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65話 エピローグ

 地獄にいつも通りの日常が戻ってからしばらく。


 それぞれの戦いを終え、再び集合した僕たちは今現在エンマが用意した来賓室で休憩をとっている。


 ここに来てからトトにこれまでの経緯を説明しなくてはならず、だいぶ長い時間を使ってしまった。

 僕としては同じ説明を何度もするのが面倒くさかったので華麗にスルーしたかったのだが、キレ気味に聞いてくるトトを無視することもできず、渋々一から説明してあげたのだ。


 その間サイラは暇だ暇だとうるさいく騒ぐし、エンマもエンマでぐちぐちと嫌味を吐いてくる始末だ。


 なぜここにきて皆僕に対して非難轟轟なのだろうか。


 今回の事件で最も活躍したと言っても過言ではない僕に対して、感謝こそすれ文句を言う資格のあるやつなどこの世界にはいないだろうに。


 しかしそれを言うと再び話がこじれるので僕は黙ってやり過ごした。


 僕偉い、僕大人。


 そんなこんなでこの場が収まったのがついさきほどのこと。


 これ以上の蛇足は御免だったので、僕は早々に撤退の決断を下した。


「さて、無事事件も解決したことだし、僕らもそろそろ天界へ帰ろうか」

「そうだな、もうここでやることもない」

「アタシももう満足だ。楽しい旅行だったな」


 意外に聞き分けの良い二人に後押しされ、僕らはさっさと身支度を整える。


 お見送りはエンマ自らがしてくれるようで、僕たちが地獄に入るのに使った扉まで案内してくれた。


 そうしていよいよこの暑苦しい地獄ともお別れというときに、彼は締めの言葉を口にする。


「一応感謝は述べておこう。それぞれに思惑があったとはいえ、今回は無事脅威を退けることができた。願わくば、今後君たちがこの世界に厄介事を持ち込まないことを祈っている。特にルイ、君は気を付けるように」

