達成、そして・・・
作者です、
まだまだ、続く予定だったのに、何故か、完結してしまいそうです。
無理やりにでも継続させるかはちょっと迷っています。
新しく書くべきか、このまま突き進むべきか・・・
でも、少なくとも後、一部以上は書くつもりです。
最後までお付き合い頂けたら、幸いです。
オレオ
そしてついにアルテミシアは目の前まで来てしまった。
「やっぱり、そう期待通りには運ばないわよね。
まあ私としては、貴方が勝ってくれるだけでもいいんだけどさ」
と、アルテミシアは再度剣を抜き放ちこちらに向けた。
「えっと、リミットオーバーだっけ、大丈夫?」
掛け直しの時間も待ってくれるらしい。罠の線はだいぶ減ったな。
「ああ、まだ大丈夫だ。一つ質問だがどんな命令を受けて来た?」
「ふふ、生け捕りにしろってさ、初めて命令を喜んで受けたわ。
これで確実に私の希望は通ると思うから」
と、アルテミシアは満足そうに微笑んだ。
そんな彼女を見た、メルが口を開く。
「私の旦那を甘く見ない事よ。
割と無理をしてでもこういう時は、違う方向に持っていきたがるから」
「そう、じゃあ言っておくわ。生け捕りと言っても結局は死ぬわよ?」
「はは、そりゃ本望だ。だが、そうだな……
メル、リーア、連携してあっちの方角で上げておいで」
正直ここに居ても意味は無い。
だから負けた時を考えてアルテミシアを引き付けていられる間に事を成して欲しかった。
「いいの? 二人は貴方の彼女? とかなんでしょ?」
「私だけよっ!勘違いしないで!」
メルは心底嫌そうに口を開いた。
「ほら、早く行け、俺のイメージ魔法が解けるだろうが」
「分かってるわよ、ちゃんとやってくるから安心していいわ」
「そうね。
ちゃんとレベル上げして手助けしに戻って来て上げるから心配しなくていいわ」
よし、メルには伝わっている。
気を聞かせて黙って居られないあの人には伝わっていないな。
まあマリオンも居るし厳しいだろうが。
メルならちゃんとレベルを上げてから連携を取って挑んでくれるだろう。
問題は問題児が問題を起こさないだろうか。と言う位だ。
「待たせて悪いな。そろそろ始めてくれ」
「あら、もういいの? 私にとってはもう巡ってこないチャンスだから、今の幸せなドキドキ感をもうちょっと味わっていてもいいのだけれど」
……殺されるチャンスが幸せね。
ちょっと前の俺ならどう思っただろうか……まあもう考えてもしょうがないな。
「まあ、それは私の都合ね。じゃ、行くわよ」
と、その言葉を最後に俺は喋る余裕をなくした。
アルテミシアの猛攻は加速した思考を全力で当てても危険だ。
軽くよみ間違えただけでも、傷を負ってしまうだろう。
少しずつ壁際に追い込まれ、彼女の言っていたハメ技というものを出された。
それはただ、避ける為にはいつもの倍速で動かなければ避けようの無い攻撃だった。
だがそこに至るまでの攻撃の仕方、つまりは壁への追い込み方が秀逸だった。
なるほど。格ゲーならどうにもならないかも知れない。
だがこれは格ゲーでは無い。俺は前もって考えていた。魔法を放つ。
「ウィンドストーム」
そして彼女は風に刻まれながらも、攻撃を当てようと剣を水平に
一閃した、その攻撃を剣で受けながら、俺は彼女の心臓を掌底で突いた。
風の攻撃と物理攻撃の両方に押し出され、一瞬にして彼女は、壁に
叩きつけられ、地に転がろうとした。そのチャンスを逃す訳には
いかないと、俺は彼女の四肢を切り落とした。
「ハイヒーリング」
「な、なぜ殺さない! まさか、このまま……また私は飼われるの……」
「あほな事を言うな、俺にそんな趣味はねーよ」
「そう、なら一思いにお願い」
「んーあー取り合えず、よっこいしょっと」
俺は彼女を担ぎ城を出てテレポートで人族の国に初めて飛んだ町に来て
彼女に問いかけた。
「なあ、お前はここから城に瞬時に移動する術を持っているか?」
「ないわ、と言うか今は足すら無いじゃない。
あなたはもう少し真面だと思っていたのに。信じた私が馬鹿だったわ」
彼女は、またこれか、と、変な笑い方をしている。
「フルヒーリング」
絶望にくれる姿を見てるのがつらくなってきた。
俺は距離を取り、落とした手足を再生させた。
「と、言う訳でお前ここに置いてくから。
もし、隷属が解けたら後は好きに生きろ。自決も出来るようになるだろ?」
「再生? …………もう何なの、なんかあなた。
私の好きだった物語の主人公みたいだわ。けど、現実だと最悪ね」
彼女は困惑し、ヒーローみたいだと言いながらも、不服を告げる。
「はは、じゃあ、その主人公も最後は死ぬ為に外道に特攻を?」
「はっ? 人の事助けておいて、自分は死ぬ気なの?
