第十九話:待ってましたよ春スキー。
暖かな日差しが燦燦と照りつける。
この時期なのになんでこんなに暑いんだ。
4月になったばかりだというのに。
俺たちの県は少し変わっていて他と時期が違う。
なぜか4月の終盤あたりに県大会がある。
もちろん全国の日にちは他の県と同じ。
未だにこのシステムは理解できない。
第一、陸上の試合期は大体4〜10月あたり。
普通なら今の時期には市大会があって7月くらいに県大会があって、っていう流れなのに。
お偉いさんが頑固な人らしくてここだけは譲れないそうだ。
毎度毎度よくわからないポリシーを持つ人だと思う。
県大会まではあと約二週間。
このままの調子で行けば、ベストで行けるだろう。
俺は昔から本番には強い方だった。
というかあれほどの緊張感が無いと持てるすべての力を出し切る事が出来ない。
自分では真面目に走っているつもりでも手を抜いているように見える時があるらしい。
まったく困った部長である。
まぁ、とりあえずそれはおいといて・・・。
明日から三日間、学校全体で行事がある。
みんなで春スキーをするそうだ。
三年生はもう卒業しちゃったから一・二年だけで。
冬のシーズン中に行かないのには訳がある。
まずは混んでるから。
だからあえてシーズンが終わってから人工雪の所でやるらしい。
もう一つは昔は普通に冬にやっていて。
その時に急に吹雪いてきて、一人雪山に取り残されて。
結局そいつは行方不明のまま発見されず・・・。
警察とかがかなり動いて大事になったらしくホテルの人やスキー場に迷惑をかけてしまった。
そのおかげで毎年使っていたそのホテルやスキー場からもお断りされてしまうから。
という噂がある。
あくまでも噂だけどやけにリアルな噂。
この事件があってから吹雪く可能性が少ない春スキーに変更した、と聞けば辻褄も合っている。
よくよく考えればそんなに大きな事件があったのならスキーなど中止になると思うけど。
まぁ、色々と曰くつきの春スキーだけど結構楽しい。
学校全体の行事だから去年も行ったがまったく滑れなかったのにだいぶ滑れるようになった。
斜面が急なところもかなり怖かったけど、コツを掴めば平気だった。
数日間で自分が上達している、という実感が得られるため生徒には人気だ。
今日は翼と一緒にスキーの時のお菓子の買出しだ。
たまには男二人で行かないか? という事になってこうしている。
お菓子を持っていくのは一応規則違反ではない。
バスの中で退屈だ、という意見を実行委員が取り入れ「お菓子タイム」というものを作ったそうだ。
「竜二ー。これどうかな?」
翼が棚から持ってきたのは最近はやっているスティック状のガム。
「うーん、買っとけば?」
「わかった。あと、みんなで食べるからポテチは欠かせないしー・・・。」
一生懸命にお菓子選びをしている翼をよそに俺はブラブラと商品を眺めていた。
正直に言うとあまり俺はお菓子を食べない方。
甘いのも苦手。
チョコレートとかホント無理。
みんなから驚かれることだ。
糖分が足りないから頭も働かないんだろうけど。
某漫画に出てくるメチャクチャ頭の良い探偵も甘い物をたくさん摂っていた。
バレンタインもチョコでは無く他のものを貰う事が多い。
チョコを貰うよりもそっちの方が嬉しかったけど。
というわけで俺はあまり乗り気ではない。
「翼、まだか〜? 適当に決めちゃえよ。」
「お前・・・せっかくのスキーだぞ? 楽しもうぜ。」
別にお菓子タイムだけで楽しむのではないと思う。
第一にこの行事のメインは「スキー」だ。
スキーを楽しめば問題ないと思うのだが・・・。
「俺はスキーを楽しむからいいの。さ、そろそろ行こ?」
「ちょ、おい! 待てって!」
俺が早めに持っていたカゴをレジへと持っていくと慌てて追いかけてきた。
「竜二せっかちすぎるって。もう少し落ち着けよー。」
いつも俺は落ち着いているつもりだけど。
返す言葉もなかったのでほっといた。
さっさと会計を済ますと店の外へと出た。
「明日起きられないかも・・・。」
俺がふと呟く。
明日の集合時刻は5:00だ。
早すぎる。
「遅れたら置いていかれるな。」
翼に軽く鼻で笑われた。
「うるせぇなー。遅れないように頑張るから平気だって。」
適当にあしらっておいた。
「じゃあ、遅刻するなよ?」
「わかってるって。」
「じゃあな〜!」
俺たちはそう言って家に帰る。
このスキーでどうなるのかも知らずに・・・。
県大会編に突入と書きましたがこの行事の事がすっかり抜けていました(汗
それと更新遅れてスミマセン。
春スキーはどうなってしまうのでしょうか・・?




