逃げたい、辞めたい、帰りたい 9
嫌いだな。この人。
たった少し話しただけでその人の事を何でも分かった気になるタイプだ。
もう殺しちゃおうかな、鬱陶しいし。
……あっ、だめだ。翡翠はまだこの世界に必要だった。
そう、僕にとって大切なのはこの世界に必要か必要でないかだけ。
例え、どれだけ嫌いな奴でもこの世界に必要ならば殺すことは許されない。
だからって誰かを殺すことが許されるとも思ってはいない。
それじゃまるで殺人鬼だ。そういう事が言いたいんじゃない。
だがもし逆に、この世界で必要ではないと判断したのならば、それがどれだけ好きな人でも殺す。
辛いのがそこだ。
理由は何であれ、人を殺したら殺人鬼になってしまうから。
優しい殺人鬼もいるだろう。
寂しい殺人鬼もいるだろう。
ほんとに悪かったのは殺された奴だったのかもしれない。
でも、それでも、
殺人鬼にはそれを分かってもらう権利はな
い。
なんて……僕が話すのもおかしいな。
僕もただの殺人鬼なんだから。
「わんちゃん?どうしたんだい?ぼーっとして。」
「何でもありません。」
「あっそうだ君に見せたいものがあるんだ。ついて来て。」
「はい……。」
言われるがままについていくと、そこは書斎だった。
翡翠はガタガタと引き出しを開けると中から手紙を出し僕に渡した。
「これを見てご覧。」
!?!?!?!?
!?!?!?!?
「……なっ、んですか、これ……!」