表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不器用な俺。  作者: sprint
5/27

第四話:まさか、まさかの・・??

「先輩・・・ちょっと良いですか・・?」



なんでだ?

なんでそんなにひっそりと、小声で話しているんだ?

それも人にあまり聞かれないようにしてるみたいだし。


俺、何かしちゃったっけ・・・。

そんな不安が頭の中を駆け巡っている。

でも休憩中とはいえ今は部活中だぞ。


「あ、あぁ。別にいいけど・・。どうした?」


やべぇ、変な風に返事しちゃったかも。

胸の鼓動はどんどん早くなり、手に汗も握っている。


冷静な思考が出来なくなってくる。

覚悟を決めたかのように息を呑む。



笹山が他の人に聞こえない程度に話し始める。

「実は・・・。」




心臓が裂けそうになり、背中に冷や汗まで掻いている。

そんな・・・そんなまさか、ね?



























「明日の事なんですけど・・遊園地と映画館とショッピング、どこがいいですかっ?!」


「・・・・・・へ?」


さっきまでの緊張が一気に解け、つい情けない返事をしてしまう。

何を期待してたんだろう。めちゃくちゃカッコ悪い。


「明日、遊園地と映画館とショッピングだったらどこに行きたいですか?」

「あ、明日かぁ。ごめん。うーん・・笹山達が行きたいとこでいいよ?」


ちょうどお金は貯まっていたし遊園地のように高い出費でもなんとかなる。


「ホントですか?! やった! 遊園地に行きたかったんです!」

「じゃあ遊園地? 他の二人は平気なの?」

「はい! みんな遊園地って言ってて・・・。先輩だけ違ったらどうしようかと思いましたよ〜。」


(いや、みんな同じだったらさすがに俺でも空気読むって・・。)

そんな事を思いつつも先ほどの疑問をぶつけてみる。


「笹山、なんでさっきから小声なんだ?」


「だって・・・「コラッ!! 斉藤、笹山! いつまで話してるんだ! 始めるぞ!!!」

「はい!」


二人同時に返事をすると、笹山が微笑む。

「こういう事ですよ! 大声で話してると怒られちゃいますし・・。」


(そういう事だったのか。)

いつも尊敬していた顧問だがこのときばかりは心底恨んだ。

もうちょっと話していたかったなぁと嘆いていた。


「今日の練習は200m。昼までに時間があればもう少し他の事をやると思う。二組にわかれて行う事。」

顧問が簡単に説明するとさっそく準備に取り掛かる。


俺のやってる種目なので内心嬉しい。

専門は400mなのだけど・・。

俺と翼、そのほかの二年は一組目、笹山や他の一年生は二組目に振り分けられた。


「昨日の借りは返させてもらうからな。」

そう翼に言われるとこちらも黙ってはいられない。


「では、スタート5秒前! 4・3・2・1・スタート!」


一組目が一斉にスタートする。

俺たちの部活は全員揃っても15人いるかいないかなので一組あたりの人数は少ないが・・。

早くも俺と翼はトップに躍り出る。


順調に加速していき良い感じで走る事が出来ているが翼の前に出る事は出来ない。

翼がインコースで俺がアウトコースを走っていた。

どちらが先頭、というわけではないがコース的に俺の方が劣勢になる。

同じ地点からスタートした場合インコースの方が有利なのだ。

(くそっ、やっぱし早いな・・・)


そう考えながら一生懸命走っていると残り100m地点まで到達する。



翼は専門が100mなため、そのスピードを生かし最初から思いっきり飛ばすタイプ。

いつもの調子ならこのあたりで徐々に落ちる、そう踏んでいた俺だったが今日の翼は違った。

なぜか落ちないのだ。


俺は自分でもよくわかるほど焦っていた。

翼にも気づかれてしまいそうなほどに・・・。

そんな一瞬の気の迷いが走りに影響したのか翼に先頭を奪われる。

このままでは追いつけない、そんな焦りが俺の肩に力を入れてしまう。


そう、走りというのは肩に力が入ると一気に筋肉が強張って減速してしまう。

つまりこの時点で俺の負けは決定していたようなもんだ。


案の定、そのまま翼にゴールインされてしまった。

もちろんなんとかして抜かそうと頑張ったわけだが・・・。

後から他の二年が次々にゴールしていく。


「これで借りは返したぜ?」

「あぁ、そうだな。」


疲れてはいたが二人とも笑顔だった。

結果としては負けてしまったが物事をやり遂げた充実感があった。

これは勝った翼も同じであろう。

そんな事を考えながら顧問のところへ。

いわゆる「アドバイス」を頂くのだ。


「片桐、今の走りはよかったぞ。大会でもあれくらい落ちなければいいな。」

「はい。ありがとうございます。」


「斉藤。最後は力が入りすぎていた。あれでは出せる記録も出せなくなってしまうぞ。大会ではそれは無いようにな。」

「はい。気をつけたいと思います。」



二人はそんなアドバイスを貰うと一年生の走りを観賞することに。

特に笹山は地区でトップクラスの実力を誇っていたので期待していた。

なんせ二度目の大会でいきなり一位で県大会に出てしまうような子だ。

気にしない方が難しいだろう。

まぁ、別に意味で気になるってのもあったのだが・・・。

それにもう一人見ておきたい子がいた。


筒井綾香。


笹山と仲がよくいつもくっついている。筒井も地区でトップクラスの実力を持っていた。

二度目の大会で笹山が県大会に出た時、この子は二位だった。

ちなみに明日、遊園地に行くもう一人の一年生とは筒井の事だったらしい。

前々から聞いていたが翼の気になっている人、らしい。


こんな事を思っているうちにスタートしてしまった。

やはりトップに出たのは二人だった。

あの二人は俺と翼のような関係なのだろう。

先ほどの自分達と同じでお互い一歩も譲らない。

そんな調子で150m付近まで来ている。

これも俺と翼と同じ「意地の張り合い」なのかと思った。

だが、どちらも前に出る事は無く同着でゴール。



ひたすら前へ前へと走る二人の姿は凛々しく、美しくてとても輝いて見えた。



俺も翼も他の二年生も良いものを見せてもらったと言わんばかりに出迎える。

勝ち負けこそなかったものの二人の顔にも充実感が溢れていた。


その後、何本か続けるとすぐに昼になった。

午後は軽くミーティングをするとすぐに終わる。


ミーティングの内容は大会までわずかなため、体調管理について。

後、この大会での決意表明のようなものをした。

俺たちの部活では珍しくない事なのだ・・・。







そして帰り際。

今度は翼に呼ばれた。

また明日の事だろうと思っていたが少し様子が違う。




「竜二。ちょっといいか?」

「・・別にいいけど? なんか深刻そうだな・・」




俺は気になりつつも人気のない公園で翼と落ち合う事にした。

最後の方、こじ付けっぽく終わらせてしまって申し訳ありません(汗


なおインコースが有利なのは同じ位置からスタートした場合で実際の競技場のようにレーンがきちんとしている所では3・4レーンが走りやすいそうです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