拘束されちゃった
走りながら真はさっきのことを思い出していた。
なぜなら今までクールキャラと言う名のぼっちとして通してきたのに驚きであそこまで取り乱してしまうとは思ってもなかったからだ。
それは違う環境に突然来たことで取り乱していたのか、自分でもよくわからなかった。
そんなことを考えながら半刻ほど走っては歩き走っては歩きを繰り返していると壁が見えてきた。
どうやらこの街というのは周りを石造りの壁で囲み街の兵士が門番として犯罪者などが出入りしないように管理しているようだった。
普通ならこんな感じのはところは身分証明書とか冒険者カードみたいなのとかが必要となってくるところだろう。
それは門に兵士がいる時点で勘づくのは容易なことだった、そう、冷静だったなら。
「貴様、自分の身分が証明できないだと?」
「と、盗賊にとられまして」
「そんな珍しい服を盗賊が盗まないわけないだろ!嘘をつくな!」
ですよねーと思いながら苦笑いをしているとそれを見た兵士は馬鹿にされてると勘違いしてしまった。
「貴様、怪しいヤツめ、今ちょうど領主様の娘が失踪しててな、もしかしたら貴様が関係者かもしれんから拘束させてもらおう」
「俺が犯罪を犯す奴に見えるか?見えなーー」
「見える。じゃあこっち来い」
「まって!まって!まってくれ!頼む!」
「ダメだ、早く来ないなら罪になるぞ」
有無を言わせず連れて行こうとする兵士を見て逃げ出そうとしたが変な噂が立つと俺も平穏がさらに奪われてしまうと思い踏みとどまり、大人しくついていくことにした。
リリィに合わないことを祈りながら。
しかし運命と言うものは悲しいものだった。
「あれ?シンじゃない、悪いことでもしたの?」
たった今フラグを立ててしまったことに今更気づき後悔するも時すでに遅し。
悪魔が悪魔らしい笑みを浮かべながら近づいて来た。
あいつが追ってこなかったのってもしかしてこうなることを予想して?………策士め。
「いやぁ、身分が証明できないとかで拘束されてしまいまして、リリィ様助けてはくれませんかねぇ」
「貴様!リターニャ様をリリィなどと呼び合って!不敬罪で死刑にしてやる!」
「大丈夫よ、この人は私が身分を保証します。街に入れて差し上げて。」
「よろしいのですか?リターニャ様。」
「えぇ、しかしーー」
俺の方を見てニヤリと笑ったこの瞬間恐らく俺の危機察知スキルがなくてもわかったであろう背筋を這い上がる悪寒に震えた。
「ーーそうね、でもこの人が変なことをしない証明にはならないから監視役を5人ほどつけようかしら、どうかしらシンくん。」
「わかりましたなんでもします許してください。」
最早これは悪魔どころじゃ済まないなそう思いながら俺は平穏を手放した。
俺には手から飛んでいく平穏をただ見てることしかできなかった。
くそ、どうしてこんなことになったんだ!
諸悪の根源を睨んでいるとニッコリと微笑んで来た。
「しょうがないわねじゃあ私がこの人につくわそれでいいわね」
「しかし!リターニャ様の身が危険ではーー」
「い、い、わ、ね?」
ゆったりとした口調でそういったリリィを見て直立し敬礼をしながら「わかりました!」と叫ぶ兵士の事など考えることもなかった。
「さぁ行きましょう。シンくん」
「今日は厄日だな」
「何か言ったかしら?」
小さい声で呟いた独り言が聞かれ焦りまたも絶望する真であった。
真が可哀想になって来ましたね笑
だがしかしもう少し待ってくれ!