第二十一話:ドタバタスキーの幕開け
「・・・よっ・・・ろよっ!」
「起きろよっ!」
翼に顔を強めに叩かれて意識が戻る。
いつの間にか寝ていたようだ。
叩かれた方の頬が痛い。
「竜二、お菓子タイム終わっちゃったぞ? 楽しかったな〜。」
翼が牧野と栢山に問いかけると二人同時に頷く。
「そうそう! 竜二ったら何度起こしても全っ然起きないんだもん!」
どうやら栢山が起こそうとしてくれたらしい。
そんなに寝起きが良かったら何回も遅刻したりしない。
まだ頭がはっきりしない中、突然頭上から声がした。
「もうそろそろスキー場に着くっぽいよ?」
「うおっ!!」
俺も隣に座っている翼も驚いた。
真上から見下ろすように新藤がいるではないか。
「何そんな驚いてんの? ずっといたじゃない。」
まったく覚えていない。
というかいきなり顔が上から出てきたら誰でも驚くだろう。
そんなやりとりをしているうちにスキー場へと到着した。
周りはほとんどが雪を被っていて真っ白。
これが所謂「銀世界」なのだろう。
担任からインストラクターの先生の紹介をされるとそれぞれ班ごとに分かれた。
この行事は一・二年生の交流も趣旨に入っているため一年も二年もごちゃ混ぜだ。
(えーっと、俺の班は・・・。)
男子は俺と牧野と栢山と翼。
さっきとまったく同じ面子だ。
女子は・・。
新藤に筒井に香織。それに同じクラスの天野。
天野は新藤と仲がいいらしい。
まったく話した事は無いけど・・。
突っ込みどころ満載の面子である。
ここまで揃いすぎると逆に怖い。
まぁ、とりあえず脅威の幸運に感謝した。
さすがの翼たちでもこんな時までくっついてたりはしないだろうと思ったが―――…
気づいた時にはもう二人でキャッキャと騒いでました。
見てるこっちの方が恥ずかしくなるくらいに。
そんな翼たちに冷ややかな目線を送りつつインストラクターの話を聞いていた。
というか聞いてないと絶対に転ぶ。
俺はスキーはまったくの素人。
一通り説明が終わり、さっそく滑る事に。
ズテン。
・・・・・・こけた。
いきなりズテッと。
しかも香織の目の前で。
みんなに笑われてしまった。
翼や牧野なんて笑いすぎだろってほど笑ってる。
香織も笑っている。
激しい自己嫌悪が襲ってきた。
このまま端っこでいじけていたい。
今の俺はどす黒いオーラを纏っているに違いない。
「ほらっ、つかまって?」
香織が笑いながらも手を差し伸べてくれた。
情けなさと恥ずかしさでなんともやり切れない気持ちになる。
「ご、ごめん・・。」
香織の手につかまってようやく立ち上がった。
その瞬間。
ふざけた牧野が調子に乗って俺の背中を押した。
押した先は斜面。
香織が斜面を背にして立っている。
「ちょ! お、ば、馬鹿! わわわわ!」
俺のスキー板は言う事を聞かずに滑る。
「きゃ! りゅ、竜二! 危ない!」
と香織が叫んだ瞬間―――…
バタン!
なす術も無く二人とも後ろに倒れてしまった。
「痛たたた・・・。」
「痛ってぇ・・・。」
二人とも呻くように声を上げる。
とっさに香織を庇って受身をとっていたらしい。
俺が下になっている。
あのまま倒れていたら香織が俺の下敷きになっていただろう。
体育の受身を真面目にやっていてよかったと思う。
瞑っていた目をゆっくりと開けた。
「!!!」
目の前に香織がいるではないか。
まぁ、当たり前の事実だけど。
でも目と目の近さ、10cmもない。
漫画みたいな感じ。
心臓がドキドキしているのが聞こえてしまいそう。
というか・・・。
もう少し勢いが強かったら唇が当たっていたと思う。
しかもひっくり返すように受身を取ったから俺の手は香織の背中に。
わかりにくいと思うが簡単に言えば抱き合う感じ。
転んだ恥ずかしさとこんなシチュエーションになってしまった恥ずかしさでそのまま消えてしまいたく思った。
「・・・」
みんな唖然としている。
真っ白になった頭がようやく戻り抱いていた手を離す。
「ご、ごめん・・・怪我、してないか?」
「うん・・平気だよ。」
ゆっくりと立ち上がった。
「バカ尚也!! 怪我してたらどーすんのよ?!」
新藤が思いっきり怒鳴る。
「・・悪ぃ。ごめんな。」
この大馬鹿もようやく状況を察知したか。
「あ、だいじょ・・「もう少し考えなさいよ! 二人とも県大控えてるんだよ?!」
俺が意思表示をしようとしたら思いっきりさえぎられてしまった。
「ホントごめん。でもよ、なんでお前にそこまで言われないといけないんだよ!」
「だってこれで怪我してたら尚也、どうなってたかわかってるの?!」
「うっせぇな! だからさっきからずっと謝ってるじゃねぇかよ!! 大体お前は幼稚園の時から―――…」
こっちはこっちで痴話喧嘩が始まってるし。
「まぁまぁ。落ち着けって。俺も、香・・笹山も大丈夫だからさ。」
いつものクセで名前で呼びそうになった。
言い争いを続ける二人の間に入ろうとする。
「私も大丈夫ですから・・喧嘩はやめましょ?」
香織を体勢を立て直して仲裁に入る。
が、二人とも聞く耳を持たず。
翼と筒井は俺と香織を気遣ってからはこの二人の事はまったく気にしてないし・・。
天野は天野であたふたしてるだけ。
もうほっとこう・・。
いきなり波乱万丈だがこうしてドタバタの3日間が始まった。
本当にこんな調子で大丈夫なのだろうか・・・?
更新間隔が空き過ぎてごめんなさい。
卒業式やら何やらで結構忙しかったです(汗
言い訳にしか聞こえないかもしれませんが^^;




