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41話 立ち上がれ

 瞼を閉じれば蘇る。


 目を奪われるような美しい光景が、黄昏の世界で交わした言葉が。


 なぜ今あの時のことを思い出しているのか。


 そんなこと考えるまでもない。


 今この瞬間があの時と重なるからだ。


 絶望し、膝をつき、また諦めそうになっている。


 あの時よりは強くなったつもりだった。

 あの時よりは賢くなったつもりだった。


 とんでもない勘違いである。


 俺は未だ弱く、愚かで、どうしようもない王ではないか。


 本当に救えない。


 ああ、でもだからどうしたというのだ。


 そんなことは最初からわかっていたことだろう。


 それでも俺は戦わなくてはならないのだ。


 もともと諦めるなんていう選択肢は無い。


 それは使徒に許されていない行為だ。


 もしここで引けば、永遠の苦しみに苛まれる。


 ならば進むしかない。

 たとえ立ち止まることがあったとしても、俺たちはまた歩き始めなければならないのだから。


 さあ、立ち上がれ、もう一度。


「・・・」


 ゆっくりと目を開く。


 辺りは暗闇に支配されていた。


 だがうっすらと光は届いていて、俺の進むべき方向を示している。


 そこに向かおうと、足に力を入れた。


 しかし思ったように体が動かない。


 それもそのはず、今俺は雪崩に飲み込まれ、生き埋めになっているのだ。

 普段通りに歩こうとしても動ける道理はない。


 だから今度は全身に力を入れた。


 体を蝕む冷気に逆らいながら、必死に雪をかきわける。


 少しずつ少しずつ、俺は前に向かって進んでいった。


 やがて光は強くなり、体にかかる負担も軽くなっていく。


 そしてついに、俺の手が空気に触れた。


「・・・戻ったぞ」


 ふと零れた言葉。


 それは宣戦布告。


 バスピー、ラゴーン、そして無力な己。


 これから俺が挑む者たちに向けて放つ、精一杯の強がり。


 さあ行こう。


 これまで通り、ただ当然に、ただ必然に。


 絶望はいつだって、覆すためにあるのだから。



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とろりんちょ @tororincho_mono

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