表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不器用な俺。  作者: sprint
7/27

第六話:びっくりお化け屋敷

朝。俺は飛び起きた。

昨日、一昨日のように遅刻してはたまらない。


9時。駅までは大体15分くらいと見て平気だろう。

この時間なら余裕で間に合うな。


早めに朝の身支度を済ませる。

後は洋服、か。


自分のセンスにあまり自信が無かった。

派手なものは好きじゃないし。

笹山もいるんだし、どうせなら良く見られたい。

そう試行錯誤しながら選んだのだが。


黒系のジーンズに白のタートルネックのニット、その上に茶系の皮製ジャケット。

アクセサリーはあまり好きでは無いので、腕にブレスレットを二つしただけ。

他人から見たら極々普通の服装だと思うが変に目立つよりいいだろう。


最後に髪の毛を軽くチェック。

ワックスも好きではない。

俺は基本的にチャラチャラした服装が嫌いだ。

みんな揃ってそんな服装ばっかりするのが理解出来ない。

(寝癖は立ってないな。)


そう確認するといよいよ駅へと出発する。


歩いている間、何回も時計を確認した。

今度こそ遅刻したくなかったからだ。

危ないとは思っていたが・・。


そんな事をしているうちに駅へ着いた。

(10分前。大丈夫そうだな。)


エスカレーターに乗り、待ち合わせ場所であった券売機の前の柱へ行く。

昨日、寝ている時にメールが来て知らされたので少し忘れかけていた。

その柱の近くまで行くとすでに全員来ているではないか。

少し焦って小走りに皆のところへ急ぐ。


「今日は遅刻しなかったみたいだな。」

翼が時計を見ながら言う。

「ホントだ! 今日はよろしくお願いしま〜す♪」

女子二人が同じタイミングで言う。

「俺だって毎日遅刻はしないって。こちらこそよろしく!」

「じゃあ、出発しましょ?」

早く早く!とでも言いたいのだろうか笹山が嬉しそうに言う。


彼女の嬉しそうな笑顔にまたしても胸の鼓動が早くなるのを感じた。


切符を買い、電車に乗り込む。

今から行く遊園地は電車で約一時間ってとこだ。


それまでの間、俺たちは他愛無い話で盛り上がった。

勉強の事やら部活の事やら顧問の愚痴やら・・・。

迷惑にならないように小声で話すよう注意したりすると「保護者」みたいだと笑われてしまった。

そんなやり取りを楽しんでいるとすぐに目的地に着く。


いかにも「遊園地」らしい遊園地だ。

ループのある高くて長いジェットコースター。

ゆっくりと回りながら町を見下ろす観覧車。

おどろおどろしい雰囲気のお化け屋敷。


遊園地の定番であるアトラクションが目立つ。


久しぶりに来たためつい、圧倒されてしまう。

「先輩! 何してんですか? 置いてっちゃいますよ?」

「悪い悪い。って・・ちょっと待てよ!」


置いていかれると言われて本当に置いていかれるとは思わなかった。

こういう場で女子のハイテンションさには驚かされる。


「まずはこれでしょ!」

筒井が指差す。

「綾香好きだよねー。 さ、行きましょ!」


二人の視線の先にはさっきのお化け屋敷があった。

さっそく中に入ろうとすると翼が小声で耳打ちしてきた。


「竜二、ビビってカッコ悪いとこ見せるなよ?」

「うるせぇ! お前こそ!」

翼の顔を振り払うように退ける。


簡単なやり取りを交わしていると隣から急に話しかけられた。


「お客様、通路が大変狭くなっておりますのでご注意下さい」


血まみれの白衣を着たナースらしき係員。

中はどうやら「廃病院」という設定らしい。

入り口から入り、霊安室を目指すというつくりだそうだ。

基本的に一本道なので迷う事は無いとの事。

適当に頷くといよいよ中へと入る。




確かに通路が狭い。

俺と笹山を置いていってしまうかのように翼と筒井はどんどん進んでいく。

(そういえば翼もこういうの好きだったっけ・・・)


そんな事を思い出しているうちに中が暗かった事もあり二人を見失ってしまった。

と、いう事は・・・?






