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キチかわいい猟奇的少女とダンジョンを攻略する日々  作者: 新実 キノ
第三章 DAN DAN 心魅かれてく
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日比野天地に花束を

「う゛~~~~んん……よく寝たあああっ!」


 何か、すっげー長い間寝てた気がする。

 まあ、無理もあるまい。

 何せ、昨日まで手足がグチャミソで激痛がハンパなかったし、精神的にもかなりキてたから、とてもじゃないが熟睡なんてできなかったからなぁ。

 つか、久方ぶりの体力フル回復による影響か反動か分からんが、こう……不思議な高揚感すらある。

 まるで、ヤバいクスリでも飲んじまったかのように、やけに清々しい気分だ。

 無意識の内にニヤニヤしてしまうっていうか、アゲアゲホイホイっていうか、ココロオドルっていうか、きっと今は自由に空も飛べるはずっていうか……。

 端的に言えば、最高にハイってやつだ!


「ん……うにゅぅぅうう……ふぁああああああああぁぁあっあ~っ」

「おお……! 起きたかマユ、我が命の恩人よ!」


 いつもならガクーーッと本気で脱力する、ゆっくりと間延びしたマユのだらしない声が、なぜか今は天使の奏でる極上のハープであり、神が与えたもうた奇跡のオルゴールのようだ。


「マユ様! この度は命を救っていただき、誠に……誠にありがとうございましたぁっ! この日比野天地、感激で今! 打ち震えておりまするっ!」

「………ふぇぇぇえ??」


 寝ぼすけ状態のマユを前に、俺は加速装置も真っ青なスピードで五体投地した。

 なあに、当然のことをしたまでだ。


「本来ならば感謝の意を最大限に示すべく、豪勢なご朝食をご用意してしかるべきところなのですが、誠に遺憾ながら食材に事欠き致し方なく……。何卒、何卒ご容赦を~~っ!」

「……ふぇぇぇえ??」


 俺の全身全霊を込めた土下座に、誠心誠意を込めたほとばしる熱いパトス。

 完全にキョトン顔のマユ。

 「一体どうしたのコイツ? ひくわー」と言いたげな顔をしてる気がするのは、多分気のせいだろう。

 マユは頭をカクカク左右に揺らしながら、しばらく変な物を見る目で俺をじっと見つめていたが、やがていつものようにニヘラッと笑って立ち上がった。

 はい、女神のスマイルいただきましたーー!


「それじゃぁぁあネぇえネぇぇえゴハぁンおぉサガしぃにイこおおおぉぅッ♪」

「アイアイサーーーー!」



 およそ三日ぶりのダンジョン探索。

 無残な死を迎えそうになった後とは思えないほど、俺は意気揚々と突き進む。

 普通に考えたら、もう一生危険な橋は渡るまいと、安全な部屋に一週間は引きこもってしまいそうだが、今の俺にそんな気持ちは微塵もない。

 なぜか?

 ふらふらと掴みどころのない華麗な足取りでひたすらに前を歩くマユ。

 その小さく頼もしく可愛らしい背中を見ると、恐怖などという感情を抱いてしまう方が全くもってナンセンスだ。


「フぅぅうンふっフフぅぅぅンン♪ フッふふっフフゥゥゥううン♪」


 さらに、F分の一ゆらぎとはかくありなんと言わんばかりの、この骨の髄まで安らぐうららかなメロディー。

 実は、攻撃力を二倍三倍に引き上げる魔法の鼻歌なんじゃなかろうか。


「きょぉぉおわネぇぇえネエ~ココはもぉおアキアキだぁぁのでぇぇえ~~シタのぉシタにイきたああいとぉオモぉぉいマぁぁぁぁスっ」

「下って……。ああ、そういえばダンジョンって何階層か分からんけど、ずーっと下に続いてるんだっけ。へぇ~、どんなとこなんだ? 俺行ったことないからドキドキするなあ」

「ん~とねぇぇえ~んんん~とねええ……あぁぁんまりぃカわぁんなぁいかぁなぁぁぁあ~」


 ゲームなんかじゃ、奥に進むほど敵も強くなるのが常識だが、ここはそうでもないのかな?

