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小林晴幸のネタ放流場  作者: 小林晴幸
ネタの放流場
39/55

聖女が人間やめました。

なんかまた先日、こんなネタが浮かびまして。

書き出すと絶対に長くなるので、今回もここに放流です。

・おはなし

 人類が広く地に分布し、多くの土地を支配して数々の王国が栄枯盛衰を繰り返す世界。

 異種族の根絶を掲げ、領土拡大を正義の行いとして推し進める人間たちの国々。

 だが彼らの前には数百年周期で『魔王』が立ち塞がっては甚大な被害をもたらされる。

 自分達の更なる繁栄の為、そして魔王が領土として支配する広大な土地……特に豊富な魔石資源を有している『魔の樹海』を手に入れる為。

 様々な理由から、人間たちは『魔の樹海』に籠る魔王へと度々『勇者』を差し向けていた。(客観的にみるとどう考えても暗殺者)。

 人間たちが信奉する『教会』には、『聖女』と呼ばれる奇跡の代行者が存在する。

 『魔の樹海』は人間には有害な『瘴気』が蔓延する森。その悪影響から結界と浄化の能力で勇者たちを守る為、聖女は勇者が選ばれる度に魔王討伐の旅に同行していた。

 勇者一行が軍勢を率いるのではなく、少数精鋭になるのもその関係である。『魔の樹海』を抜ける道中、聖女の結界で覆うことの出来ない人員は連れて行き様がなかった。

 だが魔王さえ倒せば『魔の樹海』の瘴気は晴れると信じられており、人々は魔王を倒して『魔の樹海』を得ようと血気に逸っていた。


 今の聖女アナスタシアは、幼い頃に母を亡くし、教会に育てられた。 

 だが教会に恩義は感じておらず、むしろ自身と同じ聖女であった母を使い潰して死に追いやった元凶、一族を捕らえ隷属させている仇敵として憎しみを募らせていた。

 教会に嵌められた呪いの首輪に苦しめられながらも、監視の目の緩む旅の最中、逃亡の機会を狙っていた。

 そうして勇者たちが手強い『魔族』と戦っている最中、運よく自身の死を偽装して身を隠すことに成功。

 だが人間への失望も募りに募っており、教会に囲い込まれて世間を知らないこともあり、今後どうするべきか判断できずに足を止めてしまう。

 そんな彼女を導いたのは、勇者たちに襲撃してきた『魔族』……人間とは異なる進化を遂げた、異種族の人間たちであった。

 彼らの案内で、彼らに「仲間」と呼ばれ、『魔の樹海』の最深部へと向かうことになる。

 そこには想像していたような『魔王城』とかそういったものは存在せず……ただ日々を穏やかに営む、素朴な隠れ里が広がっていた。

 住民は全て、各国の上層部や教会が『魔族』と定めるところの異種族でったのだが。


 そうしてアナスタシアは知ることになる。

 魔王とは何か、人類の起源とは。

 自分達の一族もまた、他の異種族とは違う形でだが『教会』という人間の組織によって迫害されてきた『異種族』……人間の規定する『魔族』に該当するのだということを。

 今まで自分を『人間』だと思ってきた。

 だけど人間に失望しきっていたアナスタシアは決める。

 自分もまた『魔族』として、仲間に迎えてくれたこの集落の一員として。

 魔王討伐という名の侵略を止めようとしない人間たちに、全力で嫌がらせしきってやることを。




聖女アナスタシア

 職業:聖女

 教会の支配を受ける16歳の少女。聖女の一族、最後の娘。

 幼い頃に教会の横暴で母を失い、自らも自由を奪われて育ったことを恨みに思っている。

 魔王を倒そうと躍起になった教会が次々討伐に聖女を送り込んだため、彼女が最後の一人である。

 現在の教会は聖女の能力を有益としつつも然程重要視はしておらず、聖女を失っても代役を立てれば権威を保つに事足りると判断しているらしい。使い捨ての手駒扱いを隠さなくなってきている。

 また聖女の能力を行使するのも、教会に多額の寄進をした王侯貴族を相手にした場合や、教会の権威付けの為だけのパフォーマンスに限定されており、本当に困っている相手を救う為ではない。

 道具として生きることに嫌気がさしており、他の王国の代表者として魔王討伐に同行する『勇者』達の傲慢ぶりにも嫌悪感が募っていく一方。

 教会に捕らわれている一族(教会にとっては役立たずの男児たち)を盾に取られ、行動を制限する呪いの首輪によって教会に逆らえずにいる。

 だけど機会さえあれば自由を手に入れたいと幼い頃から渇望していた。

 そして――魔王討伐の旅の最中、死んだことにして姿を隠す好機を得る。

 逃亡したそんな彼女を導いたのは――人間とは別の生き物にしか見えない、異形の者達であった。


魔王ゼロ

 本名(?):ニンゲン試作型(プロトタイプ)A-00番

 職業:魔王/保父

 天地創造の頃から生きる原初の人間――現在の人類の始祖となったニンゲン試作型の一人。

 だが人類の始祖として採用された型番とは異なる為、現在の人類とは別種といえる。

 試作型の中でも神によって最初に作られた一体。一回目の作成であったこと、まだ神も加減を掴んでいなかった等の理由により、人間の始祖とするには強力に作られ過ぎたらしい。このまま始祖にしては、末裔が強くなり過ぎて世界の生態系を確実に破壊するという理由で人類の始祖には採用されなかった。