笹山と二人きり。


心臓がはちきれんばかりに脈打つ。


「あらら、二人とも行っちゃいましたね。ま、仲良しの二人はそっとしといて行きましょ♪」

暗くてよく見えなかったが満面の笑みを浮かべている気がした。


奥へ進むと笹山が何か踏みつけてしまったようだ。

慌てて下を見るとそれは真っ赤に染められた手。

作り物とはいえ、良く出来ている。


冷静に苦笑していた俺とは違い笹山はかなり驚いたようだ。


「きゃ!」

「なんだ、笹山は怖いの苦手か?」

「そんな事無いですよ!」

必死に否定するが顔に出ている。

本当は怖いのだろう。


俺も別の意味でドキドキしているが。


その手を後にし、さらに奥へ進む。

なぜか不自然な場所にロッカーが置いてある。

(はは〜。ここから飛び出してくるんだろうな。)


そう高をくくってロッカーの先へ進もうとする。

しかし、ロッカーからは何も出てこない。

その奥からゾンビらしき人が飛び出してきた。

これには俺も驚いた。

遊園地側の策略にまんまとはまってしまったのだ。


「うおっ!」

「きゃ〜!」

二人でゾンビの横を駆け抜けると病室のドアが描かれている通路に出た。

何気に「トリックアート」らしい。


「怖かった〜。 いきなり出てくるんだもん!」

この時、右手の違和感に気がつく。










(ん? 俺、何か持ってたっけ?)

ふと見てみるとなんとそこには笹山の左手が。

しかもがっちりと握られている。


(え?え?え? これっていいの?!)

心臓が破裂してしまいそうになる。

思いっきり叫んでしまいそうにもなった。

冷静な判断が出来ない。


「さ、さ、笹山? て、手・・・いいの?」

「えっ? ご、ごめんなさい!」


手に気づくとパッと離す。

薄暗い中お互いに顔を真っ赤にし、目を逸らす。

しばらくの間、そんな状態で奥へと進んでいると笹山が口を開いた。












「・・・怖いからやっぱり手、握ってても良いですか・・?」

「・・うん。」

思わぬ返答にまた心臓が破裂しそうになるが深く頷く。

向こうもかなり恥ずかしそうだ。


「じゃ、じゃあ行こうか?」

「は、はい。」

手を軽く握り合うとさらに奥へと進む。


もはやお化け屋敷の怖さよりも笹山と手を握って歩いている、という状況の方が怖い。


今度はたくさんの壊れたベッドが並ぶ、病室のような場所へ出た。

奥に行くにはここを突っ切らなければならない。

いかにも何か出そうな雰囲気だったので俺も笹山も歩く早さは早くなった。


と、そのとき。

壊れて誰もいないはずのベッドから何かが這い出してうめき声を上げている。


「きゃ〜!!!」


笹山がうめき声をかき消すほどの声を上げる。

とにかくここをダッシュで突っ切った。


普段、走りなれているはずの二人だったが息を切らしている。

病室をようやく抜けると更衣室のような所に出た。


・・・ロッカーがたくさんある。

ロッカーがトラウマになりそうだ。

ここも急いで突っ切ろうとする。



ガタガタガタッ!!




二つか三つ、ロッカーが動き出す。

俺が笹山の手を引き、ここを抜ける。


いったい霊安室にはいつになったら着くのだろうか。


そんな事を考えていると目の前には「霊安室」の文字が。

何も無いただの廊下だったので普通に歩く。


「ようやくゴールだな。」

「怖かった〜。」


そんな風に安心していた。

が、しかし。


トリックアートだと思っていたドアが一斉に開き、ゾンビが出てきた。

俺も笹山も思わず声を上げる。


「うわっ!」

「きゃ〜!!!」


早めに駆け抜けようと小走りに霊安室の前まで行くと首筋に冷たいものが。

定番のこんにゃくだ。

いつもなら笑って終わるがそんな余裕は二人には無い。


「きゃ〜! きゃ〜!!」


笹山が叫ぶ。

何かが腕に必死にしがみついてくる。

霊安室のドアを開けると明かりが眩しい。


まだ笹山は目を瞑っているようだ。

俺はずっとしがみ付かれている事に気がつかず、今になって慌てふためいた。


「ほ、ほら。もう外だぞ? つ、翼たちの所に行こう?」

お化け屋敷だけで死んでしまいそうだ。


「え? あっ・・! せ、先輩! 何度もごめんなさい!」

またパッと離れたが手は未だに握ったままだった。


外に出ると翼と筒井が待ちくたびれたとでも言わんばかりの目線を送ってきた。

が、俺たちの「異変」に気がつくとすぐににやけた翼が耳打ちしてからかってくる。


「竜二〜! ちゃっかり手繋いでるじゃんか! いい感じ!」


反論する気にもなれなかった。

このまま心筋梗塞か何かで死んでしまいそうな感じだった。


筒井が次のアトラクションを指差す。






次に指差したものとは・・・?






またありきたりで申し訳ありません。

手繋ぐのとこんにゃくはやりたかったんです(笑)

もう少し遊園地編が続きます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