 いやまあ、人類最強のマユ様にとっては、敵がめちゃんこレベルアップしても些事に過ぎないから、あまりアテにはならないんだけどさ。

 しかし、病み上がりで人類最弱の俺には、一抹の不安すらない。

 なんでだろうなぁ。

 一度死にかけたことで、冒険者として一皮むけちゃったりしちゃったのかな。

 今日の俺は、やけに勇猛果敢な勇者なのであった。



 ――しばらく、マユにくっついて歩くこと三十分。

 これまで通ったことのない道を、きんちょうもきょうふも不安も感じず、ひたすら進んでいると。

 やがて、とてつもなく広い……ただ広いだけの部屋にたどり着いた。

 草木がはえているわけでもない。

 泉がわいているわけでもない。

 モンスターがはびこっているわけでもない。

 地面もカベも、つうろと何ら変わらないゴツゴツした暗い岩。

 ベースよりは少しせまいと思われるが、何もないことが空間を広く見せている。


「こぉこのぉお~アッチなぁのでぇぇえ~~てぇんちゃぁぁんわぁチョぉおっとマっててってネぇぇえええ~ええ」

「(待ってろ? そんな! どこまでも付いていくぞ!)…………りょーかいであります!」


 本音がノド元まで出かかったが、グッと飲みこむ。

 オレはもう、マユの言うことをうたがったり、さからったりしないと心にちかったのだ。

 モンスターのむれにつっこめと言われたら、ゴールテープを切るちょくぜんのランナーのように、両手を上げて、えがおでラストスパートをかけさせてもらうかくごがある。


「さぁぁぁぁあてさぁてぇえ……イィィイうんどーぅうのジカぁンだぁぁぁヨお」


 オレは言われたとおり、へやの手前で犬みたいにすなおにまつ。

 マユは伸びをしながら、うす暗がりにあゆみ出る。

 すると、とつぜん天じょうのやみがざわざわとうごめきだした。


「あれ……は…………?」


 よく見ると、なにかがびっしりと上の方をおおいつくしている。

 じぃっと見つめていると、ぽつり、ぽつりと赤い点がうかび上がって……。

 またたく間に、あやしくめいめつする光が、まん天のほし空のようにふりそそいだ。


 カサ……カサカサガサ……。


「……キキ……キィィ……キキキィィ……」


 これは……なにかの、なき声?

 もしかして……あの黒いかたまりって……。


「キキィ……キキィィキィィィィィィィイイイ!」


 ぶわあっと。

 ものすごいいきおいで大りょうにこう下してきたのは……きょ大なコウモリだ。

 一ぴき一ぴきが、ワシのようにでかい。

 するどいキバとかぎ爪をこちらにつきつけ、いっせいにマユにとびかかる。

 上のあれが、ぜんぶコウモリ……?

 うそ、だろ…………。

 百……二百……とてもかぞえきれない!

 信じられないかずのきょうい、向けられるてきい、羽がすり合わされるかわいた音、かん高く不かいななき声、それら全てがオレをせんりつさせる。


「しゅぅぅてぃいいんぐっゲーーぇムッ! にゃっっハハハハぁぁぁああ♪」


 だが、さすがのマユは少しもどうじない。

 のんきにラジオ体そうをしながら、ニコニコ笑っている。

 やっぱりマユはたのもしすぎるぜ。

 どう見てもたぜいにぶぜいなのに、まるで気もちのいい朝のさわやかなジョギングに行くみたいだ。

 なら、オレも安心してマユをしんじて……全力で応えんしよう!


「うおおおおおっ! がんばれマユーー! やっちまえーーーーっ!」


 次々とおそいかかるコウモリがきょりを半分までつめた、その時――。

 マユの小さな手がきらめいた。

 そして、一すじの光が走ったかと思うと、そのながれ星につらぬかれて、なんびきものコウモリがとつぜんビタッとうごきを止め……すいちょくにじめんへらっ下していった。


「ッギギィィィィーーーー!」

「びぃぃぃんごおおぉぉ♪ にゃっははははははァァァアっ!」


 あ……ありのまま、今おこっていることをはなすぜ。

 マユがはげしいダンスをおどるようにうでを大きくふり、体をくるくる回てんさせるたびに、いつの間にかコウモリがぐちゃどちゃとついらくし、死んだ。

 な、なにを言っているのかわからねーと思うが、オレもなにがおきているのかわからない。


「……ん……? あれは……」


 よく見ると、マユの手になにかがある。

 小がたのほうちょう……ペティナイフだ。

 マユは、それをきように二十本ちかくもゆびにはさみ、すさまじいスピードでとうてきしていた。

 不しぎなことに、なげてもなげてもナイフはいっこうになくならない。

 そういうスキルなのだろうか。

 えいえんにつきないそれで、一本につき一ぴきをかくじつにほうむる。

 チョウのようにまい。

 ハチのようにさしころす。

 

「す、すげえ…………きれいだ………………!」


 オレはみぶるいした。

 まばたきをするのもわすれ、はげしいどうきもぜんぜん気にならず。

 ただただ、そのわずかすう分たらずのショーを、かたずをのんで見守った。


「ニャハハハハハハはハハハハぁぁぁぁああっっ♡」


 そうか――――!