「待て、ここで名指しされるのは納得がいかない。今回僕は巻き込まれた側だ。僕を悪しざまに言うのはやめてもらおう」

「でもルイって厄介事好きだよね」

「サイラ、少なくとも君という厄介事を歓迎した覚えはない」

「またまたー、なんだかんだ言ってアタシのこと好きだろ?」

「ははっ、君の頭の悪さは相変わらずのようだ」


 そんなことを言い合いながら僕らは牽制し合う。


 結局最後まで分かり合えないのが王というもの。


 だが別にそれでいいのだ。

 無理に合わせる必要などないのだから。


「さあ、これでさよならだ。もう二度と会わないことを祈っている」

「そうだね。基本的に王同士は関わらない方がいい」

「でもアタシとルイは近々天翼会議があるからまた会うことになるな」

「僕は会議をサボる予定だから、サイラとは当分、というか二度と会うことはないと思う」

「大丈夫、引きずり出すから安心して」

「・・・」


 また不吉なことを言うサイラは放っておこう。

 構っていたらキリがない。


「じゃあそういうことだから、さよなら、エンマ」

「失礼する」

「バイバーイ」

「達者でな」


 それぞれが別れの言葉を告げ、扉をくぐっていく。


 あとに残されたのは、扉の閉まる音と、錠が落ちる音だけだった。


―――――――


「戻ってきたね」

「戻ってきたな」

「涼しいー」


 扉を抜ければ見慣れた風景が広がる。


 相変わらず天界は自然豊かで快適な環境を僕らに提供してくれていた。


 ここからはもうそれぞれ自分たちの拠点へと帰るだけなので、流れとしてはこの場で解散するのが自然だろう。


 別れ際、僕は一つだけトトに言っておきたいことがあったので、最後に口を開いた。


「トト、今回の件で思ったけど、やっぱり君はまだまだ未熟だ。簡単に騙されるし、諦めも早い。このままだと僕は君の派閥が心配だよ」

「うぅ・・・」


 突然僕が苦言を呈したせいで、トトは何も言い返せずに唸ることしかできなかった。


 そんな彼に対し、僕は先輩として言うべきことを言っておかなければならない。


 なんだかんだ言いつつ、僕は彼のことが結構気に入っているのだ。

 多少の手間ぐらいはかけてあげるのもやぶさかではない。


「もっと学べ、もっと考えろ、そしてなにより自分を知れ。いざというとき迷わないように」

「・・・肝に銘じるよ」

「ああ、これからも頑張りたまえ」

「そうだな。まあ今回は世話になった。サイラもありがとう」

「気にするな、トト。ただ恩返しがしたいなら、もっと強くなって私に喧嘩を売るといい」

「それは遠慮しておく」


 心底嫌そうな顔をしてサイラの提案を断ったトトは、そのまま僕たちに背中を向ける。


「それじゃあ俺は帰るとするよ。次合う時は、もう少しマシな王になっておく」


 それだけ言い残して、トトは僕たちの元から去っていった。


 きっと今回のことで彼はまた一つ成長するだろう。

 いずれは僕の助けなんて必要なくなるくらいに。


 そうしてまた一人、僕の元から立派に巣立っていくのだ。


 僕はそのことが嬉しい。

 だってそれは誰かが前に進んでいる証拠なのだから。


「ふっ、トトの将来が楽しみだね」


 そんな風に笑った僕を隣で見ていたサイラは面白そうに話しかけてくる。


「やっぱりアタシはルイのそういうところも好きだな」

「なんのことだか」


 僕がとぼけると、サイラがそれ以上追及してくることはなかった。


「それじゃあ僕も帰るよ。じゃあね、サイラ」

「おう、じゃあな、ルイ。また遊ぼう」

「それは遠慮しておく」


 軽く言葉を交わして、僕も帰路につこうとする。


「なあ、ルイ」


 だが数歩歩いたところで、後ろから声がかかった。


 これまでとは異なるその声の調子に僕は思わず振り返る。


 いったいどうしたというのか。

 少し疑問を抱きつつ続く言葉を待っていると、彼女は真面目な顔をしながら僕に向って言葉を投げかけてきた。


「今回私はお前に協力した。その方が面白そうだったし、お前が普段どうやって活動しているかを見れるいい機会だと思ったからだ」


 彼女にしては珍しい、重苦しい口調。

 僕はそれに何かを感じて黙って耳を傾ける。


 果たして続いた言葉は、少しだけ意外なものだった。


「でもな、ルイ。やっぱりアタシは納得いかなかったよ。お前を裏切るときに言ったアタシの言葉、あれは必ずしもすべてが演技だったというわけじゃない。アタシはお前のやり方が気に食わない」

「・・・」


 その時感じたのは明確な怒り、僕に対して向けられた純粋な憤怒だった。


「アタシが憧れたお前は、もっとわかりやすい奴だった。使徒の象徴のような存在だったお前は、いったいどこへ行ってしまったんだよ」


 でもどうしてだろう。

 僕には彼女が今にも泣き出しそうに見える。


 それはまるで迷子が母親を探すかのような、そんな不安定さを内包していた。


 だけどそう感じてもなお、僕は彼女を慰める回答を持ち合わせてはいない。


「なあ、ルイ。もしお前がこのままずっと、その在り方を変えないというのなら・・・」


 そこで彼女は少しだけ言葉を切ると、異様にギラギラと輝く瞳で僕を見据えた。


「アタシはお前を全力で殺しに行くぞ」


 最後にそれだけ告げて、彼女は立ち去った。


 特に言葉をかけることもなく、僕は彼女を見送る。

 彼女が最後に見せた表情を思い出しながら。


「殺しに来るというのならそうすればいいさ。でもいくら脅したところで何も変わらない」


 僕は僕自身のやり方で戦う。

 たとえそれを他者に否定されようとも、変えるつもりは毛頭ない。


 もしそれでぶつかることがあるというのなら、相手を捻じ曲げてでも僕は自分を押し通す。


 臆病な死神は、もういないのだ。


「ふぅ」


 一つため息を吐く。


 長かった地獄巡りもこれで終わり。

 また明日からはそれぞれの派閥に戻って僕らは生きていく。

 

 今度出会うときはどんな風にその運命が絡み合うのか。


 それは神のみぞ知ることである。


あとがき


 どうも皆さん、こんにちは。

“とろりんちょ”と申します。


「神様は傍観者、だから僕が世界を救う」 第二章 地獄巡り


 これにて完結でございます。


 ここまでお付き合いいただき、誠にありがとうございました。


 さて、読者の皆様はもうお気づきかもしれませんがこのシリーズ、こんな感じで物語が進んでいきます。


 章ごとに話が全然違います。

 登場人物も変わります。


 唯一共通しているのは、主人公のルイだけです。


 なぜ処女作でこんな訳わからん作品を作ろうと思ったのか今となってはもう覚えていないのですが、とりあえずこんな感じで続けていこうかと思っております。


 続けていこうと言うからにはこの後三章の物語が当然あるわけですが、残念ながらすぐに投稿はできません。


 まだプロット段階です。

 ごめんなさい(土下座)。


 まあ気長にお待ちいただけたらなと思います。

 よかったら一章、二章を読み返すのもいいかもしれませんね(適当)。


 そんなわけでこれからも頑張っていきますが、評価、感想、ブックマーク、ツイッターのフォロー等、読者の皆様から応援いただけると大変励みになります。

 ぜひよろしくお願いいたします。


 最後になりましたが、ここまで読んでいただき本当にありがとうございました。


 今後ともよろしくお願いいたします。


 それではみなさん、また会う日までごきげんよう!


 @tororincho_mono とろりんちょ

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