 しかし最初の一体だった為に神も愛着があり、強過ぎるなら強過ぎるで使い道があると廃棄を免れる。

 生物の多様性を貴ぶ神は、人類が増えていくに従い、明確な違いを持つ複数の種に分かれることを推測。その結果、より違いの明確な多種への攻撃行動に移る者達が現れることを予想。その攻撃行動の行き過ぎや世界への悪影響を危惧し、人類が道を誤った時の抑止力となるよう使命を与えた。

 使命を行使する必要があれば世界の調和を保つ為に人類の前に立ちふさがり、行動を諫める、それでも足りなければ増えすぎた種を淘汰する役割を持つ。

 だが使命を行使する必要性が無い時は至ってのんびりのほほんと平和に暮らしている。

 使命の一環として多種に弾圧されるくらいに個性的な特性を持ってしまった人類種を匿っている。

 人類が多種への攻撃が無為のものと悟るまで――精神レベルが後5段階くらい高尚なものに進化するまでは己の役割を必要と考えており、人類が無用な争いを捨てられるレベルに進化を遂げれば役目を終えたものとして永い眠りにつくつもりでいる。

 人類の直接の始祖に選ばれなかった為、性別を与えられておらず中性的な見た目をしている。

 しかし女性的な細やかさがなく、大雑把で豪快なところがあるので周囲からは男性に分類されている。


魔王の四天王 (ただの防衛意識が高い『魔の樹海』の隠れ里住民)

ブラッド(♂)

 種族:人狼

 職業:画家

 性格:のんびり穏やかな天然さん。丸いモノに固執している。

 そろそろお嫁さん欲しいなぁと本人は思っているが、のんびりしすぎて婚期を逃している。

オーギュスト(♂)

 種族:吸血鬼

 職業:大工(建築家ではなく、大工)

 性格:プロ意識の高い完璧主義者。義理人情に厚い。

 お節介な気質が高まり、各ご家庭で夫婦喧嘩の度に仲裁に呼ばれている。

カルダモン(♂)

 種族:夢魔

 職業:(きこり)

 性格:みんなの親分。喧嘩っ早いが面倒見の良さで慕われている。

 親分(おやびん)と呼んで慕ってくれる子分が何人もいる。

ハルヴァー(♀)

 種族:ミノタウロス

 職業:花屋

 性格:花とリボンを愛する乙女。気弱だけど優しく母性が強い。

 将来の夢はお嫁さん。ウエディングケーキは手作りしたい派。


聖女の一族

 人間とは見た目に差異はないが、人間にはない特異な能力を持つ『異種族』。

 母から娘へと母系遺伝で代々浄化・結界・再生の能力を受け継ぐ一族。

 その能力に目を付けた教会によって何百年も囲い込まれてきた。

 能力の特異性、希少性を独占する為に回収できなかった一族の者は滅ぼされたという。

 一族に生まれた者は幼少時に『首輪』と呼ばれる、一見してチョーカーのような呪具を付けられ、言動を制限されている。教会の祭服は首を覆い隠すデザインなので外見からは呪われているとはわからない。

 一族の母から生まれた男児は結界能力か浄化能力のどちらかを、女児は三つの能力を三つとも強く受け継ぐ。その為、女に生まれた者は教会の権威を強める道具として利用される。

 長じた後には教会から高額で『聖女の婿』という立場を買った者と娶せられ、出産を強要される。

 無事に『跡継ぎ』たる女児を何人か授かった後は用済みとばかりに酷使され、最後の最後まで教会の意向に振り回されて命を落とす。その死因のほとんどが能力の酷使による魔力の急激な枯渇、あるいは過労死である。

 近年は『魔の樹海』奥に発見された資源豊かな未開の地を開拓する為、その障害として立ちはだかる魔王討伐に駆り出されて命を落とす例が多い。だが教会は『新天地』開拓後の利権を確かなものとするため、聖女の派遣を止めようとしない。


聖女

 聖女の実態を知らず、もっと華やかで権威に満ちたものだと思い込んだ各国の王侯貴族から、年頃の子女を箔付けやら諸々の理由で「次の聖女に是非」と推す声がある。

 特異な能力を必要とするとは思っておらず、そういう声を上げる者達は聖女に選ばれる者は簡単な白魔法が使えれば面目が立つと思っているようだ。だが聖女の魔法と一般に知られる白魔法は別物なのだが。

