3話「円環と断絶」
昨日は異常に動いたせいか体が痛くて重い…
今思えばなぜ剣が振れたのだろうか。普段特にトレーニングしている訳でもない。
俺とリリアは以前居た広場に居た。 この洒落た町を案内してもらうためだ。
「ここが武器屋でここが酒場!それでここが…」 疲れていてリリアの案内も耳に入らない。
「ちょっと!王が直々に案内してるのに!聞いてる?ねぇ!」彼女の必死な声で我に返る。
「もっと堂々としなさいよね!【魔法剣】の英雄さん。」
周りがざわつく「あれが魔法剣?」「パッとしないなぁ」半分は俺への悪口に聞こえたがこういうのも悪くない。
どうやら王女はよく町を歩いているらしく、そこまで珍しく思われていないらしい。
「はいはい。あとその魔法剣の英雄ってのやめてくれる?」
昨日、どうやら近くを通りかかった行商人が一部始終を見ていたらしく酒場で語ったらしい。
1人犠牲にしてるのに、何が英雄だ。 あの兵士も救えたら【英雄】と呼べただろう。
兵士の不注意が原因だが、俺がもっと早く動けてればあんなことには…
突然リリアが「あっ!もうこんな時間だ!今日はこのくらいね!」「じゃ、またね!」と言って消えていった。魔法は便利なものだとこれを見るごとに思う。
そういえばキョウサイとやらは昨日起きたはずだ… もしかしてあの騎士がキョウサイなのか?
「マコト、聞こえますか?」
一瞬戸惑ったがすぐに理解した。周りには俺に喋りかけている人は誰もいない。頭の中に直接 というやつだろう。
「あぁ、これも魔法か?」
「聞こえるみたいですね。私はアーズ 調和の女神です。」 質問に答えろよ…
「ここではあなたが一人、噴水広場という絶好のデートスポットで喋っている悲しいアホに見えるので場所を変えましょうか。おっと 悲しいアホというのは事実でしたか?」
煽りがめちゃくちゃ上手いなコイツ… でもさっきからチラチラ見られてる気がしないでもない。
「そうだな、じゃあ――」
俺が喋った直後、周りの景色が変わった。
「ここは?」 「私のマイルームですよ。女の子の部屋に入るのは緊張しますか?」
私のマイルームって単語被ってるぞ…
それはさておき、なんだこの部屋は… 現実世界のアニメのポスターやフィギュアが乱雑に置いてある。
「お前…なんでアニメグッズが――」 は??
女神イコール大人の女性と思っていた俺は困惑した。
目の前の女神は少女と呼ぶべき容姿だった。
身長は低い黒髪でショートの女の子、体も幼女そのものだ。
「おや?どうしました?私に見とれたのですか?」 半分正解なのが悔しい。
「マコトはもしかしてロリコン という類いのものですか? 怖いですねぇ」
「要件は?あとこの大量のグッズはなんだ…」 女神の煽りをスル―しつつ話を進める。
「スル―ですか… まぁいいです。 ここに呼んだのはあなたに使命を伝えるためです。あとそれは私の趣味です。女神なんですから多少の次元越えくらいたやすいですよ」
もういろいろ酷いがあえて無関心を装う。
「へぇ、そうか じゃあ使命とやらを聞かせてくれ」俺もなぜここに居るのかは知っておきたい」
「趣味については無視ですか… 酷いです…」なんだこのあざとさ!絶対わざとだろ!
「今少しでも可愛いと思いましたね?私の勝ちです!」
全く意味が分からない。
「わかった 負けだ。だから早く使命を…」
「仕方ないですねぇ。 あなたの使命は簡単に言えば、禁忌の回収です」
「もう少し詳しく頼む」俺は即答した。
「これでホイホイ動くほどマコトもお人よしじゃないですよね 可愛くないですねぇ」
いちいちうるさい女神さまだ…
「そんな君のために説明してあげます。 私が生まれる前の話です。 ざっと6000年前くらい?」
こいつ、この容姿で6000歳… 合法だ…
「今やましいことを想像しましたね… それはともかく 世界は戦争真っ最中でした」
「そこでそこで、旧神さまが【円環】とやらを使ったわけです」
「【円環】?」 リリアの能力に似た、何か特別な言葉に聞こえた。
「はい。【円環】の能力は万物を無限に続ける という能力」
「それによって大陸は緑を取り戻し、死人は生き返りました。 そして今に至るわけです」
「それっていいことに聞こえるけどな」 「どこかマズイことでもあるのか?」
「終わりのないもの なんてこの世にありません。物事には必ず終わりがある」
「永遠に終わりが近づいているということです」 なるほど 全くわからない。
「まぁまぁ、 ここまででは馬鹿なマコトは理解できないことは想定内です。 では続けますね」
「決してその旧神さんがミスを犯したわけではないのです。 ここでメイガス家というものが登場します」
「メイガス家というのは抗神の一族 つまり世界の破滅を望むもの ですね」
「人なのに神に抗えるのか?」 「いいえ、 抗えません。 普通であるならば」
「そこで彼らは【断絶】というものを生み出しました」
【断絶】 その言葉には妙に重みがあった――――