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観客のいないプロ野球
私は麻薬的幻影を泳ぐ、これはウツツか? そんな訳はない、我々はゴッソリ、内面ごと忘却の淵へと突き落とされている。
幻に見た素のプレイ。観客に囲まれず、中継も録画もされず、人格による審判もいない。ただ空疎に、簡素に、乾いたグラブと木製バットの鳴る音だけ響いて。
純粋に、プレイのみに特化された、試合後の評価やその累積など全く反映されず、金のためでも、優勝のためでも、ファンのため、恐らく……自分のためでも家族のためでもない、ただひと試合、ひと試合だけの、捨て去られるためだけのプレイ。
チームと、チームの、ぶつかり合い。
自己実現などもっての外。唯一、それは忘却のためだけにある、そんなプロ野球が存在していて……