第二十話:出発当日
次の日の朝。
まだ完全に夜は明けていない。
少し薄暗い中、重そうにボストンバックを肩に背負い学校へと向かう。
なんとか寝坊せずに起きる事が出来た。
携帯のアラームをMAXにして起きたら姉貴に怒られた。
既に学校の敷地内にバスは停まっていた。
キョロキョロと辺りを見回す。
(いた。あれだ。)
翼たちを見つけ声をかける。
「よぉ。」
「あ、竜二。うっす。」
翼も眠たそうだ。
「竜二おはよ!」
筒井の後ろから香織がひょこっと顔を出した。
この二人の前でなら名前で呼び合っても平気。
「慣れ」というものは恐ろしいものだ。
「先輩、おはよー。」
筒井も眠たそう。
ちなみにこれだけ面識があって敬語、というのも堅苦しいのでタメ口で話すように言った。
そしたら喜んでタメ口で話すようになった。
「バスに荷物を入れろ〜。出発するぞ〜。」
担任の掛け声が聞こえた。
そういえばいれるのを忘れてた。
よくよく見たら三人とも荷物を持っていないではないか。
「あらら・・じゃ、私たちのバスあっちだから! 後でね!」
焦って自分達のバスに乗り、座席に荷物を降ろす。
翼も座席に着いたようだ。
「もう少し経ったらスキー場へと向かいます。基本的にはそれまで自由ですが立ち歩かないように、窓から手や顔を出さないようにお願いします。」
バスガイドがお馴染みの諸注意をアナウンスする。
「朝からラブラブでうらやましいですねぇ〜。」
そう冷やかしてきたのは向かいの座席に座っている牧野尚也。
「うっせぇな。黙ってろよ。」
ふざけた感じで適当に流す。
こいつは所謂クラスのお調子者。
どのクラスにも一人はいる何かと騒ぐ奴。
正直に言うと五月蝿いサッカー馬鹿。
まぁ、憎めないキャラだからいいんだけど。
「でもよー。あの子、やっぱり可愛いよなー。なんで竜二なんだろ?」
前の席から身を乗り出して会話に入ってくる人物が一人。
こいつは栢山修一。
何でもズバズバと言う毒舌。
そのせいで色んな人と口論しているのを見かける。
それも熱くなって暴言を吐くのではなく、論理的に。
こいつと口げんかをして勝った例が無い。
口がよく回るからかバスケ部の部長も務めている。
「お前も!なんで朝からこんな話題なんだよ。・・確かに可愛いけど。」
最後の部分をボソボソっと聞こえないようにつぶやいた。
が、それは見事に聞こえてしまっていた。
「本音が出ちゃいましたね〜。」
栢山が目を細めてニヤつく。
「先輩・・・! 笹山・・・! あぁ!!」
牧野が一人で抱き合っている真似をする。
「ちょ・・おい! やめろよ!!」
俺が牧野を止めようとした瞬間―――…
ドカッ!
牧野の顔に黒いボストンバックがめり込む。
「いってぇぇぇ!!」
ジタバタと騒ぎ通路にのた打ち回る。
「あんた邪魔! 朝っぱらからうるさいわね。」
ボストンバックをめり込ませた犯人は新藤瑞穂だった。
「新藤ナイスツッコミ! サンキュー!」
俺は牧野の姿に爆笑しつつお礼を言う。
実はこの二人、幼馴染。
クラスでは牧野が馬鹿な事をやって新藤がバシッと一発かます、というのは日常茶飯事。
「じゃあ、そろそろ出発するから席に着けー。」
担任がそう指示するとみんな渋々自分の席へと戻る。
「ではこれよりスキー場へと出発いたします。」
バスガイドが再度アナウンスをするとバスは動き出した。
少し登場人物がゴチャゴチャしてきたので、次は少し整理して書きたいと思います。




