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小林晴幸のネタ放流場  作者: 小林晴幸
ネタの放流場
54/55

愛玩奴隷ミネコのいちにち

書き貯めたネタを漁っていたら、発掘しました。

2016年の11月に、冒頭とラストだけ書いて放置していたブツです。

起承転結の承転結が抜けているという残念な仕様。

完成させる気力がなかったため、ここに投入します。

 ミネコは猫の獣人で、生まれた時から奴隷だった。


 ミネコの父さんと母さんも奴隷で、それはふたりが生まれた時からそうだった。

 おじいさんも、おばあさんも。

 ひいおじいさんも、ひいおばあさんも、たぶんそうだった。

 それより前は、ちょっとわからない。

 もしかしたら奴隷以外の別のナニかだったかもしれないが、ミネコには知る術のないことだからどうでも良いことだった。


 ミネコの父は戦場で主人の代わりに武功を期待される奴隷戦士で。

 ミネコの母は闘技場で人々を席巻するカリスマ的な拳闘奴隷だった。

 広い戦場で縦横無尽に駆け回り、命を懸ける奴隷戦士と。

 狭い闘技場が全ての、人々を魅了する為だけに戦う拳闘奴隷。

 本来なら出会うはずもない二人だったが、隣国との間に大きな戦が起きたことで事情が変わった。

 ミネコの母は闘技場の持ち奴隷ではなく、ちゃんと別に貴族の主人がいた。

 その人が戦場に出ることになった際、優れた拳闘奴隷だったミネコの母も護衛として従軍したのだ。

 ミネコの父さんと母さんは戦場で出会い、一目で恋に落ちた。

 幸いだったのは二人の主人が同陣営に属していたこと。

 お陰で敵味方に分かれて悲劇を演じずに済んだし、結ばれるにも話は簡単に進んだ。

 二人は共に優れた戦闘奴隷だったから、生まれてくる子もさぞ優れた戦闘奴隷になるに違いないと期待されたのだ。

 奴隷の身ではあったけれど、自由に恋することを許された二人は幸いだ。

 欲得ずくではあったけど、それぞれの主人に祝福されて結ばれた。

 生まれてくる子はやがて二人の主人それぞれに分けられることになるけれど、奴隷にはよくある話なので深く気にすることはなかった。

 むしろ優れた子が生まれれば、父とも母ともずっと一緒に居られるだろう。

 二人の主人は戦闘奴隷を後生大事に抱え込んでいたので、きっと手放すはずはない。

 やがてミネコの母は、六匹の子猫を生んだ。

 ミネコと、ミネコ以外の五匹のきょうだい。

 それは可愛い可愛い、元気な子猫だった。

 偶数だったことで均等に分けられると、主人たちもほくほくだ。

 だけど生まれた子猫の中でも、ことのほかミネコが愛らしかったことが問題になった。

 それは本当に本当に愛らしい子猫だったので……二人の主人どっちもが、とてもミネコを欲しがったのだ。

 二人は最初はちゃんと話し合いで所有権を決めようとしたけれど、どっちもミネコを欲しがって譲らない。

 しまいにはとうとう喧嘩になってしまって、このままじゃいけないと主人たちは思った。

 幸いにも二人の主人は理性的な人だったので、本格的に関係に亀裂が入る前に落としどころをちゃんと見つけた。

 どうにもミネコの愛らしさは人をひきつけ、欲しがるにも決着のつけようがない。

 このまま強引にどっちかの主人が所有権をもらっても、争いの種になるだけだ。

 それがわかっていたので、とても残念だったけれど。

 分けられないものを、分けられるはずがないから。

 二人の主人はミネコと、ミネコのすぐ下の弟を奴隷商人に売ってしまうことにした。

 ミネコもその弟もとっても可愛いから、きっと誰が主人になっても大事にしてもらえるはずだ。

 二人の主人はどっちもミネコを得られないけれど、二匹の子猫を売ったお金と残ったきょうだいを均等に分けて話をおしまいにした。


 そうして、ミネコは手のかからない……物心ついた頃合いで、奴隷商人に引き取られていった。

 この子はとっても可愛いから、愛玩奴隷としてもきっと高い価値が付く。

 奴隷商人はほくほくだ。

 やがてミネコは間を置かず、買い手がついて――


「ミネコ、可愛い……っ ああ、このふかふかの体、たまらないよぅ」


 ――そして昨日も今日も、明日も明後日も。

 ミネコは文字通り愛玩される日々を送っている。


「ミネコ……ぎゅーっ!」

 ミネコの一日は、ご主人様のベッドの中ではじまる。

 今日もいつもと同じように、ご主人様に思いっきり抱き締められて目が覚めた。

