入学式2
教室を開けると、ほとんどのクラスメイトがすでに着席していた。
いくらかの視線がこちらに向く。
黒板を見ると座席と出席番号が書いてある。
どうやら男女の区別はない席順のようだ。
窓際の前から3番目の席に歩いてゆき、座る。
座る時に後ろが女子であることをさりげなく確認した。
教室を見回してみると、名簿の通り女子の方が多い。
前と右隣りも女子だ。
まずいな、女の子に話かけるのは得意ではなんだよな。
男子は何人くらいいるんだ?
男子の数を数えると14人か。
14人!?
少なすぎないか?
全員で35人だから、男と女が2対3じゃないか。
確か、受験の時に調べたら、男子の割合は多かったはずなのに・・・
まだ夢の中にいるのかな?
混乱していると、教室の前の扉が開き、先生が入ってきた。
女性の先生で、スーツにミニスカートだ。
「1年B組の皆さん、おはようございます。」
「私がこのクラスの担任の鮎川東子です。このクラスと英語の担当です。」
「よろしくお願いします。」
鮎川先生は教室全体を見た後に簡単な自己紹介をし、黒板に名前を書いた。
なんで、彼氏募集中って名前の横に書いたんだこの人?
「全員そろっているようなので、まず、今日の予定の話をしますね。」
「今日は9時から体育館で入学式を行います。」
「はい、これ配ってね。」
誰もつっこみを入れてくれなかったのに、素知らぬ顔で話しを続ける。
最前列の人にいくつかのプリントを配りながら話し続ける。
「配ったプリントは、入学式の式次第と今学期の行事予定表と入学式の後のHRで配布する教科書のリストの3枚になります。」
「みんなちゃんと貰いましたか?ここまでで何か質問がある人はいますか?」
「大丈夫そうですね。では、時間がないので、廊下に名前順に整列して体育館に向かってもらいます。」
扉に近い人から順に廊下に出て並ぶ。
流れに従って、体育館に向かった。
廊下を歩きながら、なんで男子がこんなに少ないのかと考えるが、答えはでない。
人に聞きたいが、前後を女子なので気安く話しかけることができない。
「新入生の入場です。」
前から、マイクを通した声が聞こてくる。
列が徐々に進んでいくので、緊張しながら前の人の後ろについていく。
体育館に入ると在校生や保護者が拍手で迎えてくれた。
まあ、俺の両親は仕事の都合で来てないんだけど。
用意されていた席にたどり着き、着席の合図で座る。
席にたどり着くまでに他のクラスをみたが、
やはりどこのクラスも女子の割合が多いみたいだ。
「国歌斉唱、皆さまご起立ください。」
周りの人に合わせて立ち、君が代を歌う。
聞こえる限りは、やはり低音は少ないか・・・
「ご着席ください。」
「それでは校長先生お願いします。」
なんだ!?
教員席から、スリットの入った超ミニスカの女性が立ち上がり、壇上に上がっていく。
見えそうで見えない、もどかしい。
上は・・・
でっでかい!たわわ過ぎるだろ!
顔は、結構若く見える。いくつだ?
校長なんだからそこまで若くと思うけど。
眼がくぎ付けとなっていると、
「新入生の皆さん、保護者の皆さん、在校生の皆さん、おはようございます。校長の樋口麗子です。」
「入学許可の宣言。」
司会の生徒のマイクで進行する。
「2019年度新入生、男子70人、女子141人、合計211人の入学を許可します。」
と高らかに樋口校長は宣言した。
「校長先生からの式辞です。」
「うららかな春の風と咲き誇る桜、新緑の木々・・・・。」
なんの変哲もない式辞が始まる。
ボーッと・・・、いや、
血走った目で、壇上をたわわを見つめる。
演台がじゃまだ。下が見えない。
「高校生活を送るにあたり、共に助け合い、競い合い・・・・・。」
「皆さまご存知の通り、男子の出生率が低い中、この貞変高校は元々男子校だったこともあり、男子の割合が多くなっています。」
ゴクリッ・・・
どこからか、息をのむ音が聞こえてきた。
その音ではっと我に返った。
今、男子の出生率が低いと言わなかったか?
曖昧にしかあたまに入ってこなかったので、耳に意識を移す。
「そのため、男子は普段と比べて気が緩みやすいと思うのですが、校則をよく守り、日々を送るようこころ掛けてください。」
「特に夏場は、腕まくりなどをしてしまうと思うですが、わが校の校則では、肘から上の筋肉は見せてはいけません。つまり、前腕筋群は見せていいのですが、上腕二頭筋はダメということですね。」
眼に集中していた血が完全に頭に戻り冷静になる。
なんだ?
いきなり筋肉の話をしだしたぞ?
男子が生まれにくい?
それに筋肉がどうして関係があるんだ?
壇上で入学式が進行しているようだが、
筋肉、男子が少ない、元男子校、筋肉、・・・
何も頭に入って来ない。
気が付いたら、校歌斉唱となり、周りが立つ。
慌てて自分も立ち、うろ覚えの校歌を歌う。
なんとか無事に校歌を歌い終えたぞ。
すぐに、司会者が、閉会の辞言って、教室へと戻ることとなった。
しかし、歌い終えたら、また、
筋肉、男子が少ない、元男子校、筋肉、・・・
と単語が頭をめぐり、
混乱し過ぎて、焦りが募ってきた。
ちょくちょく修正を入れたりしてしまっているので、微妙な内容が変わったりしています。