状況で仕方なくじゃなくて、自分から?」
彼女の顔は呆れ顔と同時に、怒りもこもっていた。
「状況で仕方なく、だよ。俺はもう心が半分以上死んでる」
そういった瞬間、目を伏せ、呟くように声を発する。
「ああ、私と一緒なのか、ごめんなさい。
じゃあ、そっか、さよならだね。ありがとう」
彼女との会話を終え、俺はテレポートをして王城へと再度、入って行った。
魔力感知ではメルとリーアはまだ王の所までは行っていない様だ。
俺は好都合、と彼女たちを追いかけ合流する為に走った。
そして、彼女達の所にたどり着いた。
「ははは、良い経験値持ってたじゃねーか。
こりゃもう一匹も頂くしかねーなぁっと、逃がさねーぞ?」
と、マリオンが言い、その視界には見たく無い物が映っていた。
「リーア……そうか、先に逝ったか。すぐ追いかけるからな」
俺は自分に言い聞かせる様に小声でつぶやいた。
視界の先には、リーアミール・アードレイが倒れ、こと切れていた。
「フェルごめん、ダメだった。先に逝くね」
と、マリオンの攻撃を目前に控えたメルは、居る事に気が付いていない俺を呼び、悔しそうにつぶやき、目を閉じた。
俺は瞬時にマリオンの首を叩き落し、メルに声を掛けた。
「リーアは目的を達成したみたいだな」
「また、来てくれた。ふふ、これじゃ死ねないわね。
うん。でも彼女不服そうだったわ」
まあ、そうだろうな。だが、待たせずにその原因を送ってやったのだ。
それで勘弁してもらうことにしよう。
「じゃあ、国王とやらを人生から退場させに行こうか」
「うん、一緒にねっ」
と、メルはいつかの様に、俺の腕にしがみつき、肩に頬擦りをした。
そしてとうとう俺達は国王の間の前に立った。
「さて、これで国内最強がこいつらの敵に回る事になるだろうし、目標はすべて達成された事になるだろう」
「アルテミシアさんだっけ? 自決しちゃいそうじゃない?」
「いや、あれはチャンスがあれば頂く派だろう。
きっとこのチャンスを見逃さないと俺は踏んでいる」
「まあ、そうよね。
どちらにせよ、国王も死んでトップ10の二人が居なくなれば、気持ちよく逝けそうね」
「じゃ、派手に行きますか」
と、俺は片足で国王の間の大きな門を、国王が居るであろう場所に向かって全力で蹴り飛ばした。
「はい、ドーーーーン」
そしてその瞬間、俺は一レベル上がった。
「はっ? 今ので国王死んだの?」
「え? はっ? 最後なのに……ここでやらかした訳?」
と、扉は壁に半分以上刺さっており。高貴な衣服を着た爺さんが肩から腹まで切り裂かれていて、倒れていた。
「いや、でもさ、結果的に殺した訳だし良くね?」
「……確かにそうね。正直、話をしたりとかしたく無いし。
悲鳴を喜ぶ趣味も無いし……じゃあ、お疲れさまでした」
「うーん、せっかくだし他の上位者もやっとこう」
「ああ、そうね。それでお開きにしましょうか」
そして、難なく上位者を5人程、始末した所で問題が発生した。
「え? 兄さん?」
俺は目の前が真っ白になった。
何故、何故ルディがここにいる?