「おはよ、お嬢様」

「おはよう、ミネコ!」

 ミネコのご主人様は、一人ぼっちのお嬢様。

 今年で十二歳。ミネコよりも三歳年上だ。

 臆病で、さみしがりやさんで。

 だけど人に泣き顔は見せたくないから、いつも強がってしまう。

 そんな可愛いお嬢様が、ミネコのふかふか毛皮に顔を埋めて微笑んでいる。

「ミネコの体、今日もふかふかー」

「いつまでもぎゅうぎゅう抱き着いてても構わないんだけどさ。いつも言ってるけど、抱き着く前に顔を洗って着替えなよ」

「いやよ。そうしたら今度は、抱き着く前に朝ごはんだって言うんでしょ。ミネコ」

「うん」

 それはいつも同じことを言ってますから。

 わかりきったことを聞くなぁと、ミネコは思った。

「私は朝起きたらまず、ミネコをぎゅってして堪能したいの!」

「朝の支度が終わらないってメイドさんが困るよ。それに今日は、パークス卿のお屋敷で新しい後見人候補の人と会うんでしょ。早めに身支度整えておかないと間に合わないよ」

「うー……後見人かぁ。やだなぁ、会うの」

「そんなこと言っても、会わないと。ちゃんと可愛くして、お行儀よくして、気に入ってもらおう? 良い人だって評判なんでしょ。良心的な後見人になってくれそうな人なら、ちゃんと確保しておかないと」

「……私が可愛くしたって、ミネコほど可愛くはなれないもん」

「ボクほどじゃなくても良いから。そもそもお嬢様とボクとは可愛さの部類が違うよ?」

「この前ミネコとお揃いになるように作った猫耳カチューシャを付けて行ったら、ミネコみたいに可愛くなれるかしら」

「絶対やめて」

 それ絶対やめて、ともう一度繰り返して。

 お嬢様を体に抱き着かせたまま、ミネコはうんと伸びをする。

 そのままお嬢様に構うことなく、ベッドから這い出した。

「あっ……まだお布団の中にいたいのに」

「ボクはもう起きたいの」

「えぇ……もうちょっと寝てようよ」

「もう起きるの。お嬢様、本当にそろそろ準備しなよ」

「あ、そうだ。ミネコもパークス卿のお屋敷に一緒にいこ? だったら素直に起きるから」

「ボク、今日はルドマンさんと訓練の予定なんだけど」

「ルドマン! またミネコをイジメるつもりなの!? そんなの駄目よ!」

「特にイジメられた覚えはないんだけど、ボク」

「庇わなくっても良いのよ、ミネコ! この前なんて棒で叩かれていたじゃないの」

「叩くって……それ、その時、僕の方も棒持ってたんだけど。お嬢様、ちゃんと見てた?」

「見てたわ、見てたわよ。ルドマンがミネコを叩いてたわ!」

「ボクの方も棒で殴ったからおあいこなんだけどなぁ」

「決めた! 今日は絶対にミネコも連れて行くんだから!」

「えー……」

「それにどうせミネコは私の家族なんだもの。後見人になるんなら、ちゃんと紹介する必要があるわ」

「そんな取って付けたように言われても」

 お嬢様はもうミネコと一緒に出掛けるつもりのようで、先ほどまでぐずっていたのが嘘のようにしゃっきりと起き出した。

 彼女の可愛い可愛いミネコを陰険な大人(ルドマン)から守る為なら、気の進まない用事だろうとお出かけだろうと何のその。

 自分がちょっと嫌な思いをするくらい、ミネコのふかふか毛皮のツヤには代えられない。

 そう、自分は自分の『どれい』であるミネコを守らなくっちゃいけないのだ――と。

 『奴隷』とはどんな存在なのか、ちゃんと理解できていないままにお嬢様は奮起している。

 今日は絶対に連れて行くと宣言されてしまったミネコの方は、さりげなくため息をついていた。

 そより、猫のひげがそよぐ。

 昨日の内に出しておいた木剣を、仕方なしにミネコは道具箱にしまい込んだ。

 こうなったお嬢様の意思をどうやって変えたモノか、ミネコにはわからなかったから。


 お嬢様も、お屋敷の使用人たちも、ミネコのことをよく可愛がった。

 それはもう、ミネコがとてもとても可愛い猫獣人だったから。

 みんな、ミネコには甘い。甘すぎる。

 ミネコが二本足でちょこちょこ歩いているのを見るだけで、顔を和ませてちょっかいをかけて来る。

 頭を撫でさせてだの、飴を食べなさいだのと構ってくる大人たち。

 ミネコはよくできた猫なので、煩わしがらずに構いたがる大人の手を受け入れる。

 自分の立場は奴隷で、このお屋敷で一番弱いってことを誰に言われずとも理解していた。

 だからこそ、向けられる手を拒むことはない。

 ちょっと甘すぎるんだよね、と――内心で困った顔を押し隠しながら。

  

