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小林晴幸のネタ放流場  作者: 小林晴幸
ネタの放流場
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囚われエルフの破壊工作

なんか一年くらい前に書き留めていたネタを発掘しました。

いきなり召喚されてじわじわ嫌がらせと言う名の復讐に走るお姉さんのお話?


 大学の卒業も目前に迫った1月のある日。

 死ぬような思いで徹夜を重ね、ふらふらになりながら卒論を書き上げた。

 大学に提出した帰り、出来はともかくとにかくやり遂げたんだと達成感から謎の無敵の全能感。

 私は自分へのご褒美に素敵な肉体美溢れる写真集をはじめとした趣味のアレコレと、とにかくパソコンに向かい続けなければならないという疲労から何度も救ってくれた出来た愛犬へのご褒美を買い込み、ほとんど千鳥足で歩いていた。

 その、最中。


 かみなり。


 そうとしか思えないナニかが、私の体を貫いた。




 気が付いた時には、私がいたのは別の場所。

 見たこともない、石造りの牢屋。

 待って、徹夜のテンションでもこの超展開は有り得ない。

 混乱する私に声をかけたのは、牢の外から私を見下ろす何人かの不審者。

 は? 召喚に成功した? 意味が分からない。

 私がエルフ? 更に意味が分からない。

 エルフってお前らの事じゃないのかよ。あんたらの方が耳尖ってんじゃん。

 昔懐かしアニメの妖怪●間並みに尖ったお耳をお持ちのオッサンたちが言うことには、私は奴らに「この世界では滅んだ伝説の妖精族(エルフ)」として召喚された……と。

 どうやらこの世界のエルフは耳が丸いらしい。いや、どうも違う言語が何らかの方法で同時通訳されて互いに伝わっているらしいので、私の脳内でエルフに該当する別のイキモノのことを言っているのかもしれないが。

 徹夜明け、卒論提出帰りの達成感も、それに伴う全能感も既に全部吹っ飛んだ。

 ただただ残されたのは、自分の身に起きた信じられない出来事への拒絶勘と惑乱のみ。

 私はぐすぐすと泣きながら、家に帰りたい、両親に会いたいと訴えた。

 どうやら彼らの目に、私は実年齢より幼く見えるようなのでイケると思ったんだけど。

 私を見下ろす男たちの眼差しが、冷たい事冷たい事。

 気持ちの悪い猫撫で声で、目的があって召喚した、私にやらせたいことが上手くできれば最終的には家に帰してやろう、なんて言うんだが。

 人間観察がそこまで下手なつもりも、鈍いつもりもない。

 私は思った。

 ――あ、これ家に帰れないパターンだ。

 すとんと、納得したくない出来事が胸に落ちる。

 そうしたら腹が決まったというんだろうか、心に妙な凪が生まれた。


 だったらやることは一つだよ、決まっている。

 復讐だ。


 ――とはいってもこちとら無力な小娘。真っ向から逆らったら折檻されるか最悪殺されるってことは状況判断が甘い人間だろうと予想は出来るというもので。

 何しろ異世界から人間を一人拉致できる奴らだ。

 その人間が二人になるも、三人になるも簡単なんじゃないだろうか?

 だって既に、私をここに拉致ってるんだから。

 つまり、最悪やろうと思えば私の代わりを用意できるだろうと想定して。

 生意気ばかりしていると、やっぱり殺されるよね――そう思った次第で。

 ここは恭順のふりで、殊勝に振る舞うのが正解だと思う。そうすれば、あいつらだって私を甘く見ると思うから……間違っても、反抗的な内面は気付かれちゃいけない。

 そうして、素直に従うふりをして。

 こんな奴、異世界から召喚するんじゃなかったって後悔させてやる。

 ……地味で陰険で、怒るに怒れない、わざとじゃなさそうに見える嫌がらせの数々で!

 蛇に例えられる女の執念深さと陰湿さを見せてやる!




 エルフ扱いでこの世界に召喚されて、5日。

 素直に大人しくしていたことが功を奏したのか、劣悪な環境の牢屋から出してもらえた。

 どうやら私が従順な性質と判断されたらしく、無理やり暴力的に言うことを聞かせるのではなく懐柔方面に方針が定まったらしい。まあ、嫌々従わせるより、可愛がって自分から率先して動くように仕向ける方が確かにやりやすいだろうね。相手が本当に素直でおとなしい良い子なら。

 懐柔作戦の一環でそこそこ良い部屋らしい場所に移された私に、私の移動に付き添っていた男が言う。

 伝説のエルフは魔法の道具を作る術に長けた種族だったという。

 この世界に、現存する魔法の道具は少ない。そして新しい物は彼らの人種には作れない。

 作れないって決めつける前に努力したのかよって言いたくなったけど、ぐっと我慢!

 今は古い道具を遺跡から発掘するのが主な入手経路で、見つかった道具も中々都合よく欲しいモノが見つかる訳でもないし、そもそも競争率が激し過ぎて安定して手に入れるということが出来ない。

 そこで新しい魔法の道具を作らせる為、私をここに召喚したんだと。

 うん、私にそんなもの作れる訳ねーだろ。ばーか。うちの世界にそんなもんねぇっての。

 私はキテ●ツか、おい。

 そんな心情をいう訳にはいかないので、実年齢より幼く見えるらしい外見を駆使してみた。

 わたし、まだ小さいからつくりかた知らない……。

 それでもエルフならやれるだろう、とにかくまずは頑張ってみろ。

 そういって、男は私の頭を撫でると去っていった。扉の鍵は、きっちり施錠してな。

 外側からしか開閉できないらしい扉を見つつ思う。

 撫で方あからさまに下手だし義務感しかねえの丸わかりだよ。

 聡い子供なら一発で相手に好かれてないのわかるっての、やり方考えろ。ばーか。









 自分の前に召喚されて囚われていた日本人の覚書から警告と情報を受け取り、主人公は動き始める。

 どうやら元の世界の文字(言語問わず)は、この世界では刻んだものに文字通りの意味や能力を持たせることが出来るらしい。刻んだ人間のキャパを超えない範囲で。

 それを知った主人公は、模様に見えるよう工夫しながら刺繍を施した布製アイテムを作り始める。

 手始めに「脂肪燃焼促進、運動効果倍増、痩身効果激増」と刺したダイエット用品を作って奥様方を味方につけるのだ!



 

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