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小林晴幸のネタ放流場  作者: 小林晴幸
ネタの放流場
17/55

勇者の運命が反転しました。恋愛的な意味で。

 こちら、連載で書いている「ここは人類最前線7」にいただいた感想が元になっています。

 2015年の一月のことです。

 そちらの登場人物『勇者様』の人物紹介欄で、間違えて「ハーレム」を「逆ハーレム」って書いてしまったんですよね……そのご指摘を感想欄でいただいてしまい、指摘をして下さった方にはご心配をおかけしました。

 ……が、『逆ハーレムの運命を持つ勇者(男)』とはどんなものや、と。

 考えるまでもなく勇者が可哀想な状況がネタとして気になってしまいまして。

 小林は腐女子ではないのですが……なんとなく、こんなかな?と書き始め……

 …………すぐに、勇者があまりにも可哀想になって手を止めました。


 これはそんなネタの放流です。

 既に書いてしまった部分だけでも、出してみることにしました。

 あくまでネタとして気になっただけなのですが、受け付けないよ!という方はスルーでお願いします。

 それは、運命が覆った瞬間だった。


 何と言うことのない、特に名産があるわけでもない。

 そんな平凡な村の片隅に、若い夫婦が一組。

 奥さんはとても良い人なのだけれど、旦那さんの行状がちょっと酷すぎた。

 一部にはとても人気が有るのだけれど。

 それでも眉をひそめて咎めだてる人の方が多く、夫婦の家は村の片隅だった。

 生まれ育った村の中。

 奥さんはとても心の寒い毎日を送っていた。

 旦那のことは嫌いじゃない。

 むしろ選んで結婚した幼馴染だ。愛している。

 それでも今の彼女にとって、たった一つの心の支えは夫ではなく子供だった。

 まっ白いおくるみに包まれた、一ヶ月ほど前に生まれたばかりの息子。

 可愛い盛りの愛らしい赤ちゃん。

 顔ばかり優秀な夫に似てしまった顔立ちに、若干の不安が募る。

 今日も夫は夜が遅い。中々帰ってこない。

 生まれたばかりで世話の大変な息子をあやすのは、今日も奥さんひとり。

 わかっていたはずだ。

 結婚する前から何となく覚悟はしていた。

 それでも実際に直面すると心が辛くて、奥さんは赤ちゃんの頬を撫でながら溜息をついた。


 そんな、夜のこと。


 若夫婦の家の戸を、こんこんと叩く人がいた。

 あら誰かしら、と。

 奥さんはその気になれば蹴破れそうな木の扉越しに声をかける。

「どちら様ですか?」

 田舎は人の心の距離もかなり遠慮がない。

 わざわざノックなんてお行儀の良いことをしてくる者は皆無だ。

 だから、同じ村の人間とは思えなかった。

 案の定、奥さんの声に返ってきたのは聞き知れぬ声。

「済みませんが、一夜の宿をお借りできませんかなぁ……」

「あら、うちは宿屋じゃありませんよ」

「わし、不審人物じゃからて泊めてもらえんかった」

「まあ宿泊拒否?」

 一体どんな怪しい風体をしているのだろうか。

 奥さんの好奇心がちょっとくすぐられた。

「今夜は暴風雪じゃて……済みませんが雨風をしのぐだけでも」

「暴風雪?」

 今夜はからっと晴れていると思ったのだが……

「わし、魔法使いじゃ。嘘はいわん」

「まー……魔法使いさん」

 いきなりファンタスティックな非日常がやってきました。

 しかし奥さんの常識的には魔法使いの扱いはぬらりひょん程度のもの。

 丁重に扱ったら良い事あるかも、と。

 奥さんは家の扉を空けた。

 どうせ今夜の天気が荒れるなら、きっと夫は帰ってこないだろう。


 扉を開けた先には、お星様模様のローブを纏った魔法使いがいた。

 お揃いのとんがり帽子の隙間から、猫耳がチラリ。


 獣人の魔法使いさんなんですね、わかります。

 一体誰得かしらと思いながらも、奥さんは魔法使いを家に入れた。

 粗末に扱ったら祟られるかしら?

