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小林晴幸のネタ放流場  作者: 小林晴幸
活動報告より
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活動報告より(2015・5・24)

【はばたけ!魔法少女ヤマダ】


 水辺崎小学校5年生の仲良し3人組+1。

 四人はある日の放課後、謎の空間に前触れもなく拉致られていた。

 抵抗できない様にか、後ろ手に縛られた腕が痛い。


「くふふふふっ よく来たな、水辺崎の乙女達よ」


 真っ暗な空間の中、どこからともなく声がする。

 程なくしてぱっとライトが灯り、黒ずくめの男を照らし出した。

 怪しい。

 何とも言えず、怪しかった。

「何あれ、変態?」

「よう来たなって、拉致した癖に白々しい…」

 小学生達の男を見る目は手厳しい。

 だがそれも、無理からぬ事だった。

「俺は地底世界グローリアの妖精(フェアリー)にして特務武官ゼネコンだ」

 その言葉に、小学生達はそろって一つ頷いた。

 真剣な、焦燥感交じりに言葉を交し合う。

「真性の変態、だ」

「いや、頭がおかしい人じゃ…」

「ねーえーそれより誰か、名前にツッコミ入れよーよぉ」

「どっちにしろ、誰かおまわりさーん!」


「無駄だ、乙女達。助けは呼んでも来ない!」


 カッと目をかっ開いた男の目から、ビームが放たれた。

「「「「う、うわあああっっ」」」」

「どうだ! ただの人間にこんなことはできるまい!」

「わぁああんっ このひと人間じゃないよー!」

「しっ 泣いちゃ駄目…! 変態を刺激したら危険だわ!」

「この期に及んで、変態かどうかに目がいくんだ…流石だよ」

「ごちゃごちゃと煩いぞ、乙女達! そんなに直撃を食らいたいのか!」

 何の直撃ですか?