その服は、その装備は……何故お前がつけているんだ?
「どうしてだ、ルディ、何故? お前のやりたい事はこれだったのか?」
ああ、そうか、俺はお前に憎まれていたんだったな。
ならば、お前に殺される。俺はどうせ死ぬのならお前に殺されたい。
「ルディ……いいぞ? お前になら俺は殺されても、本望だ」
「フェル、ダメよ。ちゃんと告げなさい。
何があって今どういう状況で、どう決断したのかを」
「メル姉さんまで、どうしてここに」
「ああ、そうだったな。
俺の母さんとな、アルファ、そして、アデルがな、王宮にテレポートで入って来た人族に不意打ちで殺されたんだ」
「……そんな、嘘です。あの人たちが死ぬなんて」
「はぁ、良かったよ。お前は関わってなかったんだな」
と、会話の最中にルディは剣を抜いた。
「ダメだ兄さん。すみません俺の前から姿を消してくれませんか?」
とルディは攻撃をして来た。
「やっぱり、顔を見るのも嫌か?」
「ごめんなさい、僕……今、隷属されているんです」
俺はそれを聞いた瞬間、毛が逆立った。
怒りでおかしくなりそうだ。
「だれだ?そのふざけた野郎は、教えろ、ルディ。
これは命令だ。そいつは絶対に俺が殺す」
俺はルディの剣を手で受け止め握りしめた。
「ダメです。無理なんです。いくら兄さんでも」
「なぁ、フィーとシャノンはどうしたんだ?」
「……ごめんなさい」
「そうか、ルディ。聞け、俺はお前が大事だ、いつまでも俺の兄弟だ」
「ごめんなさい、ごめんなさい」
「お前は優しい奴だ。それを知ってる上で言う、乗り越えろ。
俺には無理だった事を成し遂げてみせろ。これは命令だ」
「出来ないです。もう僕は何を想って生きて良いのか分からない」
「俺がダメならフィーやシャノン、それもダメなら自分を思ってやれ」
「でも、僕は、また、やらかしてしまった。
兄さんに剣を向けて、攻撃をしてしまうなんて……」
「ああ、これは言ってなかったな。俺はな、ここに死にに来たんだ。
だから、好都合だと思っていた。
だが、隷属されているのなら話は別だ。すぐ兄ちゃんが解いてやる」
「無理ですよ、だってそれは、この国最強で400レベルを
超えていて、化け物みたいな強さなんですよ。」
「ああ、アルテミシアか。良かった。そいつの隷属は解けた
はずだ、国王を殺して来たからな。テレポート」
俺はメル、ルディと共に転移した、先ほどアルテミシアを放置した場所だ。どうやらまだいてくれたらしい。
「アルテミシア、殺して来たぞ。調子はどうだ?」
「あはは、さよならだって言ったじゃない……ダメよ。
最悪、おかしくなっちゃった。もう、すべてがどうでもいい。
あはははははは、ねえ?殺して?殺し合いしましょ?」
アルテミシアは物凄い表情をしていた、絶望、怒り、悲しみ
その三つをすべて表現しているかの様に。
「ああ、そうか、分かった。叶えてやるから一つ、聞け。
ルディの、こいつの隷属を解いてやってくれ」
「あはははは、いいわ、そんな事……でも、ダメね。だって殺せば解けるじゃない」
「分かった。じゃあもし、俺が負けた時は、解くと約束しろ。
そして、気持ちが落ち着くまでは慰めてやってくれ」
「ふはっ、貴方正気?今の私にそんな事を言うなんて。
解くのは構わないけど、慰め方は保証しないわよ」
と、彼女は泣き笑いをしながら、解放は承諾してくれた。
「ああ、解いてくれれば構わないさ。ルディはな俺の誇りなんだ。
とっても優しい俺の弟なんだ」
「そう、でも。私、死にたいんだけど」
「やり返してからでいいんじゃないか? 俺みたいに」
と、言った瞬間、彼女の笑い声が諦めの様な響きから本来の笑い声に変わり始めた。
「やり、返す。ふふ、そうね。あはは。もう出来るんだ……
いいわよね。私はもう何ににも縛られて無い、無いのよね?」
「ああ、自由だ」
そして自由と言う言葉を聞き、彼女の瞳が力強いものに変わる。
