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仔猫ちゃんのご馳走

作者: もはや

別に博愛主義でも動物愛護でもない。

ミーミー鳴き声が五月蝿いからだ。

アパートの隣は大家さんの豪邸の倉庫。その隙間に招かれざる隣人が引っ越してきた。

親猫は顔と前足に大きな傷跡があり、生まれたばかりの仔猫はいつもお腹を空かして鳴いていた。

ある夜中、俺は我慢出来なくなり、冷蔵庫のミルクを手にしてその猫の下に駆け寄った。


「子供を守りたい気持ちはわかるが、そんなに俺にシャーシャー威嚇するなら、お前がちゃんと乳をやってくれよ!」


適当な皿に入れたミルクを仔猫は眺めるだけで飲もうとしない。


「何だよ?飲み方もわからないのか?」


途方にくれていたら親猫が近づき…。


「こら、お前のエサじゃないぞ!お前は自分で狩りでもしろよ!」


親猫は俺が持ってきたミルクを一舐めしただけで、前足で皿をひっくり返した!


「このバカ猫!お前やっぱり傷跡のせいで頭までおかしいのか?」


その夜は仕方なく部屋に戻って寝た。そして翌日の会社で驚きの話を聞いた。


「先輩、そりゃバカ猫なんかじゃないですよ!人間が飲む牛乳は猫には駄目なんですよ。

ちゃんと猫用ミルクをあげないと!」


あの親猫は仔猫が飲まないように皿をひっくり返したのかもしれない…。俺は猫用ミルクを買って家路に着いた。

昨夜と同じくキョトンと皿のミルクを見ているだけの仔猫。

親猫が一舐めする。昨夜と違うのは親猫が舐め続けたことだ。

暫くすると興味を示した仔猫が鼻を近づける。

その様子を見て親猫が皿から離れる。

仔猫は顔面から皿に突っ込み激しくむせかえる。


「なんでこんな簡単なことが…。」


それでも何とかミルクを舐める仔猫に安心した。


「あの親猫…育児放棄ってわけでもないのか…?」


翌朝出勤前、玄関の前には一匹のネズミの死骸が置いてあった。


「お礼…か?

狩り出来るなら仔猫に自分の乳やれよ!

それに俺は死骸よりも、カワイイ恋人が欲しいよ。」


と言って出勤し、帰宅時にはまたミルクをあげる。親猫は今日は飲みはしない。仔猫は昨日よりは上手に飲めている。


「お前が自分で狩りが出来るまでだからな!おやすみ。」


と言って部屋に戻る。

そしてその夜中。

真っ暗な部屋に現れた美しき猫化け。俺は少し期待してたかもしれない…。

美しい髪と肌に似合わない右目から右手の傷が何よりの証拠だ。

固唾を飲み、人の姿をした猫を強く抱き締め、俺はわかった。

「父猫の愛情」を。


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