 そうだったんだっ!

 オレはきのう、サユにきかれた。

 なぜマユといっしょにいるのかと。

 今、そのこたえがかんぺきにわかった。

 なんだ、かんがえてみたらカンタンなことだったんだ。

 なぜきづかなかったのか、自ぶんのマヌケさにあきれはててしまった。

 オレはじつにバカだなぁ。


「はぁあぁあぁぁぁぁあ……きっもちぃイイぃぃぃいいい♪」


 あっというまに、すべてのコウモリを一ぴきのこらずくちくしたマユは、血のあめがふりしきる中、こうこつのひょうじょうをうかべて天をあおぎ、おもいっきり手をひろげてむじゃきにはしゃいでいる。

 その、ようせいのようにかれんなすがたをみて……。

 オレのきもちはかくしんへとしんかした。

 オレは、はしった。


「マユーーーーっ!」


 へやのはしからはしまでとどく大きいこえに、まっかなようせいはふりむく。

 むぼうびにわらう、ちまみれのマユを。

 オレは、カいっぱいだきしめた。

 そして、ふたたびさけんだ。


「マユ……おまえのあっとうてきなせいのうにおれは心をうばわれた! このきもち……まさしく愛だっっ!!」

「…………………………ふぇぇえ??」


 おおきく目をひらくマユ。

 かおからは、きゅーとなえみがきえている。

 ほんじつ2かい目のURきゅうレアのぽかん、あざまーす!

 ほぞんほぞん。


「………………」

「………………」


 あれ?

 おかしいな。

 へんじがない、ただのしかばねのようだ?

 きこえてないのかな?

 やれやれ、うっかりさんだなぁマユは。

 いいだろう。

 だいじなことなのでなんどでもいわせていただこう、あえてね。

 あえてね。


「おれはおまえがちょう・だい・すき・だぁーーーーっ! あいしてるといってもいいね! ひびのてんちは、せかい十のだれよりも、こがらしマユをあいしています! えいごでいうとあいらーびゅー!」


 さあどおくる?

 びんたか? ちょっぷか? せいけんづきか? とびひざげりか? めつぶしか? じゃーまんすーぷれっくすか? しゃいにんぐうぃざーどか? いっぽんぜおいか? たすきぞりか? そくびおとしか?

 日はつぶった。

 はわくいしばった。

 イタみをうけ人れるかくごはとうにできている。

 なんでもおーらいばっちこーい。


「……………………? ??」


 しかしやつぱりマユはなにもいわない○

 なにもしてこない○

 じかんがかたまっている○

 ほわーい、、、なぜ???

 きみのむしほどおれのこころをかきみだすものわないよまいすうぃーとはにーえんじぇる、

 だめ―じわはかりしれナょしゝ、


 ――――あ――――っ


「もしかしてまさかーーなあるほどぉそおゆうあれか~」

「?? うにゅぅぅぅうぅう……?」


 よおやくわかつたぞおれわ

 あと―ぽふみこむのおまているのだマユわ

 ことばがちがてこうどうがしめすと

 よしきた


「……てぇんちゃぁぁあん……?」


 かおいつぱいのはてなまあくのマユ(あかいるびー)

 きのうはマユ(てんし)からだたが・・・こんどはおれのばんだ!

 おれはマユ(おれのよめ)のやわらかいかたにておおき

 ちいさなくちびるにちかづいt――――


「は・・・・・・・れ?」


 ヘんだ

 きゅうに

 あたまが

 ぐるぐるまぜまぜしぇいくする

 まゆのかおがぼやけて2つ(2つ2つ)3つ(3つ3つ3つ)4つ(4つ4つ4つ4つ)ふえふえふえ(ふえふえふえ)ててててててててて(ててててててててて)


 め の まえ が まつくら に  なった 


 か ら  だが   おも くて か る   くて


 なん だ か  とても ねむ    く て・・・・・・



 ・・・・・・しか た  な い


 きょお わ  ここ ま    で


 おつか  れ  さ    ま


 お

 や

 す

 み

 ・

 ・

 ・

  」


 バターーーーンッ!!



「……………………………………ふぇぇぇぇえぇえぇぇえええ???」



 ついしん。

 どーかついでがあつたらおれおあんぜんなばしょまでつれててやてください。

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