表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
並行逃避  作者: 最上 雪
3/21

逃げたい、辞めたい、帰りたい 3


外に出ると、まだ11月初めだと言うのに雪が舞っていた。

病院の前で手に息を吹きかけ凍えている少女を発見した僕は、少女に傘を差し出し、雪に濡れながら家へと帰る……

つもりだった。のだが。


思い通りにはならないのが人生。

この後、僕は散々な目に合うのだ。

良いことをしたって報われるとは限らない。

これが主人公の基本とも言える。

少女に傘を差し出してから2、3歩進んだ所で滑って転んだ。

なんとも恥ずかしい。ましてやあれだけカッコつけて傘を差し出した後なだけあってより一層恥ずかしい。

これには少女も驚き、慌てて駆け寄ってきた。

「大丈夫ですか?」

なんて…こんな質問…大丈夫です。以外に答える言葉ないじゃないか。と思いつつ、何事もなかったかのように立ち上がったのち、サッと雪を払い、思った通り、

「大丈夫です。」とだけ告げ再び前へと歩き出した。


「待って、傘を返します。」

少女は僕の腕を引っ張りながら、傘を返した。

自分よりも、目の前でこけた明らかに貧弱そうな僕の方が心配になったのだろう。

僕の面目丸潰れである。

十は年下であろう少女に心配されてしまうなんて…。


このままじゃまずいな…。

これじゃまるでこの少女が主人公みたいじゃないか。僕はこの世界で常に主人公でいないといけないのだ。


はぁ、めんどくさいけど仕方がない。


「ねえ、君さ何か悩みがあるだろ。僕に教えてくれないかな?」


「はい??」


少女は何を言っているのかまるでわからないと言うような、表情で、


「悩みなんてないですけど…。」と答えた。


「いや、僕だって本当はめんどくさいんだ。

早く家に帰りたい。でも君、なんか悩みがあるだろ。分かるんだよ。僕には。早く言ってもらえないかな、力になるから、っていうかならないといけないから。」


目の前でペラペラとよく分からないことを話している僕のことを少女は不審者だと確信したようだ。

防犯ブザーを鳴らされた。

あーあ、もう最悪だ。

主人公から不審者へと早変わり。

不審者が主人公なんてあってはならないだろう。

ある意味気になるけど…。

さて、不審者から犯罪者になる前においとましよう、なんて思ったその瞬間、およそ200メートル後方に銃を構えた男が、少女に向けて発射した。その間、僅か二秒。


僕は即座に少女の足を思い切り蹴った。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