 ミネコのことを可愛がる人は、たくさんいた。

 ミネコのことを可愛がらない人なんて、猫アレルギーかルドマンさんくらいだ。

 だけどミネコは、ルドマンさんのことを信頼している。尊敬もしちゃっている。

 それこそ、このお屋敷で一番頼りにしているのはルドマンさんだ。

 お屋敷の他の使用人の人たちやお嬢様は、ルドマンさんがミネコをのことをイジメているのだと頑なに信じ込んでいたけれど。


 ミネコはちゃんと知っていた。

 奴隷という生まれだったお陰か、わかっていた。

 他人がくれる厳しさってやつが、いかに大事なのかってことを。

 このお屋敷の中でミネコに対し、言うべきを言い、成すべきを成し、取るべき対応を誤らず適切に接してくれるのは……ミネコの愛らしさにほだされることなく、ちゃんと『ミネコ』という人格に真摯に接してくれる大人はルドマンさんだけだ。

 ルドマンさんがくれるの厳しさは、必要なぶんだけ。

 決して多すぎもしないし、厳し過ぎもしない。

 むしろ奴隷に対するものと思えば、まだ子供な点を考慮してか大目に見てもらえている方だ。

 だけど他の使用人たちや幼いお嬢様は、ルドマンさんの厳しさを「きつく当たっている」とか、「ひどい仕打ち」とか、もしくはもっと直截的に「いじめている!」と見てしまう。

 それはミネコの姿が愛らし過ぎて、虐げられる弱者にしか見えないせいなのだけど。

 ルドマンさんは決してミネコをイジメているわけじゃない。

 濡れ衣である。


 だけど一度女の子がそうと思い込んだ誤解をときほぐすことの難しさを、賢いミネコはちゃんとわかっていたので――誤解の解消を無駄と諦め、割と放置していたりする。


 みんな忘れてるんだよね、と。

 ミネコはルドマンさんへの非難を聞く度に思う。

 ――俺が戦闘奴隷の血筋だって、みんな覚えてないんじゃない?

 可愛すぎる猫の姿を前に、全員その事実を忘れていた。

 覚えているのはルドマンさんだけらしい。

 

