プロローグ
2018年の4月某日―――――――――――私・外川 美沙は、バスタ新宿内にあるターミナルより、高速バスへと乗り込んでいた。そのバスは、千葉県の木更津羽鳥野・君津方面行きである。
都内の大手通信系企業に勤務し、26歳という年齢を迎えた自分くらいの女性が一人で高速バスに乗る理由は、一見すると近年流行りつつある“一人旅”というものだろう。しかし、今回私が高速バスに乗って移動する目的は、決して一人旅ではなかった。
帰省以外で地元へ帰るのって、社会人になってから初かな…?
窓際の席でそんな事を考えていると、出発時刻の13時40分となった高速バスが発車し始めるのであった。
この高速バスは、途中で3駅ほど停車した後、目的地へと到達する。
目的地である千葉県の館山は、私の実家がある場所だ。今日が平日の金曜日という事もあり、帰省でバスを利用する時と比べると非常に空いていて、空席があちこちに存在する。
この日は会社で午後半休をもらい、朝に駅前のコインロッカーに入れておいた私物入りバック片手にバスへ乗り込んだという状態だ。そのため、仕事でいう“直行直帰”みたいなものだろう。
バスタ新宿を発ってから数十分が経過した頃、私は今回帰省するきっかけとなった実家の母から来たLINEメッセージを読み返すため、自身のスマートフォンを取り出す。
『うちの近所で、幼馴染だった九鬼 直子ちゃん。彼女が、電車の線路内に飛び込んで亡くなったの』
一度見たメッセージを見返した訳だが、見る度に心臓が強く脈打つ。
今回私が時期外れの帰省をするのは、幼馴染のお通夜・告別式に参列するためだった。
高校卒業して以降一度も会ってないから、まだいなくなった実感が湧かないな…
私は車窓から見える景色を見つめながら、軽く溜息をつく。
しかしこの葬儀が終わった後において、今まで経験した事がないような体験をすることになるとは、この時は全く想像すらしていなかったのである。
いかがでしたか。
まだプロローグの段階なのであまり多くは語りませんが、序章では主人公達が神社巡りを開始するまでの経緯等が描かれる事となっています。
この段階で気が付く方もいると思いますが、小説のタイトルに出てくる”彼女”は今回名前の出てきた幼馴染の直子を指します。
いきなりダークな展開から始まりますが、実際の本編はもう少し明るくコミカルなシーンも多くなる予定ですので、最初が結構暗めなのはご了承ください。
それと、本文で出てきた千葉県の木皿津羽鳥野方面へ行くバスについては、実際の時刻表(バスタ新宿の)で実際に走っている運行情報から選んだ時間帯になります。
それでは、ご意見・ご感想があれば、宜しくお願い致します。