 自分の娘を次の聖女に選んでもらおうと、近年寄進という名の賄賂がたくさん寄せられている。

 その旨味を加味した教会上層部はその能力の希少さと重要性を忘れた本物の聖女達よりも、簡単な白魔法が使える程度の王侯貴族の娘達を聖女にすることで得られる富の方を選んだ。

 最近の聖女使い潰しはそういう意味もあり、本物の聖女を排した後、お飾りであり金蔓にもなる「新しい聖女」を迎えるつもりでいるらしい。


聖女の能力と白魔法

 聖女の能力は結界・浄化・再生の三種類。

 それはまさに奇跡と呼ぶべきものなのだが、本当に奇跡を必要とする事態に聖女が派遣される事例が減っている(というかほぼ無くなってきている)為、教会はその能力の真価を忘れつつある。

 金にならないと判断した事態には派遣せず、王侯貴族のご機嫌取りや人気取り、広告塔としてばかり酷使している為である。あと成功する見込みのない魔王討伐。

 それというのも聖女の能力(聖魔法)と似ていて、素人には違いのよくわからない「白魔法」という系統の能力が世界に広く普及している為である。

 本来、比較検証する機会さえあれば二つの違いは明らかなのだが、聖女の能力が教会によって実質有料となった昨今、専門家によって比較される機会がないので「同じモノ」という勘違いは広まるばかり。

 教会でさえ、聖女の力は「遺伝的に威力が強力なだけの白魔法」だと今は思っているようだ。


 怪我を治す回復魔法一つをとっても、聖女の魔法と白魔法は多くが異なっている。

 白魔法の回復は「治癒能力増進」。被験者の治癒能力を一時的に高め、早い回復を促すというもの。

 だが本人の治癒能力と体力に無理をさせる形となるので、回復させるにも限界がある。更に回復直後は被験者本人の大幅な体力消費による怠さ、損なった肉体を補う為の急激な空腹などの症状が出る。

 そして病気の場合は、病気の源になっているアレコレを活性化させてしまい悪化する可能性が高いので回復できない。

 聖女の能力による「再生」は、「本来のあるべき姿に戻す」というもの。ただの回復魔法だと思われているが、その能力が効く対象は実は生物に限るものではない。

 回復させるにしても、「あるべき姿に戻す奇跡」なので、治しているのではなく「時間を戻している」のに近い。被験者の体力消耗を心配することなく元気にしてあげることが出来る。また、白魔法では対応できない病気や身体の欠損部位にも有効。

 聖女一族の者は自分の能力の事なので何となく出来る範囲を察していたが、敢えてわざわざ教会に申告して役に立ってやろうとは欠片も思っていないので、自分達の能力をなるべく白魔法の可能範囲を逸脱しないよう偽装している節がある。そして偽装している内に本人達も「自分の能力は白魔法の強化版」だと思い込んでしまったようだ。


 聖女の力は聖女にとって生まれつき本能で使えるノーリスクの奇跡だったのだが、「白魔法だろう」という誤解によって近年は幼少時に白魔法の勉強を叩きこまれ、刷り込みによって本来必要としない魔力を奇跡の行使に合わせて消費するようになった。「魔力が必要」という思い込みを捨てることが出来れば、聖女は魔力や体力の消費無しに奇跡を起こすことが出来る。


ニンゲン試作型

 天地創造の末期、神が人類の始祖とする目的で複数生み出した存在。

 それぞれ人類の始祖として大きな可能性を秘めていた。全部で31体存在したという。

 最終的には神が人類の始祖として最も相応しいと判断した2体が現行人類の直接の祖となっている。

 始祖に選ばれた2体には性別が与えられ、それぞれ最初の父と母になった。

 それ以外の試作型は性別を持たず、00番を残して神が機能停止させた。

 性能としては00番は詰め込み過ぎ、30番は尖り過ぎだったとか。


『魔王城』

 木造平屋建て、築450年。

 別にお城という程に大きくもないし、住民は魔王一人。

 日中はそれぞれの仕事でお忙しい各ご家庭から手のかかるお子さんたちを預かり、魔王が子守に専念している――実質、保育所である。

 元々はもっと小さな家だったらしいが、魔王が子守を引き受けてくれるようになったので大きめに立て直されたらしい。450年前に。

 隠れ里で生まれ育った魔族さん達は漏れなくこの家で魔王に子守されていた記憶がある為、村人たちにとっても愛着のある建物である。

 託児所兼、村長(魔王)さん家ということで村一番の大きさではあるらしい。

 寄合や会議などがあれば会場になる。宴会の時も会場になる。

 あと思春期だったり反抗期だったり家族と喧嘩したりという理由でプチ家出したお子さん達の家出先にチョイスされる率が高い。それと夫婦喧嘩で家を追い出されたお父さんたちの避難所になる率も高い。

 のほほんとしていて本人は物静かだが、周囲が賑やかな環境は大好きという魔王さんにもご満足の住環境である。

 女の子一人で隠れ里にきたアナスタシアは、暫く魔王城に居候することとなる。


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