ドライブへ
夏には家族旅行に行った。
城を眺めたり、久しぶりの水族館へ行った。
好きだったゲームもした。
外へ遊びに出掛けたりもした。
普段はあまり見ない映画も観に行った。
スゴくスゴく充実した毎日を過ごしていた。
ある夜、とは言っても私にとっては珍しいことではないのだが、無性にイライラしてしまいコントロールが効かなくなった。私はそれを発散するべくソファーにぬいぐるみを投げ続けた。
ドシン バシン ズドン ダドン
両親がその音を聞いて見に来た。私は構わずぬいぐるみを投げ続けた。
一時間ほどたっただろうか、足元は何度も踏み込んだせいでカーペットがぐちゃぐちゃになり、私の息は完全に上がり、腕が痛くなっていた。
すると父は、ドライブに行こうと誘ってきた。私はそのままドライブに出掛けた。
私は父にこう言った。
「もう十分生きた。最後の家族旅行にも行けたし、好きなこともやった。もう満足だ。思い残すことなく死ねる。」
すると普段あまり喋らない父は、
「最後なんて言うな」
と言った。
私はまだ子供だからわからないが、いったい自分の子供が「死にたい」と言ってきたらどんな気持ちになるのだろうか。どんな言葉をかけるべきなのだろうか。
スラスラ言葉は出てこないと思う。しかし、「生きていて欲しい」という気持ちと「そんなこと言わないで欲しい」という雰囲気は父の表情から読み取ることは難しくなかった。
私は決して父を困らせたかった訳ではない。私はただただ純粋に、
"満足してしまったのだ"
生きることに、生きていくことに、生きていたことに、満足していた。この後の将来に、今までより大きな幸せがあると知っていても、これからの将来、何が起こるかわからなくても、例え幸せが保証されていても、
"そんなものはいらない。もう十分生きた"
そう強く強く感じていたのだ。
自分でも不思議な感覚だった。自分の体が、心が、死神とかその類いに捕まってしまったようだった。思考は死ぬこと以外の選択肢を一切生み出さず、脳は死ぬこと以外の考えがこれっぽっちも受け入れないようになっていた。死にたいという感情で全てが埋まり、他の考えを持つ余地は私にはなかった。
私は深海に沈んでいたのだ。深く、深く、深く……
結局何も考えが変わることはなく、深夜のドライブは終わり、家に帰ってきていた。
あの時の感情は今でもハッキリと覚えています。
ただただ満足していたことは確かです。
それを上手く文章に組み換える文才が欲しいです……