 ビームですね、分かります。

「「「「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい…!」」」」

「ふんっ わかればよいのだ」


 男は、実力行使で強制的に子供達に自分の存在を認めさせた。

 慌てふためいて転げ回った子供達が、戦々恐々と男を仰ぎ見る。

 黒いマントの下から、男は大きな蝶の羽根を広げていた。

 怪しさが八割増した。


 問答無用で子供達の言葉を封じた怪しい変質者・ゼネコン。

 彼は子供達の顔を順番に見ていくと、びしぃっと指差してきた。

「水辺崎の乙女達よ、貴様達にこのグローリア王国特務武官ゼネコンが使命を与える!」

「うわっ なんかこっちの意思も確認せずに超勝手なこと言いだした!」

「ばかっ 喋っちゃ駄目よ! 変質者を刺激してどうするの!?」

「そーいうマユちゃんが一番刺激してそー」

「ええい、静かにしろ! お前達にはこれからやってもらうことがある。とはいえ、口答えする様であればこのゼネコン様が手加減抜きで罰してやるぞ」

「具体的には何するんですか」

「逆さ吊りにして口の中にくさやを詰める」

「「「!!!?」」」

「え、くさやってなに?」

「知らないのは…うん、知らないままでいたらいいと思う」

「ええ? くさやってなに??」

「知りたいのか、貴様。記念すべき罰則者1号に名を連ねるか?」

「………なんだか超絶に寒気のする予感がするから、いーです」

「遠慮は無用だぞ?」

「すみませんすみませんすみません、大人しく拝聴するから勘弁してつかーさい」

「ふん。最初からそう言えば良いものを…」

 子供達に対して容赦のないゼネコン。

 子供達は手加減しない変質者(自称妖精)に戦慄した。

 戦々恐々と固唾を呑んで、その動向を見極めようと自然と息を詰める。

 そんな怯える子供達に、ゼネコンは『使命』とやらを一方的に告げた。


「たった今、この時より貴様達には我が王国の尖兵 『魔法少女(笑)』 となってもらう!!」


「やっぱ変質者だーっ!!」

「待て、(笑)ってなんだ、(笑)って!」

 どよっと心を不安に揺らす子供達の中、1人の少女が手を挙げた。

 手を挙げたのは、前髪にトランプマークの髪留めを付けた女の子で。

「それって実際には何をすればいーんですかぁ?」

「「ここでまさかの前向き発言!?」」

「ちょっ 発揮しない時に無駄な積極性発揮しないでよ!」

「ユナちゃん…その積極性を授業で発揮すれば先生もきっと涙するのに」

「え、二人ともわくわくしない? なんだかさっきから現実では有り得なすぎて、私、逆に楽しくなってきたんだけど」

「出たよ、ユナの前向きすぎる好奇心。ちょっとどうする?」

「ユナちゃん、気になることは取り敢えずやってみる主義だしね…」

 呆れた顔をしつつも、何とか友達を思い止まらせようと慌てる二人。

 ユナは二人の顔をじっと見て、一つ頷いた。

「うん。今が楽しければ凄く良いと思う」

「もうちょっとユナちゃんは後先考えて生きようね」

「ユナがそんなだと、こっちの心労が絶えないのよ」

 溜息をつきつつ、未練がましく眉尻を下げて情けない顔をする。

 本気で嫌がっている二人をすっぱりと黙殺して、ゼネコンが声を上げた。

「よろしい、中々に見込みのある乙女だ。貴様には期待しているぞ」

「わぁい期待されちゃった」

「ユナぁああっ」

「マユちゃん、落ち着いて!」

「駄目よ。今まさにこの時、ユナが道を踏み外そうとしている!」

「もう手遅れだよ! こうなったら成る様にしかならない!」

「ナミは諦めんのが早すぎよっ!」

 全力で嘆くマユの心など知らずに、ゼネコンは話をさくっさく進めた。

 それを楽しそうに聞くユナは、もうゼネコンの変質ぶりなど気にならない様だった。

 色々と将来に不安の残る呑気ぶりである。

 その様子に、二人はこれはもう絶対に止められないと悟ってしまう。

 そして友情という名の腐れ縁の元に。

 保護観察が必要と判断した二人は、完全に諦観の色を目に浮かべていた。


「ゼネコン指令! それで、私達は何をすれば良ーんですかぁ?」

 諦めて開き直った友達二人と、未だ黙り込んで警戒する一人(空気)を意にも止めず。

 無邪気なユナの質問に、指令はうむと頷いた。

「それを説明する前に、我等が栄光のグローリア王国について必要な情報を伝達しよう」

 言葉に合わせたタイミングで、ゼネコンの背後をライトが照らす。

 その先には、愛らしい二等親のキャラクターを描いた横断幕。

 緑のチョッキと三角帽子の、円らな瞳の小人さん。

 まるで絵本にでも出てきそうな愛らしさだ。

 何だかベニテングダケの家にでも住んでいそうな感じがする。

「彼等は我が王国で俗に『コレットさん』と呼ばれる下等妖精だ」

「隕石でも降らすの?」

「ナミ、それコメット」

「もうっ ナミちゃんったら。これゲームじゃないんだよ?」

「妖精(?)を目の前にそんなこと言われても…」

「貴様達、姦しいぞ。それでコレットさんだが、彼奴等は我等が王国の下層を這いずり回る存在ではあるが、貴重な労働従事者として珍重されていた。詳しく言うのであれば、王国の肉体労働や単純労働は全て彼奴等に回していた訳だが」

「それ、奴隷って言わない?」

「文字通りの労働力だね。人権保護団体とか労協とかなかったのかな」

「しっ 駄目よ刺激しちゃ。ろくな事にならないでしょ」

 ひそひそと交わされる、子供達の白い目。

 ゼネコンはそんなもの物ともせず、声を張り上げた。

「だが! 彼奴等は身の程知らずにも思い上がり、労働環境の改善を訴えてきた。王国上層部で鼻にもかけずに一蹴してやれば、今度は悪玉コレットと成り果ててストライキを敢行してきたのだ」

「「「そりゃするよっ!!」」」

「…なんだろう。最初から正義の味方には見えなかったけど、段々悪役に見えてきた」

「ゼネコンのこと? 学校帰りの子供拉致った時点で、どう考えても悪じゃない」

「コレットさん達、どうなったのー?」

「当然ながら、ストライキなどと言う愚行を許す訳がない。全て捕まえて矯正処置を施し善玉コレットに教育し直した後、再び王国の為に骨身を削って尽くして貰う。より劣悪な、強制労働を目的とした収容所でな」

