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小林晴幸のネタ放流場  作者: 小林晴幸
ネタの放流場
27/55

保身に走ろう!勇者攻略

漁っていたら、また変なモノを見つけました。

ここからどうするつもりだったのか、思い出せないのでそのまま放流。



 

 その日、雷鳴轟く魔王の城で。

 城の主たる魔王の怒声が響き渡った。


「――ローラ、貴様!」


 私の名前はローラ。

 怖れ多くも光栄なことに? 我らが一族のボス、親愛なる魔王陛下の覚えめでたい女。

 ……なんか魔王陛下(おじうえ)にお名前を覚えてもらえたら、怖れ多いとか覚えめでたいとか言わないと駄目なんだってー。

 親戚なんだからお名前くらい覚えてもらっていておかしくないと思うんだけどなー。

 

 私は魔王陛下(おじうえ)の末の妹で、一族でも優れた召喚魔法の使い手(自分で戦うのが苦手だから、他の人に戦うの押し付ける為に必死で習得したって言ってたよ!)であるメリーフィア姫を母に持つ、一族の姫の端くれ。

 その母上と、母上が召喚した異界の魔性で、うちの国の将軍にまで上り詰めた父上との間に生まれた第一子。召喚された時点で父上は子孫繁栄を諦めていたそうなので、お陰で生まれた時からめちゃくちゃ可愛がられた。

 そもそも母上自身、一族の末の姫だったこともあって周囲に可愛がられており、母上の娘である私は一族中から甘く見てもらえている。

 父上のように軍に属して一族に貢献することもなく、母上のように内助の功で兄や夫を盛り立てることもなく。

 私は弾けんばかりの若々しい肉体をもてあまし、魔王の城で日々享楽の限りを尽くしている。

「ほーら姫様ぁ、焼き立てベリータルトですよぅ」

「タルト! タルト! わぁい、タルトー」

「あ、アンヌったら! 私が姫様に差し上げようと思っていたのに!」

「ずるいわ! あなた昨日のおやつ係だったでしょう!?」

「ほほほほほっ早いもの勝ちですわぁ! 姫様ぁ、もう一つお食べになりますかー?」

「良いの!? わぁい、アンヌだいすきー!」

「きぃぃっ アンヌ! あなた後で見てなさいよ!?」

「あ、明日こそは私が姫様のおやつ係を……!」

 一族の寵愛を良いことに、私は好き放題に気ままな振舞いを許されていた。

 奢り高ぶり、いつしか魔王陛下の嫡子……魔王子殿下までをも顎で使うほどに。

「ロビンスー! ボール、ボール投げてぇ!」

「仕方ないなぁローラは! おらぁ!」

「きゃーぁ! あはははは! ロビンス、もっかい! もーいっかい!」

「もう! これで最後だよ!? もうお昼寝の時間なんだからね! これが終わったらちゃんとお休みするんだよ」

「はぁーい! だからボール! ボールぅ!」

「それじゃ……ラストー!!」

「きゃーあはははははは!」






ローラ

 魔王の姪。召喚魔法の使い手であった魔王の末の妹と、召喚されて将軍にまで上り詰めた異界の魔狼(フェンリル)との間に生まれた姫。

 外見はどこからどう見ても、もふもふ、ふわふわ、ふぁっさふぁさの子狼である。(完全に父親似)

 愛らしい姿も相まって魔王城で親族を初めとした住民一同にこの上なく甘やかされ、可愛がられて遊んで暮らしていた。

 しかし悪戯が過ぎて魔王の玉座をふっ飛ばしてしまい、椅子に隠していたへそくりを駄目にされた魔王の怒りを買って放逐された。

 勇者を倒すまで戻って来るなと言われて渋々旅立つが、実は魔王の方は口でそう言いつつも三日くらい反省したら回収するつもりだった。


 だが、ローラの足は速かった。スタミナもあった。


 魔王が迎えに行く筈の三日を前に、勇者たちの元へ辿り着いてしまうくらいに。

 しかし生来甘やかされて育ったローラはチキンであった。へたれであった。

 肝心の勇者を前に、襲いかかる勇気が出ない。勝てる気もしない。哀れふかふかの尻尾は後ろ足の間に挟み込まれて震えている。

 ローラが攻撃するキッカケを作ろうと、周囲にいた魔物さん達が勇者に襲いかかるも……全て勇者一行に瞬殺されて返り討ち。

 それを見て、ますますビビるローラ。思わずきゅーんきゅーんと鼻から声が出てしまう。

 お陰で隠れ潜んでいるのが勇者一行にバレてしまった。


 外見は愛らしい子犬とさほど変わらないが、纏っている魔力から魔物であることは明らか。

 仲間達はまだ幼い内にローラを殺そうとするが………………勇者は、犬派だった。

 仲間達が止めるのも聞かず、ローラを抱きしめて自分が責任を持って世話をする、絶対に飼うといって譲らない勇者。

 脳裏には幼少時代、犬を飼いたいと切望していたのに気管の病気を患っていた妹の身体に良くないからと絶対に許してもらえなかった思い出があった。

 大人になって自分で責任を持てるようになったら、真っ先に犬を飼いたい……そう思っていた物の、働ける年齢になるや勇者として見出され、結局飼い犬との出会いは先送りにされた。

 だからこそ、勇者は思う。この愛らしい犬は自分の運命の愛犬! この運命の出会いをふいにしてはならないと。

 ローラはローラで自分に殺気を向ける勇者の仲間達に、自分の命はローラを抱きしめて離さない勇者が握っていることを嫌でも自覚させられ、殺されては堪らないと懸命に勇者にすり寄って甘え鳴きして媚を売る。打算と保身以外、頭にはなかった。

 そして仲間の制止を振り切って始まる、ローラを完全に犬扱いしている勇者と、自分が知性を持った魔族の姫であることをひた隠しにして犬のふりに徹するローラのナニかおかしい主従生活(ペットライフ)





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