第三話:何の知らせ?
香織には好きな人がいる。そんな事を知ってしまった竜二。
この事を姉に相談すると優しく励まされる。そんな時、竜二の携帯電話が鳴り響くが・・・?
携帯電話が鳴り続けている。
俺はうっとおしく感じつつもその場で携帯を開く。
メールが来てる。
・・・笹山からだ。
気づかなかったが翼からのメールもあった。
(翼のメールから見てみるか。)
そう思い翼のメールを開く。
「明後日って部活休みじゃん? 笹山と一年生の女子に遊びに行こうって誘われてるんだけど・・竜二も行く?」
という内容だった。
悩む・・・。
笹山もいるんだよな。
横で姉貴が笑いながらいつもの口調で言う。
「竜、チャンスチャンス! さっそくアピールできるじゃん! 即OKだって!」
先ほどまでの真剣な眼差しはどこへいったのやら。
まぁ、感謝してるからいいんだけど・・。
問題はこっちだ。
・・・笹山からのメール。
ふとしたきっかけでメアド交換はしていたが用事がある時以外にはメールしないようにしていた。
変に送りすぎて嫌われたら嫌だったし。
こっちから送るにしても話題が思いつかなかった。
とりあえず見てみよう。
「片桐先輩からのメール見ましたか? 明後日なんですけど・・・。よければ先輩も一緒に!」
夕飯の時には携帯はリビングにおいてあったっけ?
そんな事はいい。
急いで明後日の予定を確認する。
(えーっと。何もない、かな?)
「何もないじゃん! 絶対行った方が良いって! どうでもいい人ならわざわざ誘わないよ?」
(それもそうか・・・。やっぱり行ってみようかな。)
「そっか。とりあえず行ってみるよ。」
翼と笹山にOkの返事を出す。
「よし! まぁ、今日はもう遅いし寝たら?」
時計を見ると12時半を回っていた。
「もうこんな時間か・・。寝るよ。おやすみ。」
「おやすみ〜。」
「・・・・・竜二。頑張ってね。」
そう聞こえた気がした。
眠かったので早めに自分の部屋へ戻る。
部屋に入り携帯を机に置くとすぐにベッドに横たわる。
もうさっきまでの泣き顔は消え、いつの間にか頬は緩みっぱなしだった。
にやけながら目を瞑る姿は旗から見るとかなり気持ち悪かっただろう。
そんな事を考えつつ明後日の事も考えていると、眠りについた。
夜はすぐに明け、やがて太陽が顔を現す。
朝。誰かがバタバタと動き回る音が聞こえた。
(うるせぇなぁ。朝くらい静かにしろよ・・って今、何時だ?)
俺は寝ぼけ眼で時計を見る。
8時20分。
よく考えたら今日は土曜日じゃないか。
もう一度寝ようと思ったが、ふとあることを思い出す。
(明日は土曜日ですが朝から練習があります。遅れないように!)
昨日、俺自身がみんなに連絡したんだ。
集合時間は8時30分。
かなりまずい!
慌てて着替えを済ませると食卓へ向かう。
「なんでこんなギリギリまで起こしてくれなかったんだよ!?」
母さんに意味の無い抗議をする。
「何言ってるの? 自分で起きないのが悪いんでしょ?! 目覚まし鳴ってたじゃない!」
当然の反論だ。
でもなんか腑に落ちない。
学生がいる家ではよくある事だろう。
しかしこんな事を考えている時間はない。
そうこうしている間に5分が過ぎてしまった。
よくよく考えたら今日は顧問が来る日だ。
(あの人怒ると怖いからなぁ・・・)
そう思いつつダッシュで学校へと向かう。
学校へ向かうまでの間、テレポートが使えればなぁと真剣に考えていた。
遅刻しそうになった経験のある人ならば一度は思った事があるだろう。
今日ばかりは自慢の足でも間に合わなかった。
普段3〜40分以上かけて通っている道を荷物を持ちながら5分以内に着くなんてほぼ無理だろう。
急いでグラウンドに入るともう顧問は来ていて部活も始まっていた。
早めに荷物を降ろすと、顧問の怒声が耳に入る。
「斉藤! 部長が遅刻してんじゃねぇ! 自覚あんのか?!」
「すみませんでした!」
「さっさと入れ!!」
「はいっ!!」
俺は深く頭を下げると慌てて皆の中に加わる。
翼が多少冷ややかな目線で話しかけてきた。
「竜二、またかよ〜。昨日もギリギリだろ。 最近どうしたんだよ?」
「悪い悪い! ちょっと昨日は色々あってな・・・。」
「はい、言い訳禁止! きちんと引っ張ってくれよ〜。」
「はいはい、わかったわかった。」
適当に受け答えると俺は先頭に立った。
(あれ? この台詞どっかで聞いたような・・・?)
ふとそう思い何気なく後ろを振り向くと笹山がクスクスと笑っている。
やっぱり可愛いなぁ〜と思っていると台詞のことを思い出した。
(そっか。昨日笹山に言われたんだっけ。)
また胸がドキっとする。
今は部活中だ。
余計なこと考えてたらまた怒られる。
集中しなきゃな。
そう思ったのも束の間。
休憩の時だった。
「先輩・・・ちょっと良いですか・・?」
声をかけてきたのは紛れも無くあの笹山だった。