 何しろ魔法使いといえば、気に入らない相手に呪いをかけるもの。

 扱いには気をつけようと、お客様用の食器を引っ張り出す。

 田舎では日の目を見ないアイテムだが、結婚の期に買っておいて良かった。

 奥さんは体が冷えているらしい老体に温かいスープを振舞った。

 どうせ今夜、夫は帰ってきそうにない。

 夫の分の夕飯が魔法使いの腹に消えても、文句は言われないだろう。



 一時間後。

 そこには陽気に浮かれ酒盛りする奥さんと魔法使いの姿があった。

 取って置きのワインは何本も空になり、粗末な木のテーブルに転がっている。

 ああ、こんなに気分が良いのは何時ぶりかしら?

 奥さんは酔いどれながら、人の好い魔法使いに夫の愚痴をたっぷりと聞かせる。

「もうこうなったら、私の希望は坊やだけ……あの子の成長だけが唯一の楽しみよ」

「おうおう、確かに可愛らしい坊やじゃて。将来有望そうな顔をしておるなぁ」

「男なんて……男なんて……っ」

「どれどれ、こりゃ一晩のお礼に坊やの運命を見てやるかのぅ」

「まあ! 魔法使いさんが坊やを見て下さるの? あの子の人生は輝いているかしら?」

「ふぉっふぉっふぉ! こんなに良くしてくださったとあっては、のう。

少々運が悪い程度じゃったら、ワシが悪いもんも良くなるように魔法を贈って差し上げよう」

「魔法使いさん、素敵!」

 どれどれ、そう言いながら魔法使いはすやすやと眠る赤ちゃんの顔を覗き込み……

「………………」

「………………」

「…………………………」

「……あの、魔法使いさん?」

 何故か、顔を強張らせて黙り込んだ。

 未だ酔いの残る赤ら顔が、よく見ると微かに引き攣っている。

 奥さんは不安そうな顔で、魔法使いの腕を揺さぶった。

 躊躇いがちに、魔法使いが言う。

「坊やは……なんというか、数奇な運命に翻弄される人生を歩みそうじゃ」

「具体的には、どんな運命かしら……?」

 なんとなく、悪い予感が奥さんの第六感を刺激する。

 魔法使いはさりげなく、視線をそらしてこう言った。


「奥さんの可愛い坊やには……『ハーレム野郎』の運命が…………」


「そんな、なんてことなの!」

 言い難そうに告げられた言葉が、奥さんの胸をえぐる。

 酒の力で涙脆くなっていた奥さんは、えぐえぐとテーブルに縋りついた。

 夫との結婚生活で、忍耐は他人よりも強い自信があった。

 しかし酒の力は、そんな奥さんの素直な心を引きずり出す。

 自棄酒よろしく、奥さんは涙ながらに更に杯を進めた。

 おそらく、それが良くなかった。

 酒を過ごしては、感情に抑制が効かなくなる。

 理性は弱まり、思考能力も低下する。

 過量の酒を呑み下し、常の理性や思考を失った奥さんと魔法使い。

 二人は酔っぱらった頭で、とんでもない道を選んでしまったのだ。

 それが、坊やにとって最大の苦難と危険を招くことになろうとは……

 冷静な頭が残っていれば、考えずともわかったはずなのに。


 魔法使いは思いついて、言った。

 そうじゃ、坊やの運命を反転させてしまおうと。

 そうすればハーレム野郎になることはあるまいと。

 奥さんが魔法使いの楽観的な言葉に飛びついてしまったのは……

 酒を過ごした為か、夫の行状による精神的疲労の為か。

 それは、誰にもわからなかった。







若夫婦・嫁

 夫のハーレム体質に悩まされる若妻。ハーレム野郎が妻に選ぶだけあってかなりレベルの高い女性なのだが、何分田舎の生まれ育ちなことと、夫の周囲にハイスペックな女性が多かったので自覚はない。