 ルドマンさんはお屋敷の……お嬢様の護衛責任者なので。

 その職務の性質からか、物事の本質をよく見ているし、常に冷静に事態を客観視している。

 ミネコに対しても可愛いからと、その認識を曇らせることはない。

 お屋敷全体に気を配るルドマンさんは、すごい人だ。










「……すごい。ミネコ、つよーい……!」

「当たり前だよ。ボクの父さんと母さんは強いんだ。獣人って、両親の強さをちゃんとしっかり受け継ぐイキモノなんだよ」






 9歳の奴隷、ミネコは猫の獣人だ。

 『獣人』……それはつまり、人の血と獣の血が混ざりあったイキモノということで。

 既に混ざっているものを、更に混ぜることが出来ない、でも、ない。

 猫の獣人は同じ猫獣人以外に、猫と、人間とも(つが)うことが出来る。

 身分の問題は別として、種族的に人間と結婚するに支障はない。

 そのことを……お嬢様や使用人たちが、ミネコのことを『令嬢にとって危険な獣』となり得る雄猫なのだということを、いつになったら思い出すのだろうか。

 すやすやと安らかな眠りにつくお嬢様の隣……同じベッドの中で。

 ミネコはまだ9歳なのに、お嬢様の安全が万全を期していないことにため息をついてしまう。

 子供の内はまだ良いけれど、お嬢様はもう12歳。

 若すぎるけれど、絶対に結婚が出来ないということもない年齢になりつつある。

 毎夜の同衾(これ)、いつまで続くんだろ。

 ミネコの為に寝床が整えられていたのは、お屋敷に来た最初の一週間だけだ。

 ミネコの愛らしさに一目惚れしたお嬢様に一週間連続で添い寝を強要されて、一度も用意された寝床で寝たことはなかったけれど。

 それ以降は寝床が用意されることもなく、ずっとお嬢様と同じベッドに寝ている。

 使用人に咎められることもなく、それが当然みたいにずっと。

 メイドさん達もちょっと、不用心すぎると思うんだよね。ミネコは思う。

 この状況が五年経っても改善されない様なら、ちょっとした下剋上でも起こしてやろうか。

 その時、お嬢様は17歳だ。

 流石に一緒に寝るのは有り得ないと思う。

 だから、木箱でもなんでも良いから自分用の寝床を確保するつもりだ。

 寝床が定まれば、お嬢様が何と言おうと譲る気はない。そっちで寝る。

 

 ……まあ、その時? お嬢様はもうとっくに結婚して、旦那の方と一緒に寝てるのかもしないけど。


「…………っ?」

 あれ?

 きょとんと目を丸くして、ミネコは首を傾げた。

 いま、なんだか胸の奥が……ちくんってした?

 あまり経験したことのない痛みだ。

 些細なもので、大した痛みじゃなかったけど……なんだか、やけに気になった。

「うーんと……変な病気じゃないよね」

 また痛みがあったら、医者に診てもらった方が良いかもしれない。

 ちょっと不安になって、寝て忘れようともぞもぞ布団に潜り込む。

 こつん、と。

 お嬢様の膝とミネコの膝が触れ合った。

 お嬢様のぬくもりで、布団の中はぬくぬくだ。

 このあたたかさ……ねむくなる。

 特にお嬢様の懐近くは、心地いいぬくさで満たされている。


 ああ、寝床探しに行かないと、なあ……………………そのうち。


 このあたたかさに満たされる度。

 一緒に寝る夜の安心感を覚える度に。

 新しい寝床を探そう探そうと思いながらもミネコは、今日はもういっかという気分にさせられてしまう。

 不思議な強制力は、まるでそういう魔力があるみたいにミネコを誘惑する。

 眠れ。このままここで眠っちゃえ、と。

「……寝床探しはまた今度でいいや」

 そして今夜も、ミネコはお嬢様の隣で眠りにつく。


 探そう、新しい寝床を探そう。

 そう思いながら、お嬢様の隣でぐっすり眠って……早幾夜。

 ミネコは新しい寝床を探そうにも探せないまま。

 最初にそうと思い立ってから、既に一年以上が経とうとしていた。

 ……これ以降も、彼が自力で新しい寝床を得られる見込みはない。



主人公 ミネコ

 奴隷生まれの猫獣人。9歳の雄。

 様々な種類の猫獣人が掛け合わされた末、獣人界に偶然爆誕したラグドール猫の獣人。

 大きさはお嬢様より一回り小さいくらい。ふっかふかの二足歩行する猫。ちょこちょこ歩くよ!

