第二十五話:悲しげな瞳
「で、何を言えばいいの?」
観念しました、とでも言いたげな顔をしながら瑞穂は項垂れている。
「うーん・・じゃあ、好きな人いる?」
綾香がストレートに聞く。
まぁ、恋バナといったらまずはこれでしょ。
瑞穂の好きな人、結構気になるし。
「・・・いる。」
私は綾香と嬉しそうに笑う。
瑞穂って印象としてサバサバした性格で男子なんて!ってキャラに見える。
だから余計に気になってたんだけどね。
「私もそれ、初めて聞いた・・・。」
唯も驚きの表情を隠せないでいる。
この二人って普段恋バナとかしないのかな?
私たちはほぼ日常的にしてる気もするけど・・。
「あんまりこういう話はしないからねー。」
「で、誰?誰?」
綾香が瑞穂に問いかけると少しの間、黙ってしまった。
私も綾香も唯も興味津々になっている。
「・・・・・尚也。な、内緒だよっ?!」
慌てて口止めをしている。
尚也・・・?
誰だっけ。
「えっと・・尚也って、牧野の事?」
唯が確かめるように聞く。
「・・・うん。」
牧野ってあの牧野先輩?
竜二がよくうるさいうるさいって言ってる・・・。
あんまし面識無いけど。
スキーの班で一緒だったっけ。
「そうだったんだぁ・・・。」
唯が目を見開いて納得している。
けどなんかピンと来ない。
綾香も唖然としてるだけだし・・・。
「わ、悪かったね! 面白くなくて!」
反応が微妙だったからか瑞穂は拗ねてしまった。
なんと声をかけたらいいかわからずにまた沈黙が続く。
「・・・幼馴染なの。」
急に瑞穂が話し始めた。
「昔からあいつ馬鹿ばっかしやっててね。いっつも私、からかわれてた。でもね、小学校の頃に私、いじめられてた時があって。その時にいきなり『こいついじめてる奴は俺が許さない!』って言って主犯格の子に殴りかかっていったの。今度は自分がいじめられるかも知れないのにね。そしたらあいつ、『俺が守ってあげるから』って。」
瑞穂の顔はどこか悲しげで寂しい感じがした。
「馬鹿だよね。臭い台詞言ってカッコつけちゃってさ。でもあの時のあいつ、すっごく頼もしかった。・・・結構カッコよかったし。ホントよくある話だけどね・・・。」
全部話し終えると瑞穂は一息ついた。
なんでこんなに悲しい顔をしてるんだろう・・?
どうしてこんなに寂しそうなんだろう・・?
自然とみんな悲しい空気に包まれていく。
私はそんな中、閉ざしていた口を開いた。
「いい話だね・・。でもどうして瑞穂はそんなに悲しそうなの・・・?」
唯も綾香も軽く頷く。
「・・・あいつ、好きな人いるんだってさ。」
ははは、と瑞穂は軽く笑っている。
「前に聞いたの。そしたら『ずっと好きな人がいる』って。」
・・・それって。
それってもしかして。
「ま、牧野先輩、他には何か言ってなかったの?」
今度は綾香が尋ねる。
「えっとね、『めっちゃ可愛くてモテそうだから絶対に振り向いて貰えなさそう』って言ってた。」
やっぱり。
牧野先輩も瑞穂の事が好きなんだ。
瑞穂、すっごく可愛くてモテそうだもん。
スラっとしてるし顔もすっきりしてて私みたいにニキビとか無いし。
和服が似合いそうで清楚な感じ。
それに「ずっと」好きな人なんだから・・・ね?
幼馴染である瑞穂が確立高いでしょ。
瑞穂、鈍感なのかな。
「それって向こうも瑞穂の事、好きなんじゃないの?」
三人同時に同じことを言った。
やっぱりそう思うよね?
「そ、そんなわけ・・・! 私なんか・・」
顔を赤くして首を思いっきり振っている。
「瑞穂、もうちょっと自信持ちなよ! 可愛いんだからさ!」
しょぼんとしている瑞穂を私は慰める。
というか、瑞穂が可愛くなかったら私なんて・・。
人の事まったく言えないけど。
「・・・ありがと。ちょっと自信ついた。」
照れるように笑う。
この笑顔、うらやましいな。
「じゃあ、次は誰行く?!」
私たちの恋バナはまだまだ続くのであった―――…
更新間隔空きすぎました(汗
これからはもう少し更新できるようにします。
アイデア不足をどうにかしないと^^;




