大根畑で聖剣が
こちらは去年の11月頃に書いて放置していたネタ。
お話の終着点が盛大に行方不明。
取敢えず大根畑で聖なる剣が採れたら……?という設定で何かを書いてみたかった模様。
「お、落ち着け。落ち着け、俺……! これは何かの間違い。そう、きっと間違いだ!」
「きゅーん……」
「この場所の土を前に耕した時はこんなもん埋まってなかった気がするが……気のせいだな、そうだ気のせいだ! そう、これは間違いだから。俺が手に取ったことなんて間違い以外の何物でもない」
「きゅぅん」
「間違いだったら、正さなきゃだよな。な、そうだろオランジュ」
「わん!」
「そうと決まったら早速――埋め戻さなきゃな!」
「わぅ……」
俺は愛用のシャb……杖を手に掴み、さっきまでこのやたらと神々しく聖なる光を放つピッカピカの剣を埋める作業に取り掛かる。剣と同じ深さの穴を掘り、剣をずぼっと差し入れて。
そしてシャベr……杖で、土をかけようとして。
「う、うわぁ!」
いきなり剣が光ったぁ!?
そのままぎゅんっと音を立て、凄い速度で俺の手元に戻って来る聖剣。
今この剣、自分で勝手に空飛んでたんですけど!?
どうしよう。放り出しても即座に戻って来るとか、そんじょそこらの忠犬以上の忠誠心だ。
まあ、俺の育てたオランジュ程じゃないけどな……!
それは、ある日差しの柔らかな休日の事。
所属する学校の裏手、学校所有の森の際。
あまり人の近寄らない界隈に俺が勝手に作った大根畑で。
ここ数日の演習で手入れがおざなりになっていたから、今日は畑仕事に精を出すかと朝から自主的に畑いじりをしていた。
そろそろ大根は収穫の時期かな、なんて。
呑気なことを考えて、試しに一本掘ってみることにして。
そうしたら。
大根畑で聖剣が――採れた。
わあ、歴史の教科書に載ってた英雄の剣にそっくり……ってそのものだよ、こん畜生。
手塩にかけて育てた狼が、此処は掘るなと「わんわん」吠えて止めるのを適当にいなして掘ってみれば……聖剣だ。
俺は大いに困惑している。
え? なに? 今更俺に剣を……この聖剣を持って戦えとか言う気?
魔術師(候補)の、俺に?
この世に魔力を持って生まれて、十七年。
魔力を持って生まれた者は問答無用で魔術師の道を進ませられる、この国で。
今更魔術師以外の道を示唆されても、困るとしか言えない。
例え俺が――未だ正式な認可を貰えない魔術師候補生でも。
他の候補生に「万年候補生」と呼ばれる身であったとしても。
「落ち着こう。落ち着いて考えるんだ、俺。今更剣持って戦うとか冗談じゃないぞ」
「わんわん!」
「そう、落ち着く為には……深呼吸! ………………あれ? 深呼吸ってどうやるんだったっけ?」
「わふ……」
「オランジュ、俺の代わりに深呼吸をしてくれ!」
「がぶっ」
「うひゃっ!? オランジュ、それは深呼吸じゃなくって甘噛みだ!」
主人公 イデア・ロギー 17歳 男
魔力操作に限定すれば屈指の能力をほぼ独学で身に着けるも、肝心の魔力が一般的な魔術師の平均を大きく下回る量しか持っていない。
そもそも少量しかない魔力を活かす為に魔力操作の腕を磨いたのだが、その努力を以てしても平凡な魔術師レベルの魔法しか使えずにいる。
よほどの無理を必要とする事態でもなければ他の魔術師と同程度の働きは出来るが、書面に書かれる数値上の情報は変わらない為、魔術師候補生や騎士候補生には劣等生扱いを受けている。
お陰でコンビを組んでくれる騎士候補生がおらず、学園の規則上卒業試験に臨めなくて腐っている。
杖と言い張っている物体は、どう見てもシャベル。一番手に馴染むのがそれらしい。
貧しい寒村の育ちで、勤勉で努力家。しかし「何もしなければ餓える。それぐらいなら何かをして糧を得よ」という教訓を骨身に叩きこまれる育ちだったせいで無駄にアグレッシブ。その性根が自分を劣等生だと笑う者達への反骨精神となって緻密な魔力操作の術を得るに至ったともいえる。
主人公の相棒 オランジュ・レモンシード 2歳 雄
赤ちゃんの頃に拾われて以来、主人公に育てられた狼。
やたら人間臭くて付き合いが良い。そして主人思い。
人間との生活に合わせて、いつしか「わんわん」と鳴くようになった。
前衛担当がいない為に実地試験で不利ばかりを被っていた主人公の為、騎士候補生の代わりに前衛を担当してくれるくらいには主人思い。お陰で気付けば随分と強くなっていた。
人間の言葉を理解している節があるが、喋ることは出来ない。
故にツッコミはほぼ噛み付くという行為で表される。
(どの程度の強さで噛まれるかはオランジュの好感度による。主人公には甘え噛みしかしない。)
聖剣
かつて魔王を討ち取った伝説の剣。神々の作と伝えられる。
何をどうしてそうなったのか主人公をこの時代の主と定める。
本来なら運命に導かれ、十五歳になった主人公が聖剣を引き抜きに封印の地までやって来るはずだったのだが、待てど暮らせど主人公がやってこない。
滔々業を煮やしてわざわざ自分から引き抜かれにやって来たらしい。
