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不器用な俺。  作者: sprint
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第七話:沈黙の果てに・・・。

筒井が指差した先には・・・。




思わず呆然としてしまったジェットコースターがあった。

実のところ、俺は絶叫系のアトラクションが大の苦手だ。

翼も苦手だと聞いている。

先ほど賛成したのは筒井に言われたからであろう。

どうにかしてこの状況を避けたい。


「筒井? 昼飯食べてからにしないか?」

時計を見ると12時半。

ちょうどお昼時だ。


「あぁ〜。俺も腹減ってきたな。そうしないか? 綾香〜。」

いつの間にか名前で呼んでいる事に気がついたが指摘しないであげよう。

「う〜ん・・まぁ、いっかぁ。」


笹山も無言で頷く。

先ほどの恐怖がまだ拭いきれていないのか、未だに俺の手を握ったままだ。

それが幸か不幸かはわからないがとても体に悪い事は確かだ。

ずっと心臓はドキドキしたままだし、背中に変な汗を掻いている。


俺たちはとりあえず近くにあったフードコートへ向かう事にした。

適当に昼食を買うと空いている席へ腰を下ろす。


くだらない談笑をしながら盛り上がる。

さすがの笹山も恐怖を拭いきれたようだ。

そんな談笑をしながらあまり知らなかった筒井の事も徐々にわかってきた。


俺のイメージではいつも笹山の後ろにいる大人しい感じの子。

けど、それは部活に真剣に取り組んでいるだけで本当はすごく明るい。

むしろ笹山を引っ張っていくような感じらしい。

背は比較的小さくて、髪型はショート。

容姿はまぁまぁだが私服のセンスが良い。

翼が言うには大きくてつぶらな瞳で見つめられると死にそうになるとの事。

・・・溺愛するのもいい加減にしろと言いたい。


ちなみに笹山の私服がとても似合っていて可愛くみえたのは内緒だ。


昼食も食べ終わり、適度な休憩も終わった。

すると待ってましたと言わんばかりに筒井が言う。


「じゃ、ジェットコースター乗りましょ!」





複雑な気持ちだったがみんな行くと言う中、一人反対するのは・・・。

というより反対出来ない雰囲気になっていた。


嫌々ジェットコースターの乗り口まで行く。

笹山と筒井は絶叫系が大好きらしく、一番前に乗りこんだ。

俺たちはその後ろに乗らざるを得ない状況になってしまう。


安全装置を下ろし、コースターは出発する。

よくよく考えると昼を食べた後なんて余計に気持ち悪くなるじゃないか。

自分でも馬鹿な事をしたと思う。


なんて考えていてもあざ笑うかのようにコースターは頂点へと登っていく。

(あぁ・・ついにこの瞬間が・・)