 夫の他にも彼女を狙っている男は多かったが、全て夫が黙らせてきた。

 恐らく一度でも都会に出ていれば、見初めた富豪か貴族に攫われていただろう。 

 夫との生活は訴えれば勝てそうなものだが、夫の愛を理解しているので離婚しない。

 夫の行動を尊重し、溜息をつきながらも今日も帰りの遅い夫を待っている。

 夫の知らないところで魔法使いと酒盛り夜明かししたことが気に入らなかったらしい夫に軟禁され、一年後に可愛らしい女の赤ちゃんを授かる。


若夫婦・夫

 何故か田舎に顕現してしまったハーレム体質(不本意)の男。結構いやかなりヘタレ。

 幼い頃から嫁一筋なのだが、体質の為に本人も大いに悩まされてきた。(ラブコメ的に)

 かなりの苦労をして初恋の君を嫁にゲット。体質さえなければ一途な男である。

 結婚後も体質は改善されず、度々彼に思いを寄せるハーレム要員のハイスペック美女共が新婚家庭に押し寄せる。妻の存在など無視して夫に迫るという修羅場に満ちた新婚生活。

 妻が妊娠後もそれは続き、妻がノイローゼになりかけた。

 そのことで大いに悩んだ夫は、断腸の思いで夜遊びを繰り返すようになる。

 取敢えずハーレム要員たちも夫が構ってくれれば満足らしい。

 浮気をしたくない夫の妥協案として、連夜酒場で遅くまで女の子たちとドンちゃん騒ぎ。

 本当は早く帰って嫁の手料理に舌鼓を打ちたくて堪らない。


勇者

 ハーレム体質の夫に悩む母と魔法使いの親切という凶悪タッグにより望外の運命を強いられた不憫な人。

 本来はハーレム勇者の運命を歩むはずだったが、呪いにより『逆ハーレム』の運命に。

 幼少期は常に周囲にお友達(野郎限定)がいたので平和に楽しく遊んでいた。

 しかし周囲が思春期に足を踏み入れたあたりから何かが妖しくなっていく……。

 本人は一切気付かずに女の子が気になる年頃を迎えるが、周囲(野郎)のガードが厚くて身内以外の女の子とお近づきになる事も無く過ごす。

 これはやばいと直感した母からある日、開いてはいけない扉の先にある禁断の知識に関する教育を受けさせられる(強制)。

 人間不信になりかけながらも、そんなこと実際にあるはずが……と半信半疑に過ごしていた。

 過ごしていたが、友達(男限定)との距離は精神的・物理的に一歩離れたらしい。

 そんなある日、友達の中でもちょっと年が上の男の子に人気のない場所へ連れ込まれかけ……

 一応心配して目を光らせていた母のお陰で難を逃れるが、それがトラウマに。

 この日から、彼は『男性不信』で『男嫌い』という難病に陥った。

 しかも知らない内に村の有望な独身男性を軒並みノックアウトしていたらしく、女の子達からは怨嗟の目を向けられるようになっていた(実妹含む)。

 自分を狙う男どもから身を守るため、父(ハイスペック美女から貞操を守るために鍛えている)と母(ハイスペック美女からの嫌がらせ対策に格闘スキル高い)から毎日修行をつけてもらうように……。

 やがて神託が下り、彼は勇者となった。

 人類の半分に、不信の目を向けながら……。

 仲間としてついてきた幼馴染を筆頭に、野郎ばかりで固められた勇者パーティが最大の敵。

 魔法使いに会えることがあったなら、その顔を一発殴りたいもしくは呪いを解いてほしいと切望している。

 いつか可愛いお嫁さんと、野郎がいないところで暮らすことが夢。


魔法使い

 猫耳獣人で、魔法使いのお爺さん。人の好い好々爺で、実はかなりの大賢者。

 人の運命に干渉できるほどの大きな力を有するが、それ故に放浪を運命づけられている。

 一つ所に留まれば、その地に厄災しか招かないと知っている。

 しかし一晩留まっただけの場所でこんな災いを招いてしまったことは他にあるまい。

 この世の神秘を見通す賢者でありながら、坊やの苦労は見抜けなかったのか。

 既に数百年を放浪し続けており、実在は怪しいお伽噺の存在だと思われている。




 ちなみに野郎同士が恋愛的な意味で結ばれる予定はありません。

 あくまでネタなので、あまり重く考えないでいただけると幸いです。

 ただのネタの割に、勇者があまりに可哀想になっていまいましたがな……!

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