それから彼女は移動しルディに手を当て、魔力を移動させていた。
どうやら隷属を解いてやっている様だ。
ルディは深刻な表情で固まり、そのまま涙を流し続けている。
「死ぬのは延期する事にしたわ、それと、この子の面倒は任せなさい。
お礼として、私が生きている限りは責任を持つわ。」
彼女はこわばった表情はまだ抜けていないが、
ある程度自分を取り戻したみたいだ。
「他に、やって欲しい事はある?」
「無いよ、好きに生きなよ。お勧めはオルセンだ。
ミルフォードは戦争が起きたばかりだからな。どちらも良い人ばかりだぞ」
「分かった、覚えて置く」
そして、固まったまま、泣いているルディに目をやり、抱きしめた。
「おい、ルディ、聞け、お前に罰を与えたいと思う」
もう、どんな慰めも聞かないだろうと、俺は無理やりにでもルディに道を示す事にした。ルディはゆっくりと泣いたままの顔を上げ、小さく『はい』と呟いた。
「俺達は、いや、俺は生きる事から逃げる、だが、お前は罰として生きろ。
ずるい事を言ってるのは分かってる。だから幸せが訪れた時は受け入れろ。
それがどんな事でも俺が許してやる」
「死んでは……ダメですか?」
「ああ、俺は見たい。お前がどう生きるのかを。
女神の力を借りて俺はお前を見守っているからな。
ああ、姉様の騎士なんかいいんじゃないか?
いや、それは無粋か。お前の人生、好きに選べ」
「はは、本当にずるいですよ、兄さん。
でも、僕はもう兄さんの言葉を違えたくない。だからもう一度、今度こそ……」
「ありがとう、俺の自慢の弟、ルディ」
俺は、最高だよ、凄いなルディは、と思いながら目を細めた。
そして、メルを見やりどうしたもんか。と言う表情を向けた。
「まあ、そうね。こう、なっちゃったもんはしょうがないわよね」
「そうだな、でもどうしようか。
俺はお前への攻撃はエロい事しかやりたくない。いや、やりたい」
「馬鹿っ、でも、いいわよ? する?」
と、メルはゆっくりと装備を外していった。
「えっ? ちょっと待って」
と、言いながらも、俺は即座に装備をすべて脱いだ。
「……止めとく」
「思考長すぎるわよ」
「そりゃそうだ。場所が不味いし、移動を考えたし、最中も想像したし、その後の事まで行きついたところで、死ねなくなりそうだと。
そう思って止める事を泣く泣く決意したんだからな」
「ふふふふ、泣かなくてもいいじゃない。ありがとう、愛してくれて」
「泣くだろ、46年だぞ。だけど、こちらこそありがとう」
俺達は、自然と剣を抜き、抱き合った。
「このまま二人して、逝きたいな、フェルは出来る?」
「俺もそうしたい。だから、やってみる」
「分かったわ。じゃあ任せる」
「……ずるい。けど、男の甲斐性を見せる時か」
俺は、抱き合ったままメルの背中に、自分の胸に、剣を向けて突き刺した。
ルディは蹲り目を背け泣いている。
アルテミシアは腕を組み、じっとこちらを見ている。
だが、俺達には関係無かった。
「ぐふっ。激痛なんですけど……」
「当たり前だろ……これで激痛じゃない訳がない」
と、二人は顔をゆがめながら抱き合い、膝を付いた。
「ここから……どうするのよ……」
「考えて……無かった……」
「馬鹿っ……馬鹿っ……どの位耐えればいいのよ……」
「じゃあ……思い切って……刺した剣を回してみるか?」
「……死んじゃうじゃない。」
「ああ……それが目的、だろ……」
「で……でもダメよ……耐えられない」
と、そこでルディが近づいて来て、声を掛けて来た。
「もう、気持ちが変わる事は無いんですね……
兄さんの願い、すべて叶えたい。苦しいけど。
だから、僕が介錯を……しても……いいですか」
「「是非、お願いします」」
二人は顔を歪め必死に答えた。
ルディは泣きながらも、ちゃんと果たしてくれた。
そして、俺の、フェルディナンド・アルフ・ミルフォードとしての人生が終わりを告げた。