主人公が大根畑で聖剣を引っこ抜く――その前夜、主人公の剣にして貰う為にいそいそと大根畑に自ら埋まった。
だが引っこ抜いて貰えたのに武器として使ってもらえず拗ねている。
主人公からは外付け魔力扱いされている。
西方の覇、レア女王国と北方の雄、ミディアム帝国。
仲の悪い二国に挟まれた王国、ウェルダン。
北と西から圧力と干渉を受けるウェルダン王国だが、状況が悪く転べばいつ戦争の舞台にされてもおかしくはない。
そんなウェルダン王国では、魔術師の育成に力を入れている。
この世界には生まれながらに魔力を持つ人間が存在し、ウェルダン王国ではそういった「魔術師の卵」を国で保護して育成する方針が法律で定まっていた。
……何のことはない。強力な力を持つ可能性のある人間の囲い込みと、他への流出防止である。
ウェルダン王国では生まれた赤子は誰であろうと魔力検査を受けることになっており、それが5歳まで何度も繰り返される。その間に魔力を保有していることが認められた子供は、国の育成機関に入れられることとなる。
幼少期の内に親元から引き離すことで子供たちの「帰る場所」を失くし、そして幼い内から教育することで国への反意を持たないようにし、むしろ国の為に働くことを名誉だと考えるように仕向ける。一種の洗脳教育。
国に逆らったり、逃亡したり、または魔力検査から零れて外で育ち、自力で魔術を使えるようになったはぐれ魔術師。そういった者達の「討伐」にもまだ幼さの残る魔術師候補生たちは駆り出される。
そうして、国の為に働かねば自分達もこうなるのだと見せつけられて、自由意志を知らぬ内に封じられていく。
主人公のイデアは、田舎の貧しい村で育った。
彼も魔力を生まれ持った一人だったが、その魔力保有量は国の作った魔力測定器の基準よりも随分と小さかった。お陰で検査から零れてしまい、自身でも魔力があることを知らずに8歳まで育つこととなる。
しかし8歳の時、食べ物を探しに入った秋の森で熊と遭遇。
普段であればそこまで慌てはしないのだが、熊だと思ったものは魔物だった。
命の危機を感じて、魔力の暴走を引き起こす。
その事件でイデアの魔力はそれまでに比べて爆発的に増え(しかしそれでも一般的な魔術師の平均以下)、国にも存在を知られるところとなる。
本人も無自覚だったことと、まだ教育の余地がある子供であったこと。
この二点を考慮されて処分対象ではなく保護対象と見做され、彼は強制的に魔術師の育成機関――「学園」へと入学させられた。
魔術師を育成する学園は騎士を育成する学園と隣接している。
両校は密に連携しており、実技的な試験や演習では度々魔術師候補生と騎士候補生を二人一組で組ませ、行動させていた。
それは物理的な攻撃手段しかない騎士と、魔術の発動にどうしても時間を要して物理的な攻撃手段に乏しい魔術師、双方を組ませることで隙を失くし、効果的な戦術を学ばせるためという名目だ。
だが側面では魔術師が国に反意を顕わにした時、騎士でも確実に討てるようにするため――その為に魔術師と組ませることでその弱点や、相対した時に有効な戦術を学ばせるという意味が暗に含められていた。
勿論、近接戦闘に弱いという自分達の弱点を補うだけの意味しかないと魔術師候補生たちには知らされていなかったが。
表向きの名目と、裏向きの意味。
騎士の学校は同時に対魔術師戦での実用に耐える戦士を育成する学校でもあった。
国の、魔術師に対する抑止力を育てる場である。
だからこそ、魔術師候補生と騎士候補生の行動は二人で一組。
成績も、二人で一組。
二つの学校の卒業試験は、両校の候補生それぞれ二人一組で挑むことが原則となっていた。
実技演習や卒業試験での相棒を選ぶ基準とする為、両校の生徒達はそれまでの成績やデータが公開されている。
求めれば、どんな生徒の情報も候補生たちは閲覧可能。
実際の人となりも勿論コンビを組む上では重要だが、何ができて何ができないのかなど、演習や試験を共に乗り越えるためには実際に組む相手も把握している必要があった。
そんな中で。
一般的な魔術師候補生を大きく下回る……平均以下の魔力しか持たないイデアには中々コンビを組んでくれる相手が現れなかった。
書類に記載された、数値上のデータしか重要視してくれなかったせいだ。
イデアの魔力操作の腕は、学園で最も優れている。
しかし肝心の魔力がなくてはどれだけ操作法に優れていようと宝の持ち腐れ。
誰もが、そうとしか思ってくれなかったのだ。
組んでくれる相手がいない為、イデアはいつも演習で不利な思いをしている。
そもそも参加すら危ぶまれ、教師に止められてしまう。
組む相手がいない以上、成績を落とさない為には単独で参加せねばならないのに。
前衛を担当してくれる騎士候補生がいない。
それは確かに、とても危険なことだったけれど。
そうして、成績面で不利を受け、卒業も出来ずに学校で農作業に励むイデアの前に聖剣が現れる。
厄介事を嫌って所持していることを隠匿に走るが、彼はいつまで聖剣を隠し通すことができるのだろうか……?
