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28話 脱出

 必死に走った甲斐もあり、僕たちはどうにか要塞外縁部まで辿り着いていた。


 と言っても行きとは違ってここは山の上ではなく、地下深くにある薄暗い通路の中なのだが。


 要塞で見つけた地図によれば、獄吏たちは今いる本拠地に加え、世界各地に拠点を持っていた。

 まあそれも当然と言えば当然で、この広い地獄を管理するのに拠点が一か所なんて言うことはあり得ない。


 この地下通路はそんな獄吏たちの拠点へと繋がっている。

 そこにさえ辿り着ければ出口はもうすぐだ。


 しかしその前にもう一つ関門がある。


 つまるところ辿り着く場所が敵の拠点である以上、この先には当然獄吏たちが待ち構えているということになる。


 僕らは彼らの攻撃を掻い潜って地上に出なければならない。


「くそっ、このままだと挟み撃ちだぞ」

「こればっかりはしょうがない。せいぜい捕まらないように祈るんだね」


 一本道を振り返らず走り続ける。


 願わくば獄吏たちがいないことを祈るが、どう安く見積もったって鉢合わせることは間違いないだろう。


 この狭い通路であの縄の一斉射撃を食らったらさすがに捌ききれない。


 どうしたものかと思案を巡らしていると、いよいよ通路の両脇に扉が現れ始めた。

 それは僕たちが獄吏の拠点領域に踏み込んだことを意味している。


 ここからはいつ襲撃を受けてもおかしくない。


「二人とも、警戒して」


 緊張感が支配する中で、それでも僕たちは進み続けた。


 たとえいつ襲われることになるとしても、止まるという選択肢だけは許されていない。


 もう僕たちは敵の包囲網を正面から打ち破るしかないのだ。


 トトもバスピーも、そして当然僕もそのことをよく理解している。


 だから覚悟を決めて、僕たちは突き進んだ。


「・・・来ないな」


 しかしその覚悟とは裏腹に、いつまでたっても事態が動くことはなかった。


「誰もいない?」


 もう出口はすぐそこというところまで来ても、獄吏たちが現れない。


「どうして・・・」

「今は集落に出向いているんじゃないか?」

「いや、それにしたって無人というのはおかしい。それに今は緊急事態だ。要塞から連絡が来てれば、この拠点のどこかで待ち伏せているはずなんだ」

「連絡が来てない可能性はないんですか?」

「ありえない。相手はエンマだぞ。その辺の間抜けとはわけが違う」

「じゃあどうして・・・」


 予想とは違う展開に困惑を隠せないが、残念なことに僕らにのんびりしている時間は与えられていない。

 後ろから追ってくる獄吏たちの足音は相変わらず聞こえているのだ。


「地上に出よう。話はそれからだ」


 そう言って僕たちは階段を上る。


 上りきってみると、地上につながる扉であるところの蓋は閉じていた。


 考える時間も惜しいと感じて、僕はすかさずそれにドロップキックをかます。


 しかし要塞の緊急用の隔壁とは違って地上と地下を分かつこの蓋は相当頑丈なようで、僕が蹴っても亀裂が入るだけで、一発では壊れなかった。


 そして壁に跳ね返された僕は無力にもそのまま背中から床に落下する。


「トト、手伝って」

「わかった、バスピーも手伝え」

「はい!」


 僕はもう一度蹴りを叩き込む。


 扉の亀裂が広がる。

 しかしまだ開かない。


「あそこにいるぞ!逃がすな!」


 手間取っている間にとうとう獄吏に追いつかれてしまった。


「急げ!」

「わかってる!」


 もう一度起き上がって助走をつける。

 次の一撃で突破できなかったら、おそらく間に合わない。


 焦る気持ちに身を任せ、僕は扉に向って思いっきりドロップキックをかました。


「ふんっ!」


 力を制限されている状態での最大限の一撃。


 もうこれ以上はないという攻撃は、ようやく固く閉ざさていた扉をぶち破った。


 そうして辿り着いた地上。


 あとは何も考えずに走って逃げればいい、そのはずだった。


 しかし外に出たところで僕らはその足を止めることになる。


 それは予期せぬ事態に一瞬思考を止められたからだ。


「なんだこれ・・・」


 最初に飛び込んできたのは喧騒。


 地下の静けさが嘘であったかのように、地上は怒号に満ちていた。


 次に認識したのは戦いの光景。


 僕たちの目の前で獄吏と囚人が戦っていたのだ。


 なぜそうなっているのかはわからない。

 だけど今確実に僕たちがまずい状況にいることだけはわかった。


 そしてそれを証明するようにその場にいた一部の者たちはこちらの存在に気付く。

 あれだけ大きな音を立てて獄吏の拠点から出てきたのだから当然と言えば当然のことだ。


 獄吏たちはこう思ったことだろう。

 自分たちの拠点を破壊して不審人物が出てきた。


 囚人たちはこう思ったことだろう。

 敵の拠点から不審人物が出てきた。


 間違いなく僕たちは、どちらの陣営にとっても等しく味方ではなかった。


「止まるな、走れ!」


 そう判断した僕は叫ぶ。


 その掛け声でトトとバスピーも我に返り、足を動かし始めた。


 呆けていた時間はほとんど一瞬だったが、その一瞬のうちにも戦況は動いている。


 僕たちを追いかけてきていた獄吏たちも地上に現れ、そして僕たちと同じように目の前の光景に驚いている。


 そして地上で戦っていた者たちは異分子を排除しようと僕たちに殺到してきている。


 ようやく外に出られたというのにそこに安全はない。


 その事実にうんざりしながらも、僕たちは再び走り始めるのだった。



感想・評価などお待ちしております。

あとよかったらブックマークもよろしくお願いします。


とろりんちょ @tororincho_mono

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