頂点へたどり着いたと思った途端、急降下が始まる。

体が浮くかのようなフワッとした感覚に襲われる。

必死に声を出さないように堪えた。


が、しかしそんな努力もループに差し掛かると無情に消え去る事となる。

周りの世界が逆さまになり、頭から落ちてしまいそうになる。


歓喜の叫びか恐怖の叫びかはわからないが周りから幾度と無く叫び声が聞こえる。

前の二人はずーっと「キャー!」だとか「楽しい〜!」とか言っている。

これのどこが楽しいのだろうか・・・。


ループの先端に着くと多少スピードが落ちるがまたしても急降下。

思わず翼と叫んでしまった。


「うわーっ!!」


その後、5分間ほどコースターは走り続け、ようやく止まった。



もうこんな乗り物二度と乗りたくない!とつくづく思った。

が、そんな思いは女子二人には届くはずもなく。


この先二時間半ほど二人の好きな絶叫系に付き合わされる羽目になってしまったのだ。

彼女にデレデレの翼と断りきれない俺ではしょうがない。


本当はもう少しつき合わされそうだったのだがそれに拍車をかけたのは翼だった。

「なぁ、二人とも・・。もう少しで日が暮れ始めるぞ? そろそろ最後にして、最後くらい絶叫系以外にしないか・・?」

苦手な絶叫マシンに散々付き合わされた俺たちはまるで死んだ魚。


「そっかぁ。じゃあ、最後はやっぱアレでしょ!」

笹山と筒井がニコニコしながらパンフレットの地図を見る。




どうやら観覧車に乗りたいようだ。

これなら少しゆっくり出来そうだな、と俺たち二人はホッと安堵の息を漏らす。

すると女子二人が何かヒソヒソと話していた。


良く見ると筒井が何かを笹山にお願いしている。

それをしょうがないなぁ、と言わんばかりにOkする笹山を見ると筒井は大喜びしていた。



クタクタになりながら観覧車の乗り場まで行くと今度は翼が俺に小声で

「竜二、頼む! 俺と綾香で乗せてくれ! あいつ、観覧車に好きな人と乗るのが夢だったみたいで・・・。お願い!」


と言われた。

こんなとき、ついついいつもの悪い所が出てしまう。

ましてや親友の翼の頼みだ。

断りきれるわけがない。

「仕方ないなぁ。わかったよ。愛しの筒井さん達には何も言わなくていいのか?」

断らないかわりに少し嫌味っぽく言う。


「さっき二人で話していただろ? あれがそうだったみたいだから大丈夫!」


そうこうしている間に順番が来る。


先に翼たちが乗り込むと翼が俺に言う。

「頑張れよ!!」

つい、大声で反論したくなったがそのときにはもうゴンドラに乗って二人で手を振っていた。


軽く舌打ちをするとすぐに俺たちのゴンドラも来る。

二人で中に入り、丁度斜めになるように座ると係りの人がドアを閉めてくれた。



しばらく沈黙が続く。

何か話しかけなければ、と焦る俺だったが先に笹山が口を開いた。


「あの。今日は本当にありがとうございました!」

「あぁ、大丈夫大丈夫。楽しかったし。」

少し間を空けてからもう一度口を開く。


「後、ずっと手握ったままですみませんでした!!」

夕日で顔が赤くなっているのか恥ずかしいのかわからなかったが笹山の顔は真っ赤だった。


「あ・・。別にいいよ。お化け屋敷も結構楽しかったし・・」

俺も思わず顔が赤くなり、目を逸らしてしまう。

会話が続かない。

ゴンドラの中で二人きり。

さらに会話が続かないというのはとても気まずいものだ。

頭の中で色々と考えるがどれもパッとしないものばかり。


そんなもどかしい思いをしているとまた笹山に先を越されてしまった。












「せ、先輩。と、隣座ってもいいですか・・・?」












思わぬ言葉にたじろぐ。

とても頑張って発した言葉のように聞こえた。

だが俺には驚くことしか出来なかった。

「・・う、うん。いいよ。」

胸の高鳴りは最高潮になり、冷や汗もたくさん出てくる。

お化け屋敷以来、なんか積極的というか大胆と言うか・・・。



たまたま手を繋いでしまった時点で気絶してしまいそうだったのに・・・。

好きな人が自分の隣に。

ましてやこんな狭いゴンドラの中。

二人の距離なんて1mも無く、せいぜい3〜40cmくらいだろう。


本当に発狂してしまいそうだ。


必死に窓の外に映る綺麗な夕日とそれに照らされる街を見るがまったく気が紛れない。

「夕日、綺麗だな。」

この状況を打破するにはやはり会話しか無いと考え、無い頭をフルに使って考えた言葉だ。


「はい、とても綺麗ですよね。」

だよな、と言おうと思い少し振り返るとこの近距離で目が思いっきり合ってしまった。

慌てて顔を元の位置に戻し、また夕日に目を向ける。


そろそろゴンドラは頂点に達しそうだ。

また次の言葉を考えていたところ、今度は笹山がゆっくりと話し始める。




















「先輩は・・私のこと、嫌いなんですか・・・?」

















今までのどの言葉よりも大胆で衝撃的で。


俺が一度も見たことが無かったとても、とても悲しい目をしていた。


今にも泣き出してしまいそうな・・・俺が一番見たくなかった目。





それはゴンドラが丁度一番上に来た時の事だった・・・。






一気に二人の距離が縮まっちゃいました(笑)

こう見ると翼と綾香はかなりのバカップルですね^^;

毎度毎度ありきたりな内容で申し訳ありません(汗

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