「どんだけ非道なんだよグローリア王国!!」

「貴様、我が栄えあるグローリア王国への侮辱は懲罰ものだぞ」

「あ、くさやは止めて下さい、くさやは…」

「それで妖精(ヘンタイ)男、コレットさんはどうなったのかしら」

「ふん。勿論捕まえた。だが全てとはいかず幾らかの悪玉コレットが地上…人間界へと逃げ込んでしまった」

「良かった…! いや、全然良くないけど、少しでも逃げ切れて良かった…!!」

「…貴様、誰の味方だ」

「私は私自身と常識の味方よ」

「ふん。常識など、世相が変われば幾らでも変容するものを…」

「まあまあ、指令。それでどれだけのコレットさんが地上に?」

「ざっと20トンだな」

「ここでまさかの単位:重量!?」

「普通は数量で堪えないかなぁ?」

「数量って…曲がりなりにもイキモノなのよ?」

「単位は匹かな?」

「というか、20トンが何人相当なのかがわからない…」

「変態妖精男、コレットさんは一人平均で何㎏くらいかしら?」


「4gだ」


「「「「………………」」」」

 コレットさん、一人平均4g。

 それが20トン。

 一瞬、それがどれだけの数に及ぶのか考える時間を要して…

 答えが分かった者も漠然としかわからなかった者も、全然解らなかった者も悲鳴を上げた。

 拉致された小学生の半数は、算数が苦手だった。

「どっ、どっどっどっどんだけちっさいの、コレットさん!?」

「大きさか? 貴様の腿くらいまではあるはずだ」

「って、それ50㎝くらい…? え…??」

「我々妖精を人間の尺度で測るなど、不毛。質量ではない。詰まっているのは」

「え? え? え?………不思議生物?」

「得体の知れないイキモノね…」

 小学生達のゼネコンを見る目が、ますますもって不信感を募らせていく。

 好奇心に支配された一人が、挙手を持って質問を切り出した。

「ちなみにゼネコン指令は体重何㎏くらいですか!」

「りんご3個分だ」

 その答えに、小学生達が動きを止める。

 一人ははくはくと口を無言で動かし、一人は遠い目。

 一人は林檎の品種はなんだろうかと首を傾げ、一人が叫んだ。

「キ●ィちゃんに、サ▲リオにあやまれーっ!!」

 一緒にしてはいけない、可愛いマスコットと得体の知れない変態妖精。



   ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・



「しかし、我等が暮らす地底の妖精界は人間界のユメで成り立っている。最近は脂っこい感じのする濃い欲望(ユメ)が多いので、少々王国も変質してきたがな」

「ああ、それでこんな夢も希望もない妖精さんが…」

「現実って残酷だけど、現代社会の乾いた精神性も問題だね…」

「そんなことを言っている時点で、貴方達も夢も希望もないわよ」





ナミコ 真崎 成実子

 男勝りの元気少女。最早野生児だが、実は花嫁さんに憧れる乙女チックな一面も。

 魔法少女ラブリーまりん に変身する。←命名ゼネコン

マユラ 宮下 真由良

 大人っぽい外見の辛口常識人。辛辣に振る舞っているが一番メンタル面が弱い。

 魔法少女セクシーぱぴよん に変身する。←命名ゼネコン

ユナ 川野辺 優奈

 ゆったりのんびり口調の毒舌天然。興味の湧くことはまずやってみる性質。

 魔法少女…ではなく、指令ゼネコンの片腕:副指令ユナー に変身する。

スズシ 古谷 涼

 基本とばっちりを食らう人。美少女顔の男。一番顔が良い。一人だけ別クラス。

 警戒心が強いが、無口なのを良いことにゼネコンが厄介ごとを度々押し付ける。

 魔法少女(?)ヤマダ(リーダー) に変身する。←命名ゼネコン

 一人だけ魔法少女名が適当なのは、考えるゼネコンが面倒くさくなったらしい。


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