22話 次の目的地
「結論から言って、次に俺たちが目指すべき場所が決まったと言えるだろう」
トトは開口一番そう言い放った。
とりあえず物陰に隠れて作戦会議を始めることにした僕らは床に資料を広げ、それを囲むようにして座り込んでいる。
トトはその資料のうちの一つを指し示しながら解説をし始めた。
「まずこの要塞内には牢屋の役割を持つような施設は確認できなかった。それはこの地図を調べればわかることだ」
彼が引き合いに出したのはこの要塞の地図だ。
地図と言ってもそれは一冊の本になっており、要塞全体を、建物ごと、階層ごとに描き分けていて、非常に精巧な造りをしている。
「へえー」
僕は一頁ずつその内容を目に焼き付けながら、内容を確認していった。
「ルイ、時間が惜しい。内容の確認は後にしてくれ。話を先に進めたい」
「ああ、僕のことは気にしないで話を続けていいよ。読みながらでも話は聞けるしね」
「そうか。だが後でもう一度説明してほしいなんて言わないでくれよ」
「大丈夫さ」
僕の生返事に対して少し不満気な様子を見せたトトだったが、僕が地図から意識を逸らす気がないことを察すると、そのまま話を再開してくれた。
「牢屋が無いとなると、俺の部下たちがどこに捕まっているのかわからない。他にもそれらしい場所はなかったしな。だがもう手がかりが無いと思ったところで、俺は一つ気になる場所を発見した」
「気になる場所?」
「それがここだ」
僕が適当に返事していると、トトはもう一つの地図を取り出してそれをこちらに見せてくる。
一瞬だけ今見ている要塞の地図からトトへと視線を移すと、その手には地獄の世界地図が握られていた。
今度のそれは地図らしい地図で、一枚の紙の上ですべての情報が完結している。
地獄の焦土を表すように赤茶色で支配されているその地図は、トトが指し示している部分だけが白く塗りつぶされていた。
それが意味するところが分からず首を傾げてみると、トトは僕の注意を引けたことに満足したかのように最後に残ったもう一つの冊子を手に掲げる。
「この場所についての資料がこれだ。俺はすでに中身を全部読んである。その上で簡単に説明をするならば・・・」
トトは一つ呼吸を溜める。
いい加減そのもったいぶって話す癖をやめてほしい。
いちいち面倒くさいのだ。
しかしこちらが若干イラっとしていることに気づかないトトは、これでもかというほど得意気な顔をしながら、続く言葉を発した。
「ここはこの地獄において唯一氷に支配された地、その名も“大寒獄”」
「大寒獄?」
彼の言葉を復唱した僕は、興味津々とばかりにわざとらしく首を傾げた。
もうここまで来たら彼に気持ちよく話をさせた方が色々と捗るのだ。
果たしてこちらの思惑通り、トトはペラペラと話し続ける。
「その名の通りここは牢獄だ。それも対使徒専用のな。まず間違いなく俺の部下はここに捕まっている」
「それもその資料に書いてあったのかい?」
「ああ」
「そうなんだ。一応それも見せてもらっていいかな」
「ああ、それはかまわない。だがあまりそこに時間をかけてもらっても困る」
「大丈夫だよ。もうこっちの地図は見終わったから、そんなに時間はかからないさ」
そう言うと僕は最初に読んでいた資料を返して、代わりに今トトが手に持っている資料をひったくって読み始めた。
そしてまたそれに目を通し始める。
そんな僕を無視してトトは話を結論へと導いていった。
「さて、すぐにでも俺の部下を助けに行きたいところだが、事はそう単純じゃない。なにせ目的地は牢獄、囚人の救出には鍵が必要だ」
僕が返した要塞の地図をもう一度広げたトトは、ある一点を指し、最後の仕上げとばかりに声を張った。
「ゆえに俺たちが次に攻略すべきはここ、宝物庫だ。おそらく牢獄の鍵はここにある」
「おおー」
サイラとバスピーが歓声を上げる。
それに応えるようにトトが得意気に笑う。
そんな茶番を冷めた目で見つめていた僕はこう思った。
さて、僕はこれからどう動くべきなのだろう。
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