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入学式3

そのまま教室に戻り、

頭の中をぐるぐるとさせながら席に座っていると、

鮎川先生が教室に入ってくた。


「入学式お疲れさまでした。休み時間の後にHR(ホームルーム)を行います。」

「それと3人くらいにHRでの配布物を運んでほしいのだけど、誰か手伝ってくれますか?」


「はいっ!」


真ん中の最前列の席にいた女子が元気よく手を挙げた。

その声で、頭の中から教室へと意識が引き戻され、顔を上げた。


幸田(こうだ)さんね、ありがとう。」

「他にはいませんか?」

「・・・」


「じゃあ、悪いけど、こちらから指名しますね。」

犬神(いぬがみ)くんと黒田(くろだ)くんお願いしていいかしら?」

「はい」「・・・」


黒田くんは返事しなかったな。

頷いてはいたけど・・・。

犬神くんは・・・特に変わった印象ないな。


うっ・・・・腹が痛くなってきた。

そういえば、朝は急いでてトイレに行っていない。

入学式が終わって、緊張が解けたか。


そこでちょうどチャイムが鳴った。


いきなり走ると注目されるので、さりげない風を装って教室をでる。


男子が少ないというから、トイレの数が減っているかもしれない、

と不安になりながらトイレに向かう。


「よかった。」


男子トイレに入ると壁側に小便器が並び、反対側に個室という見慣れた配置であった。


個室に入り、鍵を閉める。

ズボンを脱いで便座に座ると一気に安心感に包まれる。

程なくして、隣の個室に人が入った音がした。


便座に座りながら、今まで起きたおかしなことを挙げてみた。


電車の男性専用車だろ、高校の男子の割合が低いことに、男子の出生率が低い、入学式での筋肉の話、

校長が若い、校長のスカートが短すぎる、校長の胸がでかすぎる・・・


校長についてはただの個人の問題かもな。

まあ、考えてもわからないか。


結局、考えることから逃避し始め、

トイレを流して個室から出ると、ちょうど隣の人も出てきた。


「「おうっ!」」


こっちが声をかけると同時にむこうも声をかけてきた。

偶然にも見知った顔を見て少し笑顔になる。


今、ハモった~

と思っていると。


「おう、季一郎、お前何組になった?」


「俺はB組、(まこと)は?」


「こっちはD組だ、クラスの様子はどうだ?」

「同じ中学から来たやつは俺とお前ともう1人だったと思うから、知り合いはいねーと思うが。」

「俺んとこの担任は、男の犬塚(いぬづか)っていう体育担当のいい筋肉したヤツだったよ。」


「いい筋肉って何言ってんだよ、お前。こっちは鮎川っていう英語担当の女教師。」

「アラサーくらいかな、ミニスカ以外は今んとこ特に印象はないな。」

「そういえば、彼氏募集中って黒板に書いてたけど、誰もつっこまなかったわ。」


「自己紹介で彼氏募集中と高校生に向かって書いちゃうのは重症だな。」


いい筋肉?

なんか違和感感じるな。

でも、筋肉か・・・

そうだ、校長の話もあるし、聞いてみるか。


「誠、校長はなんで腕まくりの話なんてしたんだ?あと、なんで男子の数がこんな少ないんだ?」


「は?男子は多いほうだろ?」

「それに、腕まくりは気抜いたり、羽目外しすぎて筋肉見せるなよってことだろう?」

「いきなりどうした季一郎?」


誠が不思議そうな顔でこっちを見つめてくる。


いつも通りの反応だな。

これは嘘をついているように思えない。


「今の日本の男女の人口比ってどのくらいなんだ?」


一歩前にでて誠に問いかけると、


「とりあえず、手、洗おうぜ?」


まだ、個室でたとこだったか。

焦ると周りが見えなくなるかもしれない。

注意しないと。


洗面台に向かい、手を洗い始める。

手をハンカチで拭きながら、話が再開する。


「日本の人口の男女比だって?社会科の問題か?」

「1対3に決まってるだろう?超基礎だろ。ほんとどうした?」


1対3・・・。


「確認するけど、男子が1で女子が3ってことだよな?」


「そうだ。」

「というか、春休みでぼけたか?風でも引いてんのか?日本だけじゃなく世界中そうだろう?」


世界中・・・なにが起きたんだ。

俺は(かつ)がれているのか?

でも、こんな大規模にできるはずはない。


「誠、フルネームと生年月日を言ってくれ。」


「いきなりなんだ?」


「いいから」


杉原誠(すぎはらまこと)、12月9日生まれだよ。年はお前と一緒。」

「お前本当におかしいぞ?」「スマホの暗証番号にはしてねーぞ。」


「じゃあ、もう一つ聞いていいか?」


「おう、なんだよ。」


山田長政(やまだながまさ)ってどんな人?」


「おっ!いいね!歴史問題か!お前がそんなこと聞くなんてめづらしいな。」

「長政は江戸時代初期に活躍した人で、当時、東南アジアにあった日本町の一つ、タイのアユタヤ朝の日本町の頭領だった人だ。当時のタイの最高の官位を与えられ・・・。」


やはり、誠本人としか考えられないな。

昔聞かされた人名を聞いてみたが、

説明もそんな感じだった気がするし。


「その後、王位継承に巻き込まれ・・・・」


相づちを打ち、誠の歴史授業を聞き流しながす。


男女比については基礎認識って言ってたな。

いつそんなこと習ったんだ。

いつから男子が減ったのか。


「いつから・・・」


思わず、口から言葉がでてしまう。


「それは、長政が生まれた日のことか?うーん、正確なことはわからんな~」


「すまん、違う違う。いつから、1対3なんて男女比になったんだ?」


「それは歴史問題か社会科の問題?」

「第二次世界大戦の後に徐々に男子の人口が減り始めたって言われているが。」

「自分で調べたわけじゃないから、教科書通りの説明しかできないけど。」


そう誠が言ったところで、チャイムが鳴る。


「今日は帰ったらしっかり休めよ。」「じゃっ」


誠はそう言ってD組へと向かっていった。

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