逃げたい、辞めたい、帰りたい 7
「協力と言ったって何もしなくていい。ただ普通に生活していればそれで充分。
あの少女、"ルル"と言うんだが、私はあの子を殺す為にこの実験を始めた。ルルには感情がない。
姿、形こそ可愛い少女だが中身は冷たいロボットの様なものだ。
それもそのはず。ルルは誰か上の人間に支配されてしまっているんだ。
だが、私はまだその上の人間が誰なのか分からないんだよ。その人間を知る為にもまずはルルを殺さないとね。
それに先に殺しとかないと私も殺されかれないから。」
「待ってください。ルルには感情がないんですよね。ロボットの様なものだってことは。それなのに何故人間の心理を学ぼうとしているのですか?関係が無いじゃないですか。なんの役にも立たない。」
「それは違うよ。ルルはロボットのように見えるが確かに人間なんだ。誰かに支配されてしまっているだけ。
心も、感情も、魂も、どうやってそんな事をしているのか私には分からない。
だから人を支配する方法。それさえ分かればその支配を解く方法も分かるはずだ。そしたらルルは死んだも同然。私は別にルル自体を殺そうとしている訳では無い。支配された今のルルを殺すんだよ。」
「……いや、思い切りルルの命を奪おうととしてたじゃないですか……貴方。」
「ハハハッあれはルルなら必ず避けると知った上でだよ。あの日、実は僕の方がルルに追われていたんだ。君は知らないだろうけどね。」
「……そうですか、でもルルがそこまで強いならいつかほんとに殺されるんじゃないですか?早くこっちが殺しとかないと。」
「うん。勿論、本気で死ぬと思ったら私もルルを殺すつもりでいる。自分の命の方がよっぽど大切だからね。君だってそうだろ。ルルに銃を向けた時、君はルルを助けはしたが自分が怪我しない方法を選んだじゃないか。」
「まあ、そうですね。僕もまだ死にたくないですから。」
「ルルを殺すのが早いか、ルルの支配を解くのが早いか、さあどっちになるんだろうね。その鍵を握るのは君だよ、一緒に頑張ろう。」
……最悪な鍵を握らされたもんだ。どこでどう間違えたらこうなるのだろうか。もっと別の世界に生きたかった。
通行人の役とか……。はあ、仕方がない。流れに任せるしか生きる道は無いのだ。
「……分かりました。協力します。」