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65話

夜。遊牧テントの中。

机を挟んで、二人が向き合っている。

「まず私の能力から。肉体に触れ続けることで相手の能力に限り看過することができます。相手の同意があれば一瞬で、敵対関係が深いほど要求接触時間は増えますわ。本業は増強薬屋。一時的な強化薬の販売と、希望があれば本人の能力を診て適正な薬を処方しています」

「記憶のないオレの能力を明確にできるわけだ」

「その通り。信用商売ですので他言は致しませんし、無理に診断もしません」

「いや、お願いしよう。どうせほかにアテもない」

「そうですか。では始めましょう、手を前に」

差し出した利き手をフードの女が握る。

「このテントは防魔の三重壁です。私が信用する魔力付与屋から仕入れた妨害魔法を織り込んだ布で作らせた特注品なので盗聴や盗視に一定の効果が見込めます。あなたも私のような分析系の能力者で、私の深層まで読んでいたら、ここを出たあとに吹聴して回ることを止められはしませんが」

「そういう能力者が来たらどうするんだ?」

「円周壁の外に店を構えている理由は主に三つ。一つは町の喧騒から離れたいのと、盗聴盗視の外にいたいこと。そしてそういう客の皮を被った敵をぶっ殺したとき、崖から死体を落とせるからですわ」

「冗談だよな」

「今のところは。さて。十分診察できましたわ。現在のあなたの能力はこんなところですわね」


能力:コピー

性能50

複製量5

強度30

同時使用数2

特殊-


羊皮紙に羽ペンで書き記したオレの能力だった。

「この性能っていうのは具体的になんなんだ」

「どれぐらい同じ性能で複製できるか、といったところでしょうか。例えば百回打って刃こぼれする刀をコピーしたとして、能力で模した方は半分でそうなるということです」

「複製量と同時使用数の違いは」

「剣を五本までコピーでき、かつ盾も五つコピーできるという説明で理解できますか?」

「ああ、わかりやすい。同時使用数を伸ばした方がお得そうだってことか」

「確かに最大五×同時使用数が百で五百のあらゆる装備をコピーするのと、最大二五〇で同時使用数が二のままだと同じ計算ですがこの手の分類は能力向上にかかるコストが変わります」

「簡潔に頼む」

「剣二五〇と盾二五〇の増産が三万円で済むとしたら、剣と盾と鎧と兜と手甲と杖と……の増産は十五万かかるようなイメージです。用意する手間と同じく、能力にも大変な方、威力の強い方が向上にかかる経験値や魔力量といったものは増える傾向にあります」

「ほーん」

「診断はこんなところでしょうか。私の見立てではあなたの能力、なかなか商売向きですわよ。とりあえず増強薬の量産で診察料と衣服代、それに家賃をまかなってもらおうかしら」

「右も左もわからんからな。仕方ない。しばらくお世話になるとしよう」



「さ、それではひたすら私の作った増強薬をコピーしてちょうだい。第二テントの裏で人に見られないようにね」

「なぜ」

「応用が効くから。便宜的に私が作った能力者の行動タイプは三種類」

薬棚からギトギトした原色の薬瓶を取り出して並べる。

「まず開示。文字通り能力を開示するタイプ。性質が二つ名になりやすく、パーティが組みやすい。対人戦では攻略法が組まれやすく策をも突破できる能力値の高さが威力に直結する者に多いですわ。炎術者とか。良くいえば一点突破の力自慢、悪くいえば応用の効かない馬鹿といったところですわね」

「次に秘匿。能力を隠すタイプ。公になると対策次第では無力になり、必然的に単身あるいは信頼する数名での行動形式をとります。例えばあなたが色々な術を繰り出したら相手は混乱したり不気味さを感じるでしょう。でもコピーの能力者だと知っていたら“誰かの技を模倣しただけか”という動揺が誘えない。開示は避けるべきですね」

「最後に欺罔」

「え?」

「き・も・う。フェイク。能力を偽るタイプ。一部の能力を全てとしたり、副次効果を誇示するような……これは偽っているが故に答え合わせも例示も難しいのですが、例えばわたしだったらコピーの能力者とは名乗りません。武器を繰り出せる能力とか受けた魔法を返せる能力者と名乗って次から次へと武器を出したり、相手の技を模したりしますね。そうして相手が油断しているところに、意表を突いて大岩を出現させたりしたら楽に勝てそうじゃないですか」

「こずるい考え方だけど嫌いじゃない」

「力の強い者が勝つならコイントスでもジャンケンでも変わりません。知恵で勝機を見出すところに、人間の面白さがあるのです」

「じゃあオレも最後のやつでいこうかな。発掘されてる物質で一番強いものがほしい。高くても構わない。強度があって熱にも強いやつがいい」

「魔界チタンですわね」

「じゃあそれを買いに行こう。早速だけど借金がしたい。魔界チタンを一キロ買えるだけ」

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