 両親が名の知れた戦闘奴隷だったため、それなりに高値で売られていた。

 お嬢様の両親が亡くなったばかりの頃、ふさぎ込むお嬢様を慰めようとお嬢様の祖父が大枚はたいてご購入。以来、ずっとお嬢様の癒しを務めている。

 あまりに可愛い外見から愛玩奴隷と思いこまれているが、本質は立派な戦闘奴隷。

 お嬢様に威圧感を与えないストレスフリーな護衛という役割も持つ。

 しかしあまりに愛らし過ぎて、お嬢様もお屋敷の使用人たちも護衛だと認識していない。

 自分にほだされずに接してくれるルドマンさんを尊敬している。


お嬢様 ノエリア・シェルナティット

 12歳の子爵令嬢。

 両親を亡くし、その二年後には最後の家族だった祖父まで亡くしてしまった少女。

 祖父は資産家で子爵位を有しており、全財産と未来の子爵位を相続した。

 以来社交界でお嬢様の価値が高まっており、真っ当な後見人を探している。

 成人するまで財産の管理権は後見人のものとなってしまうし、後見人が諾すれば成人前に勝手に縁談を結ばせられてしまう可能性もある。お陰で後見人選びには慎重さが必要だ。

 人を見る目はある方なので、現在は直接面談して信頼できる相手を探しているところである。

 自分だけの奴隷であるミネコに無自覚に依存しているが、『奴隷』が何なのかちゃんと理解できていない。

 ミネコが猫そのままな外見をしているせいもあり、ペットか何かと勘違いしている疑惑が残る。

 大事にはしているので、今後もそこは変わることなく成長してほしいところ。

 両親を失って以来不眠症に悩ませられており、ミネコが一緒にいないと安眠できない。


パークス卿

 お嬢様のおじいさまの親友。

 ちゃんとしっかりした老紳士だけど、老い先短いので後見人にはなってくれない。

 おじいさまに後を頼まれていたので、後見人が本決まりするまではパークス卿が面倒を見てくれている。

 一応、彼のお眼鏡にかなった貴族が後見人候補として面談選考まで上がってくるようだ。

 だけどもうおじいちゃんなので、腹黒い個々人の裏側までしっかり見極めるのは荷が重い。

 それでもだいぶ頑張っている方。


ルドマンさん

 実は無類の猫好き。

 元々はお嬢様の祖父に厚く信頼されていたシェルナティット家の護衛士長。

 ミネコを見る度に頭を撫でたい衝動に襲われるが、今のところ自制心が勝利している。

 苦み走った渋い雰囲気の良い年したおっさんだが、ミネコを叱り過ぎた日には内心落ち込みつつ身悶えしている。

 ミネコがお屋敷に来た初日、仕事の合間にペットショップまで走って猫じゃらしを購入したが、お屋敷の人間が軒並みめろめろになっているのをみて「これは駄目だ……」と正気に戻る。

 他の者が骨抜きなので、猫好きを隠して仕方なく憎まれ役に徹している。結局猫のおもちゃは一回も日の目を見ていない。

 ミネコに嫌われることを覚悟していたが、何故か懐かれたので内心ではすごく喜んでいる。


ミネコのお父さん

 戦場を駆け回って数多の首級を上げた歴戦の奴隷戦士。猫獣人。

 気品を感じる高貴な佇まいから、猫の騎士と呼ばれている戦場名物猫。

 静謐な空気を纏っており、猫だからと迂闊に撫で回せない雰囲気がある。

 遠いご先祖様は猫獣人だけで構成されていた亡国の王族。

 戦争に負けて奴隷になった血筋。


ミネコのお母さん

 闘技場で常勝無敗を誇る女拳闘奴隷。猫獣人。

 荒っぽい環境にも関わらず、猫の愛らしさを失わない美猫。

 その愛らしさと喧嘩強さのギャップが売りで闘技場のカリスマと化している。

 遠いご先祖様は猫獣人だけで構成されていた亡国の貴族である。

 戦争に負けて奴隷になった血筋。


ミネコのきょうだい

 雌にひき、雄よんひきの構成で生まれた六つ子。

 ミネコとすぐ下の弟が売りに出されたが、残りは父親と母親それぞれの主人に所有権がある。

 ほとんどが長毛種で、半数のきょうだいはペルシャ猫に似ている。

 ミネコと同様売りに出された弟だけが何故かシャム猫風。

 みんな元気でそれぞれ上手くやっているようだ。


この国の奴隷制度

 意外にも法律でちゃんと扱いが決まっているし、保障もある。

 奴隷だからって完全に主人の好き勝手に出来る存在ではないようだ。

 奴隷なのでお給金は出ないけど、その生活は全て主が面倒を見る決まり。

 ちゃんと働いてしっかり勤め上げた奴隷にはご主人様が年金を出すよう法律で定められている。

 だけどもちろん法の抜け道もあるので、保障は完璧ってワケじゃない。


獣人

 獣と人の血が混ざって生まれた種族。

 基本的に人間より強い。

 可愛く見えても強い強い、すごくつよい。

 正攻法で戦えば人間に勝ち目はないが、だいたい温厚ないきもの。

 獣の血を持つ分、本能と獣の習性にだいぶ強く縛られている。

 そこを上手くつければ人間でもいちころ。

 

お話としては財産と爵位の継承権を持っている女の子が誘拐されて、ミネコが救出!

みたいな定番のお話を考えていた気がします。

放置していた期間が長いので、どんな構想だったのか細部が曖昧ですが……

滅んだ猫獣人王国の尊い血筋特権で普通の猫に命令権を持ってる設定だったので、そこらへんを絡めて誘拐されたお嬢様を見つけ出したりする予定だったような。


ちなみにミネコの名前は『美猫』と表記。

パパンは甲冑の上からふっさりした品の良い猫頭を生やしたようなビジュアル。

ママンは肉球スタンプみたいな跡が無尽に発生する猫パンチ的な技が決め技っていう妙な設定があります。その肉球痕にちなんで、『梅』モチーフがシンボル扱いになっていたり。

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