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64話

2009年3月5日。張り込み。カーステレオ。

『本日は週刊超常編集長、小清水純一さんに来ていただきました。よろしくおねがいします』

『よろしくおねがいします』

『本日はアンゴルモアの欠片の行方と題してお送りします。小清水さん、アンゴルモアの欠片って何なんでしょう』

『はい、1990年代にノストラダムスの大予言が流行ったのは皆さん覚えておいでだと思いますが』

『ありましたねー』

『その中に"1999年、恐怖の大王が降ってくる"というものがあるんですね』

『はい』

『もちろん実際にそんな大王が降臨するようなことはなかったわけですが、ちょっと奇妙な現象が世界各地で観測されました』

『ほう』

『結果だけ言ってしまうと隕石の落下痕ですね。ただ不思議なことに隕石が落ちたという報告も証言もない。わずかに見つかった落下物がノストラダムスブームと関連付けてアンゴルモアの欠片、と呼ばれています』

『実際には落ちなかったんですか?』

『そうなんですよ。普通地球に入ってくると空気との摩擦で燃え尽きますよね。地表に届くくらいの大きさとなると絶対に見つかるはずなんです。それがない』

『NASAが隠してるんじゃないですか?』

『NASAもJAXAもそのような落下物は確認していないと公言しています。仮にそういった機関の隠蔽があったとしても、世界規模で見れば個人が撮った動画や音がしたから見に行ったら落ちてた、というようなエピソードもないんです。1999年に、気がついたらあった落下痕』

『気づいてないだけだと思いますけどね私は』

『それにしても当の中身といいますか、落ちてきた物が見当たらないのも含めて謎がいい味出してると思いませんか』

『小清水さんはそれでご飯を食べてるわけですからね』

『いいじゃないですか夢があって』

『それがなぜ欠片と呼ばれているわけでしょうか』

『落下痕は大小併せて150以上あったとされているんですが、そのうち見つかった23の落下物はどれも未知の物質といいますか、分析すると技術革新に一役買うものばかりだったそうなんです』

『なるほど?』

『例えばアメリカのカンザス州に落ちたものから放射線測定より精度の高い計器の開発が進んでいるですとか、日本の栃木県那須塩原市に落下したものを解析して人間の脳を転写する技術が開発されているとかですね、そういった人類の発展に貢献する夢の物質と言っても過言ではないのが"アンゴルモアの欠片"なんですね』

『はぁ~。人間の脳を。どうっいった原理なんでしょうかね』

『それは門外漢なのでちょっとわかりかねますが。IRを見ますと事故や病気で失った記憶や脳を復元し、人類の健康と幸福に寄与するなんて趣旨のことが書いてありますね。マウスでの実験は成功しているみたいですが』

『ネズミと人じゃあねえ』

『まあどこからどんな技術が生まれるかわからないのが開発の第一線ですからね。脳の転写を追求していくうちに大容量ストレージが安価で大量に作れるようになったりするかもしれませんし』

『そうですか』

『最近"アンゴルモアの欠片"にはそういう側面もあるぞ、というのがわかってきましてですね、10年経って出てきた、という研究グループや大学なんかもあるくらいです』

『1999年の出来事でしょう?そんな今更出てくるもんですか?』

『まあ事の起こりがあんなですからね。多分売名や詐欺まがいが本当のところなんでしょうけど10年経って見つかる本物があるかも、と思わせる魅力が"アンゴルモアの欠片"にはあると思いますね』

『今日のプレゼンターは週刊超常編集長、小清水純一さんでした。小清水さんどうもありがとうございました』

『ありがとうございました』


「くだらん」

「えー?面白いじゃないですか。今張ってるイタニ技研だってラジオで言ってた那須塩原のアンゴルモアの欠片で右肩上がりなんですよ」

「オカルトだ。迷信だ。宝クジだ」

「わからないことも許容したほうが人生楽しいと思いますけど」

「甘ちゃんの戯れ言だね。刑事なんてのは黒か白なんだよ。境界線でフラついてる奴は死ぬぞ。迷うな。やるのか、やらねぇのか、二つに一つだ」

「先輩の刑事訓には従いますけど……。昔は生肉から虫が湧くと思われてたそうですよ。それを密閉した肉と、そうでない肉に分けて虫が卵を産み付けているんだ、って発見したんだそうです」

「サランラップは偉大だよな。レンジでチンしても溶けねえ」

「今見えないものも何かの法則に則ってるかもって話ですよ」

「聞かねえな。犬にでも食わせろ」

「そういえばバター犬ってなんでバター犬なんでしょうね。犬ってバター好きなんですっけ」

「知らねえよ」

「でも美咲先輩」

「何だ」

「暇でしょ」

「……うん」


『それでは明日の天気予報です。東京の最高気温は18度、最低気温は12度で一日を通してほぼ……』

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