このお話を投稿後、何となく考えた内容は↓みたいな感じです。
・この後、主人公は勇者と発覚しないように聖剣を隠し抜こうと四苦八苦する模様。毎度誰かにバレそうになるも、ぎりぎりバレない感じで。
・夢の中に神様(創生神の秘書)の化身が現れて使命やら何やら色々お告げを複数回されるものの、目が覚めたら完全に夢を忘れるタイプだった為に神様が折角してくれたお告げを全て綺麗さっぱり忘れるという……
・この世界を創生した神様には双子神がおり、そちらはリアルジャ●アンみたいな性格の横暴女神。
創生神に対し、暗黒宇宙を支配する暗黒神と創生神の部下たちに呼ばれている。
元々完全同時発生の為、どちらが姉とか兄とかないのだが、女神の方が自分は弟よりも優秀で強いと根拠もなく主張しており姉神だと名乗っている。
※器用で優秀なのは創生神の方だが、昔から暗黒神は簡単な最後の仕上げだけになった段階で創生神の成果物を奪って自分のものにしてしまう悪癖があり、ほとんど創生神が作り上げた成果物の数々に対して暗黒神は本気で自分の功績だと自分で信じ込んでいる。そしていつも最後の仕上げだけで面倒な諸々の手順を創生神に押し付けているも同然の為、神としての修練を怠っている状態なのだが気付いていない。
なお、創生神の方は横暴な暗黒神に成果物を奪われる事に馴れきってしまった為、姉に半ば奪われた段階で諦める癖がついてしまい、こちらはこちらで問題がある。奪われたなら新しく作り直せば良いと思っており、実際に奪われた後で新しく作るのだが一度やった手順を繰り返すことで大概の場合、暗黒神に奪われた成果物より良い物になっているようだ。
そんな状況を創生神の部下たちはヤキモキしている。
・暗黒神が支配する暗黒宇宙も元は創生神が作り上げた世界だったが奪ったもの。簡単なはずの最後の仕上げで暗黒神がミスっており、生物の発生できないヤベェ世界になった。
そんな世界を修正する為の燃料として、主人公たちの棲む世界を暗黒神は狙っている。
流石に生命が芽生え、順調に発展している世界を暗黒神に奪われるのは許容できず、創生神とその配下一同で暗黒神の横暴に対抗している。結果、暗黒神は「じゃあ生命が死に絶えれば諦めもつくでしょ!」という方向に思考が行ってしまい、創生神の抵抗によって直接は手を下せない為、暗黒神の配下を主人公たちの世界へ送り込むことで世界を滅ぼさせようとしてくる。(魔王の正体=暗黒神の配下)
※実は創生神が修復すれば割とあっさり暗黒宇宙は再生して健全な世界に持ち直すことが出来る。
だが、自分は優秀で創生神は自分より劣っていると根拠もなく暗黒神が信じ切っている為、自分に出来ないことが創生神に出来る筈がないと決めつけて暗黒宇宙に手を加える権限を創生神に渡さない為、いつまでも暗黒宇宙は暗黒宇宙のままとなっている。
・主人公たちの世界にいる魔物や魔獣は創生神の配下(主に秘書女神)がデザインして生み出した生物。いつ暗黒神の配下(魔王)が世界を滅ぼしに来るとも限らないので、抵抗する力を人間の磨かせるため、過度に負荷をかけて成長を促す為に存在している。
・勇者の聖剣は近づくだけで魔王の持つ神の権能を封じる事が出来る為、魔王を倒せる唯一の武器である。




