかばいながら自分なりに戦ったよ」
「戦ってるうちに、鶏は何かを察知したのか僕達の前から飛んで消えてったよ。あんなに強い鶏は初めてだ」
「実はその鶏と戦う事になってさ、倒したら赤いカケラが見つかったんだ。恐らく太古の化石かと思うんだよね。ゴルゴンは地質関係に詳しかったし、太古の魔物達についても教えてくれたじゃん」
エレンはポケットから赤いカケラを取り出してゴルゴンに見せた。
「そんなはずがない、、、それは太古の魔物達のかけらと似ているけどあまりにも真新しすぎる。まるで、今もこの世界に生き続けているような、それぐらい新しい物だぞ。何で鶏の体内にあったんだ?」
さぁ、とエレンは答える。